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「Goddess」


 忍び込んで何時間が経っただろうか。ヒスは隠し階段を用心深く上り、真っすぐ進んでいた。階段は思ったよりも長くて、時間がかかってしまった。本来なら普通に駆け上がりたいのだが、ここは敵のいる場所だ。軽率な行動は出来ない。


 忍び込んでいる事自体が軽率な行動かもしれない。だけど自分達の知らない所で何かが起こっている。それを知る意味が自分達にはあるのだとヒスは考えていた。ただ私達に相談しなかった事を少し後悔していたが、そんな事を考えてしまう弱さを引き飛ばそうと足音を立てずに進むしかない。


 (こんな所で何をしているんだ)


 言葉に出す事が出来ないヒスは心の中で呟く。階段を抜けるとロウソクの火で淡く照らされてある廊下を進んで行く。その先に何が待っているのか恐怖と好奇心の狭間に揺られながらも、進む足を止める事はなかった。


 こんなに歩いているのに、監視カメラくらいあるだろうに。普通なら侵入者がいた時点で誰かが出てきそうだが、静せさが広がっている空間しかない。それもそれで変な話だ。まるで招き入れられているようで、正直、気持ち悪い。


 その時だった。急にウィーンと音が鳴り響き、天井から液晶がゆっくりと降りてくる。これ以上進ませる訳にはいかないと言っているようにいく手を阻む。


 「はじめましてヒス様。ようこそ御園コーポレーションへ。この場所に来たと言う事は支配人が貴方を呼んだのですね」

 「……」


 液晶の中に映し出されているのはアンドロイドのような姿の女だ。右側は綺麗な皮膚で隠されているが、左側は骨組みが露出している。壊れた人形のようにこちらを無の感情で見つめてくる瞳からは鼓動を感じる事が出来ない。


 一瞬、ただの作られた映像かと思ったが、それを否定したのは彼女だった。


 「私は御園コーポレーションが開発したアンドロイドのミソノと言います。もう廃盤の機種ですが、ここを守る存在として新しい役目を与えられて生きているのです」

 「……」


 返答をしたい、色々聞きたい衝動に駆られるが、声を出してはいけないような気がして無言を貫く。するとミソノはぎこちない笑い方でこう言った。


 「ヒス様、貴方がここに来ている事は支配人達は気づいていますよ。私が監視していましたからね。ここで無言を貫いても意味がないと思います。時間の無駄ですしね」


 ここまでよく喋るアンドロイドは見た事がない。そもそもアンドロイド自体見た事がないのだが、生きている人間のように話しているのが驚きだった。


 とりあえず、無言を貫くのは得策ではないのは確か。ヒスは大きなため息を吐きながら言葉を落とした。


 「Goddess」

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