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軽率な行動が引き起こした状況


 何時間倒れていただろう。気がつくと辺りは真っ暗になっている。私はうめき声に近い声を出しながら、立ち上がる。まだ痺れが残っている。バタンと倒れてしまった身体を起こそうともがいてみるが上手くいかない。


 何度も繰り返していると変に体力を消耗してしまった。疲れた私はダランと地面に項垂れ、呼吸を整えていく。


 「油断した……情けない」


 ヒスを探し出す為に出てきたのに、のんびりとこんな所でいる訳にはいかないのに、なかなか身体が言う事を聞いてくれない。時間が経つにつれ、ヒスの状況がどんどん悪化していくのが分かる。岬と出会った事で情報を得る事は出来たが、ある意味災難ともいえる状況だった。


 「とりあえず、もう少しだけ休む……か」


 無理して動いても、ヒスの足手まといになる。時間稼ぎの為に私に薬を打ったのだろう。何を考えているのか分からないが、嫌な予感がする。


 バタンと背中から倒れ、両手を伸ばした。するといつの間にか握りしめていたカードキーの存在が露わになる。自分のものではない、となると岬が置いていったのか。


 「そう言えば言ってたな。これがヒントか……」


 目も少し霞んでいて、打ち込まれている文字も読みにくい。もう少し時間が経てば確認をする事が出来るだろう。そう思いながら、何も出来ない自分を恨んだ。


 「こんな所で寝てるなんて、悠長だ事」

 「……え」


 聞き覚えのある声が私の耳に張り付いてくる。フウと息を吹きつけられる感覚で、夢ではなく現実なのだと知る事が出来た。


 「蒼生、どうしてここに?」

 

 声は出す事が出来る、だから聞いてみた。どんな返答がくるのかは分からないが。蒼生なら、この状況をどうにかしてくれるんじゃないかと、期待している部分もある。


 「あんたのスマホのGPSを辿ってきたのよ。何があったのか知らないけど」

 「私のスマホ?」

 「……念には念よ。あんたがトイレ行っている時に「監視アプリ」を入れたのよ。勝手に飛び出すし、本当心配ばかりかけてどういうつもり?」

 「……そうか」


 いつもの私ならそんなもの入れるな、と言えるのだが、自分の軽率な行動が現状を招いているのだから否定は出来ない。勿論、蒼生を責めるつもりもない。


 「油断した。変な薬を打たれたみたいで、身体が言う事を聞かないんだ」

 「……誰に?」

 「私の同級生の「岬」と言う奴だ。早くヒスの元へ行きたいんだが、どうにもならなくてな」

 

 私の言葉を聞いて、空気が変わった気がした。蒼生に変化は感じられないが。どうしてそう感じてしまったのだろうか。麻痺ってる今の私では理解するのに、頭脳がついていかない。


 「少し安静にしてて、後これを飲みなさい」


 返答をする前に口の中に錠剤を入れられた。反射的に抵抗をしようとすると、塞ぐように蒼生の唇が重なった。


 「っつ……」


 水を含んでいたようで、口の中に入ってくる。行き場をなくした私は受け入れるように飲み込んでいく。



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