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彼の想い
彼は自分の衣服を返り血に染めて
心の中で嘆く
かつては殺めても 無感だった心
しかし今は
殺めたという揺るがない事実
そこから生じる罪悪感が
彼女の――想い人との約束を反故が
彼の心を締め付ける
彼女を想い続けるがゆえに
彼は殺める度に
心を苦痛の鎖で縛り付ける
彼女を想うことを止めれば
苦痛からの解放がある
しかし 彼はそうしない
彼女のことが 心の底から好きだから
だからこそ 彼は刃を振るう
大好きな彼女が 好きだった場所を守るために
好きだった場所を
蹂躙しようとする者らをこの手にかける
遥かな時を経て それを知った彼女が
嘆くとしても
それでも彼は 刃を衣服を 返り血で濡らすだろう
守るために汚れるだろう
彼女が愛した場所を守り続けるために――
《終》