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九条蒼生女視点 確信


 私の返答に答えないのに一枚の写真なんて送ってこれたわね。それに私が会社に戻る前に勝手に実験なんかして、後で始末書を書かせないといけないわ。私は自分が誰の傍で突っ立っているのかも忘れて、笑い声をあげてしまった。


 まぁ、あの錠剤は安定剤の効果もある。耐性のない人間が口にすると一時間程だけど深い眠りに入る事も分かっているから、ここまで慎重にしなくてもいいのだけど、念には念を、と思って自負していたのよ。


 それを「岬」という男は簡単にも崩してしまう。敵にすると厄介な人物、そして危ない奴だ。10分くらいたっているから、確実に夢の中にいる。だからここから50分間は自由な時間が与えられたも同然。


 <直接お話したいのですが、よろしいですか?>


 写真を送り付けるだけ送り付けて、どうせ返信は来ないだろうと思ったけど、そこはきちんと考えているのね。私は「YES」とだけ送信し、岬からの連絡を待った。すると、すぐに着信の画面に切り替わる。私は何の躊躇いもなく、嬉しそうに電話に出た。


 「どうでしたか? あの写真」

 「……最高ね、でも私が不在の時に擬態させるのはどうかと思うわ」

 

 嫌味を含む言い方で問いつめてみるけど、それはフェイク。本当は嬉しくて仕方がないの。そんな私の感情を知られる訳にもいかないから、ここは冷静に努めようとするけど、上手くいくかしら?


 「副社長は今、手が離せない状況でしょう? だから俺が動いたんですよ。勿論この事は「社長」には内緒にしています」

 「へぇ。きちんと言いつけ守ってるのね。意外」

 「そりゃそうですよ。裏で金を貰っておいて、公言するなんてありえませんからね。俺も研究員の端くれですし」

 

 岬はまだ私の会社に在籍になって短い。元は父が引き抜いた人材だ。元々優秀なのは知っていたけど、父を裏切って、私に協力をするとは当時は考えれなかった。多額の金額を積んだのもあるかもしれないけど、研究する事が生きがいの彼には「イシス」の元となる生命を作る研究は未知の領域で輝かしく感じたらしく、前のめりで手を貸してくれている。


 いつもなら、私の監視下で行うのだけど、私が蒼と接触しているから出来ない。起点を利かしたのは理解出来るけど、少し自由度が高いんじゃない? そこがこの男の危険な部分でもあると感じている。


 「しかし驚いたわ、私のコレクションの内臓と血を融合させて、生命を誕生させようとするとは……ね。今は経過はどうなの?」

 「良好ですよ。馴染んでいますし、仮死状態を解いても、鼓動を打っています。血を点滴すると、みるみる人間の身体に近い形に変形していますし」

 「そう。あまり一気に血液を注入するのはやめなさいね。耐えれなくなって破滅してしまう可能性があるから」

 

 そう忠告をすると、岬は「分かっています」と笑いながら返答をした。私は先ほどの答えをまだ聞いていない事を思い出し、彼にもう一度、今度は口頭で伝える事にした。


 「その血は何処(・・)で手に入れたの?」

 「くすくす。内緒です」


 注射針を使う「岬」って貴方くらいしかいないのだから、きっと私の想像通りだと確信した。

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