表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/109

岬 啓介


 蛍光灯の光しかない、他は暗闇だ。岬は私の背中を見送ると、クルリと元きた道を歩き出した。彼の頭にあるのは大切な人を失ったあの日の事。自分が善から悪に染まったきっかけの時の事を思い出していた。


 「俺らしくないな」


 そう呟くと、口角を下げた。笑っていた表情は消え去り、その場に残ったのは無表情だ。私は何も知らない、彼がどんな人生を歩み、築き上げてきたのか、それはまた別の話になる。闇の中で眩く光るのはスマホ。岬はスマホを見ると、溜息をつき、呟いた。


 「シャットダウン」


 するとどうだろうか、全ての機械音が停止した。彼は「またか」と言うとある人物に電話をかける。彼の言葉は「イシス」の影響もあり、機械を全て自分の思うまま操る事が出来る。彼自身、人体実験された後の体だった。それを決行したのはお父様ではなく、岬自身。


 「何の用?」

 ──上手くやってるのか?

 「父さんは心配性だな、大丈夫だから」

 ──息子の事を心配しない親はいないだろう?


 息子と言っても「義理」の息子なのに、昔からどうしてだかクビを突っ込んでくる。まぁこの会社に潜入出来たのも父さんのおかげだし、何も言う事はないだろうと岬は思った。


 「で、要件は?」

 ──九条家の娘と接触は出来たのか?

 「まぁね」

 ──そうか

 

 そんな事を確認する為に電話をしてきたのだろうか、いいやそれだけじゃない。今通話が出来る状況かどうかを確認して、岬が自由に動ける状況かどうかを把握したかったのだろう。誰か、監視が常にいると、動けるものも動けやしない。それが分かっているから、確認もふまえて連絡をしたのだろうね。


 「今は全ての機械を停止してる、後二分で元に戻るから、切る」

 

 そう告げると、電話の向こうの人物は「分かった」と言った。すぐさまスマホをしまい、元の自分の立ち位置へと戻っていく。機械関係の責任者は岬本人だ、こうやって自由な時間を作る為に、エリートとして演じているのだろう。


 真っ暗な闇から淡い光へ遷ろう瞬間だった。小声で見えなくなった私の影を追いながら口にした。


 「お手並み拝見だな」


 フッと鼻で笑うと、電気が復旧された瞬間にはいつもの「岬 啓介」に戻っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ