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共通視点『支配人』

私達が何を選択するかで未来は分かれている。暗闇の中で漂うのか堕ちるのか、光を見ようとするのか。全てがバッドエンドではないだろう。私達にも見えない未来だからこそ、二人の『九条碧生』が存在するのだ。


一人はグラスを片手に歪んでいく世界を楽しそうに見つめている。一人は友情という名の光を消し闇へと流されそうになっている。


二人は同じ立場でありながら、性別、価値観、未来の生末(いくすえ)、全てが異なってくる。警報の鐘は鳴り響きながら、支配人『夢幻狼(むげんろう)』が語っていきましょうぞ。


自信を忘れる事のない女性の美しさと妖艶さを、そして純粋ながらも現実の姿に逆らえぬ男の果てを。


『さぁ――私達の手で物語を変えていくのです』


それが支配人『夢幻狼(むげんろう)』の名を持つものの指名と言えばよいでしょうか。この仕事に着いて20年近くになりますが、この二人は見ていて飽きる事がないのです。


どんな物語を見せて、私達に置き土産を置いて行ってくれるのでしょうか。

興奮と悪意と冷酷さとそして……。


『貴方様はどちらの物語を選択されますか?』


私の手がテーブルの上にある二つのスイッチを示す。一つは赤いもう一つは青。本来なら選択肢は自由でした。しかし私の娘達がそれでは面白くないと言いましてね。今回、こんな手のこったサプライズを用意しておいたのですよ。


ニッコリ微笑む姿からは作られたまがい物の匂いしかしない。夢幻狼(むげんろう)の名は繰り返し私達、一族の中で永遠の繰り返される役目の一つでもあるのですから。


赤い血を見ましょう

苦しみながらも悶えぬく快楽を感じましょう

泣き叫びながら愉悦に浸る新しい世界を創るのです。


『私の娘は五人いるのですが……どうしても決めれないのですよ』


優柔不断なのかもしれません。男と女、どちらの『九条碧生』も楽しませてくれる存在であり、私の欲望を満たしてくれるのですから。私でそう感じるのですから、娘達はそれ以上に迷ってしまうのですよ。


私達はテーブルの上にある二つのスイッチを見つめながら、ティータイムを楽しんでいます。紅茶に合うのは何でしょうか。優柔不断な私達はそれ(・・)さえも決めれないのです。


笑い声はいつまでも。

人間の生き血で染色された紅茶を啜りながら、楽しく待っているのです。


貴方様方の選択する瞬間を――


『ようこそいらっしゃいました』


今日はお客様が多い気がします。貴方様の他にも、ほら二人の行く末を見たいと賭けに走ってしまった愚かな男が一人やってきました。


金に目が眩む者には制裁をしなくてはなりません。この物語はそんな歪んだものの為にあるのではありませんから。


私も、また『九条碧生』になっていくのかもしれませんね。



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