裏ポスト
輪廻は巡る。私の思惑と彼の人重圧により、あの記者に後戻りなど許さない。
六人の裏の主役達は冷淡に議論を重ねながら、私の名を呼ぶ。
ここは表の人間が殆ど知らない、操り人の隠れ蓑。
表の権力者を思いのまま操りながら、全てのシナリオをこの国の大元へと情報を流す最後の『仲介職』それが彼らの立場と言った所だろう。
そしてその下で動く事しか出来ない。存在理由しかしらない私は碧生。
彼らからしたら一番都合の良い人間なのかもしれない。
それはそうだ『仕組まれた子供』の一人目が私なのだから。
異変を感じた人がいるのかもしれない。『一人目』と言う事は『碧生』は他に存在するのか?と疑問を抱いた人もいるかもしれないが、今は『シークレット』と言う事にしておこう。それが一番の安全策だと思うし、それにさ…。
いつか分かる事だから、今は言わずに『物語』の流れに身を任した方がいいと思うのだよ?
そう思う私は甘いのかもしれないね。
フフッと笑いが零れ落ちそうになりながらも、精神力のみで食い止め『演者』へと堕ちていく。
それは崩壊への導きとよく似た『禁断の果実』の甘い香りに誘われる運命。
「はい、どうしましたか?」
六人の彼の人達は、冷静な私を見て胸を撫でおろし、君はやはり冷酷な方が君らしい。碧生さん、あなたの出番なのです。と重圧を私に課せる。
「なるほど、あの人では無理で私を呼んだ訳ですか…」
忙しいのに…と口から言葉が出てきそうになったのだが、この議会に来て彼の人と会話をする事を許されている私からは貴重な時間でもある。
一般人に全ての情報を渡す訳などないのだからね。
『君が見つけたマスコミ、彼は裏を知りすぎた、分かっているな?碧生』
二人目の彼の人が怒りを込めながら私に命令する。
「殺しますか?それとも…操り人形にしますか?」
『…碧生のコマにすればいいじゃないか!その方が演劇と言うものは楽しいからね』
三人目の彼の人がおもちゃの腕を模擬ながら、笑っている。複数の人形を買いだめし、ストレス解消の為に人形の全身を破壊している。それが彼の人の快楽の形。
『いえ…コマよりも、もっといいものがありますよ?』
四人目の彼の人は女性だ。
仮面を被った表面は顔と心を隠している。
『何なんだ…それは…』
呆れたように物を呟くのは紳士である雰囲気を出しながらも、ある大手企業を潰して、買収したもう一つの顔を持つ五人目の彼の人。
キィと向こうに向いている椅子が私の目線に映るように方向転換する。
『君達は、自分の言いたい事ばかり言う変わり者。もっと議論を積み重ねるのです。欲望と金の為に』
そう呟きながら、顔が暗闇に溶けて、見せる事のない彼の人六人目。
私の父であり、この裏ポストの中心人物と言える『存在』の大物だ。