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イシスの副作用


 「どうしたの、兄さん。深刻な顔をして……」

 「いや、何でもないさ、気にするな」


 人には気にするなと言っているが、自分に言い聞かせている節もある。私はレイカを見つめながら溜息をはくと、レイカの目がどんよりとする。


 ──ご迷惑ですか?


 とメモに書かれてしまった事で、表情に出ているのかと気づいた。この子、もしかしたら昔の記憶がないのか? 私も忘れてしまっていたが、幼い時の彼女の面影があるようにも見える。どれが本当で嘘なのか分からないままで、家に来さすのは危ういかもしれない。


 過去の事を聞いてみたが、何も覚えてないようだ。家族と名乗る人物は彼女名前を「レイカ」だと言った。自分の傍にいさせる為に記憶も改ざんしたのか、本当にそんな事が可能なのだろうかと考えてみる。


 そういえば昔聞いた事があった。「イシス」と言う名の細胞の話を……ある女性の中でしかなかった新しい細胞「イシス」色々な研究者が人体実験をした記録が綴られていた書物も、確かあったはずだ。


 イシスを体制のない人体に結び付けると、体は耐えれるらしいが、意識と記憶を失うと書かれていた事を思い出す。レイカはイシスの被害者の可能性がある。確かめる手立てはない……が、後は事故か何かで記憶を失った、とか。その線もある。


 (確か「イシス」を取り込んだ人間はあの言葉を言うと拒絶反応をしたな、試してみるか)


 危ないが本当の事を突き詰める為には、必要な行動だ。私は自分に言い聞かせながら、実行する事にした。


 「兄さん、どうしたの?」

 「血が出て、指は落ち、手は滅びる」

 「は?何言ってんだ、兄さん」

 「ちょっと黙ってろ」


 その場を制すると、この言葉を言ってからレイカの反応がない。大丈夫だろうかと思いながらのぞき込むと、ギロリとした狐のような目つきになっていた。全身、武者震いをし、まるで何かが乗り移っているようだ。副作用は人格が変わる、そして顔つきが異質になる事だ。破壊衝動もあったはずだが、今の所、抑えられているようだ。


 「やはり……な」

 「兄さん、何をしたの?」


 レイカの代わりように驚きながら問いかけてくるヒス。私が知っているなら、ヒスも知っているはずの事柄なのに、知らない振りをするのか、あえて……。


 この言葉は「魔」の言葉、人の人生を狂わす「呪文」の一つなのだから。

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