私のもの
ふつふつと湧き上がる怒りはいつしか快楽へと変化していく。全細胞が破壊を求め、私の耳元に囁くのだ。もう楽になればいい、本当の自分を否定するのは終わりだと。幼い私はいつの間にか他者が都合のいいように使える人形になっていったのだ。
私は私だから他の人の意見は受け付けないと自分の殻に閉じこもっていた私は闇を選び恋漕がれてしまった。そして唯一の希望として父を選んだ事が私を余計歪ませてしまった。
「私は誰の言う事も聞かない、聞きたくない」
そんな駄々を捏ねる幼い私に本当の楽しみを教えてくれたのが父だったの。
「そんなでは何も思い通りにはいかない、自分の心に向き合いながら願いに気付かないと何も変わらない」
「……分からない、何を言いたいのか分からない」
「今は分からなくてもいい、あの環境から逃げ出したいのならば、私とともに来れば自由を勝ち取る事が出来る」
「自由?」
「そうだ、自由。お前がお前である為の新しい居場所が自由だ」
言葉の魔術に取りつかれたように、自分の中の固定概念は自由によって崩れていく。恐怖を感じて身震いをしてしまう事が驚いた。
怖いものなんて何もないはずなのに、どうして震えが止まらないのかな?
自分の道は他人が決めるものではない、自分で決めるものだ。そう父は最後の言葉を残して、深い暗闇へと隠れた。私は恐れから逃げるように、一人になりたくないからと、背中を追う事しか出来なかった。
そんな時があったからこそ現在の自分が構成されたのかと思うと苦笑してしまう。それはそれは残酷で楽しい童話の続きなのだから──
今日はいつもに比べて寒い。雪がゆっくりと私の世界を染めていく、まるで心まで浸透していくように、その冷たさがぬくもりに変化しながら現在の自分へと戻っていく。
お茶は冷たくなり、部屋はチカチカと朧げな明かりを発光させながら横たわる人形になった元人間の体へと近づいていく。ゆっくりと右手が彼の頬をかすみ、体温を奪われた体は微かに痙攣をしている。ピクピクと動くそれは毛虫のようで醜く、それであって美しい。
ほんのりと頬に熱を感じると自分が興奮している事に気付く。ああ、これこそが私の求めていた快楽なのだと思うと高揚してしまう、自分でも言葉に出来ない感情が全身を支配しながら、彼の経過観察をする。
ひん死に近い状態で保管をしないと上質な肉体を捌く事は出来ない。社会的に私に損失を与える者たちはこうやってコレクションになって時期が来たら解体されて出荷される。
それまで……
「私のものよ」