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社会科勉強


 沢山の機械の中に埋もれながら私達はいる。カモフラージュでなんて大胆な事をする人なのかと思わず微笑んでしまう自分がいる。


 ──こんな人、はじめてだわ。


 いつも私は偽りの中で生きてきた、周りの求める人物になる為に笑顔も仕草も作って、でも(あき)は違う。自分の信念の中で行動しているように輝いて見えたの。ハッキングをして情報をコントロールする彼は犯罪者なのかもしれないけれど、そんな事、私には関係なかった。


 「どうしてこんな事をしたの?」

 

 そう私が聞くと彼はフッと口元を綻ばせながら、誤魔化した。


 「趣味みたいなもんだよ」


 趣味、って……趣味で出来る事じゃないでしょ、これ。口走ろうとしたが、彼の姿を見ていると本当の事を言ってくれる可能性は低い、それにまた誤魔化すはず、だからあえて今はこれ以上詮索しないように決めた。


 ただの高校生が、こんな芸当出来る訳がない。機械の山も(あき)一人で運んだなんて嘘は通用しない。私の考えの一つなんだけど、裏には大きな組織が絡んでいると思うの。勿論、他の人から見たら違う見解はあるかもしれないわ、ハッカー集団の一人でたまたま一人行動をしているだけかもしれないし、そういう役割ってせんもある。


 考えれば色々な憶測が飛んでくるだろうけど、私も私で表と裏があるから尚更の事。彼のいつもの表情と行動、口調が普段とは違った大人びているもの。彼を育てた人の影響かもしれないけれど、独特の生き方をしている人、そう思うと私だけじゃなかったんだと安心してしまう。


 「君は早く帰った方がいいよ、何度も言うけど、君みたいなお嬢様が来る所じゃない」

 「見てしまったもの、帰れと言われて帰るバカが何処にいるって言うの? 私を他の連中と一緒にしないで」


 啖呵(たんか)を切る事で優位に立とうとする癖がこんな所で出てきた。彼の言葉には力があるからこそ、本当の私をも引き出してしまったのかもしれない。


 フウとため息を一つ吐くと、仁王立ちになった私は何処かの悪役令嬢みたいに悪い顔でニンマリ笑いながら言葉を落とした。


 「面白そうな事、一人で楽しむなんて酷い人だ事、私も混ぜて頂戴な」


 クビを突っ込んでいい結果が得られるのかも分からない。なんせ未知の領域。だからこそ新しい世界をまた一つ知る為に飛び込む必要があると思った。安易な考えかもしれないけどね。


 「面倒事はよしてくれよ、マジで」

 「勿論よ、これも社会勉強とするわ」


 ふんすと意気込みを体で表すと、一瞬いつもの彼の表情に戻った。



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