動き出した運命の糸
私の名前は『蓮』
碧生の正体を知る一人の人物である。
そして…『裏切者』の碧生を抹殺する為に用意された『子供』
ふふ…もう大人になった。この時をいくら待ちわびていたか…。
そう思うとゾクゾクするのは支配されている証拠なのだろうな。
「何で私が碧生の代わりに操り人形にならないといけないのか理解不能だな」
誰もいない空間で呟く私は人によって壊された人形、もしくは心を喪失したロボット。
全ては『家』と言う組織の為。
このレールから逃れる事は出来ない。
祖父は呟く。
「碧生はもういい、蓮お前は期待しているよ。可愛い孫よ」
「…あんな奴と同じにしないでくれないかな?裏切り者は排除する。それがこの家のシキタリ」
「そうだ。後は戸籍の問題だな」
「お父様は反対するだろうな。私を手放したくないと思うから」
「息子には『碧生』がいるじゃないか」
「捨てられた駒がね」
「私がこの家の本当の黒幕の跡取りよ?勘違いしないでほしい」
「ふはは。よく理解しているな、自分の立場と言うものをさすが蓮だ」
「当たり前だよ。おじい様。後は戸籍を父からおじい様に変更すれば…」
「「私達は守られる」」
私はおじい様の『賭け』に乗ったの。
自らの手を汚さずに全ての環境塗り替えるのが私『蓮』に課せられた仕事。
その為に心理学を学び、この家を支配する為に…権力と富を手に入れる為に計画されたレールの一つ。
「蓮、可愛い私の孫」
「碧生もおじい様の孫だよ」
「裏で動くのは妹のお前だけで充分だ。それだけの知恵は授けているはずだろう」
「…はいはい、分かっていますよ」
最初は純粋だった。普通の子供の蓮。
私がいない間に染まってしまった蓮は言わば『悪魔の子』そして私と敵対する唯一の『妹』
身内同士がつぶし合う、殺し合う。
それが私達の運命なのかもしれない。
「逃げた碧生の跡始末は私がするから安心して。もう土台は創り上げている」
「私からもう教える事は何もないな」
「お父様達を言葉で操る事が出来る私になら、おじい様の望み通りになると思うよ?」
「その言葉…信じてみようか」
「楽しみにしてて。私達「キョウダイ」がどこまで潰し合うのか見物でもしててよ。ギャラリーは多い方が楽しいでしょう?」
「蓮の言う通りだね」
染まりに染まった妹の『蓮』は私を潰す為に全ての策を企てながら、二つの勢力図が作られていく。
この『カ条家』の存続の為と繁栄の為に、どちらが勝つのか争いがはじまる。
金と欲と血と死体。
そして墓の与えられなかった、もう一人の兄の存在を知らしめる為に。
私『碧生』と私『蓮』は表裏一体。
傍から見ればそう見えるのかもしれないけれど、実際は違う。
表舞台に出る存在として教育を受けたのが「碧生」
その裏で邪魔をする人間を地獄へと堕としていく汚い仕事をするのが「蓮」
私達は光と闇。陽と陰。
月夜が浮かびながら、蓮の微笑みも加速していく。
「碧生…裏切者は排除する」
そう呟く蓮の瞳が笑顔から憎しみに変わった瞬間だった。