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九条碧生(女視点)



 いつまで私はこんな『演技』をすればいいのだろうか。


 「もういいわね」


 両手で髪を下ろすあたしは『碧生』


 「風樂に理委の事は任せるとして…あたしは次の準備をしないとね」


 裏ポストなんかには興味がない。


 あんな国と関わりのある縛られた立場なんか誰がなりたいものですか。


 お父様は凄いお方。


 ある人が『事件』を起こし、ポストが一つ空白になった。


 知事の側近のお父様は、引き揚げられたのよ。


 裏ポストの五人組にね。


 「我父ならが、さすがだわ」


 「過去の記憶」の事を色々と脳内で描きながら、あたしは『碧生』を演じ続ける事をしないといけない。


 きっとお父様の計画とは違う計画が裏で進行しているはずだから。


 「阻止するべきなのよね」


 面倒ったらありゃしない。でもあの方の娘であり『蓮』の姉であるあたしは。


 願いと権力を守らないといけないの。


 家に来るのは皆『一般人』ではない。


 高級時計を身につけ、高級スーツに包まれた『黒服』


 あたしは祖父ではなくお父様を選択した。

 

 元の人間関係のルーツは祖父から来ているものだけど、現時点では全てお父様の人間関係であり、権力なの。


 それをサポートするのがああし『碧生』の役目の一つでもあるの。


 『蓮』にはそれを…『十字架』を背負う程の精神力はないと思う。


 姉のあたしが守るのは当然の事。


 あたしは10代の頃、家のシガラミが嫌で仕方なくて『家』と『家族』を捨てる選択をした人間。

 

 10以上離れている『妹』の法蓮が心配だからこそ京都から色々な人間関係を削って、ここにいる。


 「もうあの口調はやめにしましょうか」


 本当の姿の「あたし」は仕事と自分の全てを隠す為に「演技」をしていただけ。


 それもこれで終わり。


 「あの口調…お父様から言われた通りにしていただけなのよ、もう疲れてしまうわ」


 そう呟きながら「彼」のグラスにワインを注ぐ。


 「ねぇ巳弦みつる?あたしの話聞いてる?」


 「……聞いているよ、聞き飽きて、眠いんだけど」


 「ふふふ、そうやって冷たくあしらう癖に、あたしを見捨てないのね」


 グラスに入ったワインは赤い血だまりみたい。


 あたしと巳弦みつるが混ざり合ったように。


 そこに情熱なんて言葉はなくて冷たい氷のように心を冷やしていく。


 ワインは毀れ、あたしも堕ちる。


 巳弦みつるにそれを止める事は出来るのかしら?


 (楽しみだわ…彼がどう動くのか)


 どんだけ我儘を言っても、あたしに力を貸してくれる彼の存在を『蓮』はまだ知らない。


 『まだ』ね……。


 (楽しみはこれからなのだから……ね?)


 心の声を隠すように、ワインの味を堪能しながら、巳弦みつるが調べ上げた情報を思い出しながら、彼の様子を伺うの。


 「きっと蓮といい勝負をするでしょうね、貴方は…」


 ポロリと独り言のように呟くのは壊れた旋律。


 あたし『碧生』と妹『蓮』の骨肉の争いの序章にしかすぎない。


 それに気づかない…いや、気づこうとしない巳弦みつる


 「何か言ったか?」


 「いいえ、何も」


 ふふふと微笑むあたしに違和感を感じながら、もう一口ワインを口に含んだ。





 


 

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