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言葉のパズル


 私の目的は彼を救う事だけだったはず、それ以外は視野に入れないようにしている。実の父だろうが、どうなろうが私には関係がない、そう思ってたのに……


 少し弱気な部分を見てしまうと別の感情に支配される。それは一般的にはいいことなんだけど、私の中では違った。一つの目的があるからこそ、生きていると実感出来る。今は他事に時間を割いている余裕もない。


 「私らしくないわ」


 感情に揺さぶられるのは彼の存在だけで充分、それ以外に私の心を揺さぶる権利はないのだ。人間は完璧になれない、出来ない、だからこそ冷静にいたい、そう思うのは理想論なのかもしれない。一番分からないのは自分自身の事なのだから。


 「副社長、ここにいましたか」

 「あなたは」


 急に声をかけられたので少し驚いてしまったが、呼吸を整えて振り向き、言う。金色の髪が印象的なメガネ君。名前はなんだったかしら、印象はあるんだけど、関りがないから名前まで覚えていなかったわ、本人に知られちゃうと失礼よね。


 「岬です、岬啓介」

 「ああ、岬くんね、どうしたの急に」

 「社長から頼まれた資料が出来たのですが、何処にも見当たらなくて……」

 「なら、私が渡すわ、何かしら」

 「本当ですか? ありがとうございます」

 「いいのよ」


 本当元気な子ね、まだ若いのに能力を伸ばしていると聞く。裏まで知っているようには思えないけれど、お父様が依頼しているって事は、秘密事項かもしれない、やはり一枚かんでいる? 確認する為に岬の素性を調べようと考え着いた。


 「あの……」

 「何かしら」

 「社長に渡す前に見ていただきたいのですが」


 なんて提案するのかしら、私の早とちりだったのかもしれないわね。見た目はどうであれ好青年の印象の彼が一枚かんでいるなんて憶測が過ぎたかしら。


 私は自分の考え違いだと思い、少し恥じた。最近、自分でも気づいているけど妙に警戒している気がする、それが吉と出るか凶とでるか……


 「大丈夫なの?」

 「何がです?」

 「社長直々に頼まれていたのでしょう? 私に見せてもいいものかしら」

 「……副社長だからこそ見てもらいたいんです」

 

 含むような言葉を使う岬を何者なのだろうかと不振に思ってしまう自分がいた。まっすぐなようで違う言葉のパズルを用意てるからね。


 

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