九話目
伏せ字使ったからセーフ
「料理ありがとうな、綾瀬」
「ううん、好きでしてるから、気にしなくても大丈夫だよ」
三人の和やかな夕食も終えて、二人で洗い物をしている。
ただ洗うだけでは詰まらないし、よく記事とかでお礼と謝罪は忘れるな、というものを思い出し、お礼コメントをするが、綾瀬は気にした様子もない。
いやカップルじゃないから、そんなことする必要ないが。
ただ普通にマナーという面だ。
「そういえば、綾瀬は今週の土日、予定ある?」
「え? んー……、と。うん、ないよ」
今考える感じがしたけど、もしかして予定が頭の中に入ってるんだろうか。
スペック高すぎだろう。
俺もそれくらい欲しいわ。脳にCPUでも入れて、記憶媒体でも開発してくれないかな。
くだらない考えは片隅に追いやり、聞いてみた。
「それじゃ、どこか行かない? この家に来てから一ヶ月、色々と家事をしてくれたから、そのお礼って言うか……」
ほぼデートに誘っているので、語尾に近づくに連れて弱くなっていく。
もし気があるとバレた場合、別れを切り出される可能性もある。
「え!?」
皿洗いの手が止まる。
「い、いやほら! 嫌ならいいんだ」
「う、ううん! 嫌じゃないよ! すごく嬉しい」
「そ、そっか……」
はにかみながら、下を向く綾瀬があまりにも可愛くて、こっちがどんどん赤らめる。
断られなくて良かった。
本当に良かった。
「あ、天川くんは……、どこか行きたいところとかあるの?」
「え? えっと……。特には思い浮かばないかな。一応、感謝の気持ちで誘ってるから、綾瀬が行きたいところならどこでも」
「そっか……。じ、じゃあ、少し遠くに、大きなショッピングモールが出来てね? そこでお買い物したいな」
「え、そんなところ出来たのか」
初耳過ぎる。
無関心なだけかもしれないが。
俺は綾瀬さえいればいいんだよ。
「百合ちゃんと三人で行こ?」
「あぁ、いいよ」
来てくれるかな百合。
あいつ友好関係広いから、毎週予定が詰まってるイメージしかないんだが。
ていうか三人か。
……まあ、二人きりデートというわけにはいかないよね。
成人式以降、デートしてないし。
「よし! 洗い物終わり!」
「いつもありがとう」
「好きでやってることだから」
最近、綾瀬は大和撫子なんじゃないかと思ってきている。
これで常に敬語で話してたなら、完全に大和撫子だろう。
いや大和撫子知らないけど。
「天川くん、お風呂に入る?」
「入るよ。綾瀬は入ったの?」
「入ったよ」
「そっか。じゃあ、部屋で待っててくれ」
「うんっ」
可愛い。
とりあえず可愛い。
語尾に『綾瀬可愛い』が必ず付く呪いをかけられても、生きていける。
綾瀬とは一旦離れて、風呂場に向かった。
☆☆☆☆
「お菓子良し。部屋の掃除良し。シーツなどの寝具の変え良し。……下着良し」
天川くんの毛布を肩からかけるようにして、周りを確認していく。
もう一度、天川くんと……。
「えへへ……」
既に何回もしているから、痛みも完全に無くなっている。
あとは天川くんを待つだけ。
「……チョコ、美味しいって言ってくれるかな」
昨日、凛ちゃんと作ったチョコを見ながら呟く。
シンプルな形にして、味見もしたから大丈夫だと思うけど……。
「うぅ、初めて渡すから分かんないよぉ」
でもアレだよね?
私とえっちするとき、天川くんってすごく興奮してるように見えるし、私の体にチョコを塗ったほうが良かったな?
『バレンタインチョコは私だよ? 食べて?』
「むりむりむりむりっ」
頭を振って妄想を振り消す。
恥ずかしすぎて死んじゃう。
しかもえっちな女の子みたいに思われたくない。
「上がったよ綾瀬ー」
なんて色々と考えていたら、天川くんが帰ってきた。
部屋の扉が開かれる。
「仕事終わりのお風呂はいいも……、ん……」
私の姿を見て、硬直する天川くん。
部屋に戻れば、下着姿でいる私がいる。
天川くんも驚くんだと思う。
「あ、綾瀬? そ、その格好は?」
声が上擦っていた。
そんな反応されるとこっちも恥ずかしくなる。
「え、えっとね……。と、とりあえずこれっ」
「ん……?」
手に持ったチョコを渡すと、天川くんは不思議そうな顔をしながら、チョコを見る。
「これは?」
「き、今日はバレンタインだから……」
「え? あ、そうか、そうだったな」
「それでね……」
近くに置いておいたポッキーを手に取る。
「バレンタインだから、バレンタインらしいこと、しない?」
「ふぁ!?」
顔を真っ赤にしながら、驚きの声をあげる天川くん。
ポッキーを一本取り、口に咥える。
「ん〜!」
「あ、えっと、その……」
目の焦点が合わない。
恥ずかしすぎて、目を瞑る。
「………………そ、それじゃぁ」
ポッキーの端が咥えられた感じがした。
私達はなんの合図もなく、同時にポッキーを齧りだす。
「ぼりぼり……」
天川くんの匂いがどんどん近づく。
なんて思っていたら、天川くんの唇と、私の唇が重なった。
「あっ……」
天川くんの唾液と、ポッキーが私の口内を犯していく。
「れろ、じゅるっ」
「ん、んんっ。……わ、くん……」
喋ろうとしても、天川くんが口から離してくれない。
なんだか無理やりな感じがして、すごく嬉しがる私にドン引き。
「ぴちゃ、ぴちゃ」
唾液と唾液が混じり合い、淫靡な音を立てる。
天川の背中に手を回し、密着していく。
「ら、らめ……」
流石にこれ以上キスをすると、スイッチが入っちゃう。
でも、私の言い分なんて聞かずに、天川くんは接吻を続けている。
「チュパ、じゅる!」
「っ!?」
突然のことに反応できず、力いっぱい天川くんを突き放した。
彼は私の拒絶を気にすることなく、咀嚼を続け、飲み込んだ。
「チョコの味分からないなこれ」
「い、い、い、い、い……!」
「ん? どうかした?」
「い、今……っ!」
口に出そうとするけど、恥ずかしくて回らない。
ほとんどなされるがままにされてたら、口の中にあった唾液とポッキーを全部舌で取られた、だなんて、恥ずかしすぎる。
ていうかなんでそんなことするの!
「いや、反抗しないからついつい」
「ついついじゃないよ! もう! もう!」
天川くんの胸を叩く。
けど、彼は痛くもないのか、気にした素振りもみせず突然抱きついてきた。
「美味しかったよ」
「ん〜!!」
耳元で囁かれ、悶えてしまう。
今もう、天川くんの顔見れない。
なんていうか、恥ずかしい。とにかく恥ずかしい。
でも、今日はせっかくのバレンタイン。
「ね、ねぇ天川くん……」
「ん?」
ブラのフックを外し、彼を誘う。
「今日はバレンタインなんだし、食べるのはチョコだけ?」
「え? え?」
まだ分かってないみたい。
いきなり人の唾液まで吸う人には
、キツイお仕置きが必要です。
「今度は──」
天川の耳元に口を移し、小さく呟いた。
「私を食・べ・て」
「…………」
数秒固まった彼は、
「綾瀬!!」
私に襲い掛かってきた。
このあとめちゃくちゃセック○スした
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