表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/109

九条蒼生≪女視点

 すれ違うお父様を目で追うと、少し顔色が悪いように思えた。いつものお父様ならもっと発言をしているし、覇気がある。隠すのが上手なはずなのに、そういう部分を見せるなんて、らしくないと感じる。その時の私はお父様の体が悲鳴をあげている事に気づけなかったの。


 「大丈夫ですか?」


 別室で休んでいるであろうお父様の元へいく。きちんとノックをして相手に失礼がないように声かけもして、返事がきたらドアを開ける。よくきちんとそういうところはちゃんとしろと言われてきたから、子供の頃から、その癖があるの。


 「入りなさい」

 「はい」


 やはり声のトーンがいつもと違う、ずっとお父様の傍でいたからすぐに分かった。何かあったのだろうか、悩みも基本持たない自信家だから。私は少し考え、間を置いてドアを開けた。勿論ノックしてね。


 「入ります、お父様」

 「どうした?」

 「顔色が悪いようですが……」


 そう言うと、ふっと笑ったかと思うと、少し肩を落とした。一体、何があったのだろう。


 「私も年だな……お前は気にしなくていい」

 「……」

 「心配するな、大丈夫だ」


 私が心配している? お父様を? 一体何を言っているのだろう。そりゃあ気になるのはある、だけどそれが心配に結びつくのかというと微妙な所。自分では気づかない内に、本当に心配しているのかもしれない。自覚全くないけど。


 「体調よくないのなら、安静にしてください。後は私がしておきます」

 「ありがとう」


 ありがとうなんて言葉、初めて聞いた。今まで一度も言われた事がなかったから、驚いた。私の目の前にいるのは本当にお父様なのだろうか、と疑ってしまいそうになる。私はそう言うと、無言で部屋を出た。感じた事のない感情を抱きながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ