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ある人物

 大切なものなんてどこにもない、あるわけないのだから。私は自分に言い聞かせるように、意識を手放した岬の様子を観察している。青白く死んだように眠り続けるカレを見て、高揚してしまう自分を抑える事が出来ない。お父様の言う通りに動いただけなのに、まるで自分の欲望の為に動いたような感覚がする。凄く気分がいい、人間を支配しているようで、笑ってしまう自分がいた。


 「綺麗ね、観賞用として欲しいけど、お父様が許さないわよね」

 「社長はそれを望んでいませんからね、難しい話でしょう」

 「ふふふ、私に反論出来るのは昇、貴方くらいよ」

 「……光栄です」


 私達の目的は使い物にならない社員達を金に換えていく事。特に問題を起こす者に目をつけている。全ての臓器をある人に渡すのが目的。研究者と称する人物は新鮮な臓器、肉体を誰よりも欲しがった。ある意味コレクターなのかもしれないわね。報酬も通常の金額よりも大きい。人間の肺の金額は約20万弱だと言われている。安すぎる。でもあの人物は違った通常の倍以上の金額を提示してきたの。


 「私なら50万出せます」

 「通常の金額の倍以上じゃないですか」

 「信用と信頼も込めてです、全てを信じろとは言いません。あくまでビジネス(・・・・)の取引先と考えていただけたら」

 「それ以上は望まないと?」

 「……ええ、今の所は。貴女のお父様からお聞きになった方がいいと思いますよ」


 お父様は全てを知って私にこの人物との接触の機会を設けた。何かある、私もお父様の中で駒の一部なのかもしれないと感じた瞬間だった。私は金には興味がない、いやそう言うと嘘になるわね。正確には権力がセットでついていないと意味がないと思っているの。


 (……試されている?)


 表で微笑みながらも、この人間達の闇を見破ろうとしている自分がいる。未熟な私にそれが出来るのかしら。まるで手の平の上で転がされているみたい。


 「少し考える時間をくれませんか?」


 この状況を乗り切る策なんて思いつかなかった。今までお父様の言う通りにしてきた私はただの操り人形だから、初めての経験だったのよ――

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