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優越感

 自由にも責任があると思う、生きている中で本当の意味の自由はないからだ。全てが自分の思い通りになるなんて、愚かな考えはしない。その中でも自分の心の自由を求めるのは悪い事だろうか、私はそうは思わない。


 ヒスと話をして、このマンションを出る事にした。幸い、お金には苦労をしていないから解約金もどうにかなる。父さんに頼らずとも、自分の稼ぎで賄える。余計なものは持っていかないようにする、まぁ、元々最小限の荷物しかない私達は処分をするものだけ処分をして、なるべく負担がかからない程度で家をはらった。


 次の住む所が決まるだろうかと不安になっていたが、案外早く、簡単に見つける事が出来た。私の部屋とヒスの部屋、そしてキッチン、居間がある感じ。自分の時間を確保する為に、ヒスと程よい距離感でやって行く為に、自分の部屋は必要だ。だから今回はなるべく広い所にした。


 「なんだか変な感じだ」

 「自分で部屋を探すとかないでしょ」

 「ああ、いつも父さんが用意してくれたからな」

 「いい経験じゃん」


 自由ってこんな感じだろうか、変な感覚の中に少しの光が見えてきている。背筋を伸ばし、リラックスしている状態なのかもしれない。それだけ、今までの自分を無理して作っていたんだな。私は電子タバコを吸いながら、息をつく。吸えるようになるまで数十秒待ちながら、吸い込む煙はうまい。以前まで、紙たばこを吸っていたが、体質的に合わなくなってきて、こちらに変えた。今では馴染んでいる。


 「煙草ってうまいの?」

 「まぁな、ヒスは吸わないのか?」

 「吸った事ないから」

 「意外」

 「煙草を買うなら、スイーツを買った方が嬉しいからね」


 スイーツか……話を聞いていると大の甘いもの好きらしい。これはいわゆるギャップというものか。見た目と好きなものが合っていなくて「ククク」と笑ってしまった。


 「笑うことないだろ……」

 「いや、似合わな過ぎて笑えてきたわ」

 「失礼だな」


 ムスッとしている表情を見ていると、まだ幼さが残っている。いつもはクールは素振りをしているのに、こんな可愛いところがあったとは驚いた。ヒスと違って、私は一切、甘いものはとらない。コーヒーもブラックだし、茶菓子なんて必要ない。あるのは煙草でいい、そんな感じだ。


 「大人ぶりやがって」

 「ククク」

 「その笑い方、やめろ」

 「顔真っ赤だぞ? いつもの余裕はどうした?」


 ヒスに少し、勝ったような、そんな優越感の中で車に乗り込んだ──

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