八話目
バカップルは、自分たちのことしか見えてない
この小説も同じ。リアルの四季が変わっても、ここはいつも通り平常運転です
つい先日、HR100になりました
シャララ、素敵にきっす
シャララ、素直にきっす
明日が特別スペシャルデー♪
「バレンタインデーキッス」
明日はなんとバレンタインデー。
バレンタインと言えばチョコレート。
チョコレートと言えばにょt(ry)
天川くん、喜んでくれるかな?
「隠し味はなににしようかな。唾液とか血液とかおしっことかあるけど、うーん……」
実際はこんなことしないで、そのまま私を食べてほしいけど……。
というか、恋人でもないのに、一緒に寝たりお風呂入ったりするのって、友達なら普通なのかな?
……普通だよね! 天川くんも受け入れてくれてるし!
「……あのさ沙雪、チョコレート作るのはいいけど、見た目はどうするの?」
そう話しかけてくるのは、友達の凛ちゃん。
男気が強くて、結構ガサツなタイプだけど、友達思いのいい子。
「んー? もちろんハートだよー?」
「いやぁ、ハートにしなくてもいいと思うよ」
恋愛相談として、よく凛ちゃんに天川くんとのことを話したりしてる。
一番の親友だから、よく色々なことを話してる仲。
「アピールしなきゃなんだよ!?」
「いや別に、沙雪の話を聞く限り、要らないと思うんだけど」
「いるよ! 家庭的な女の子の方が、天川くんだって嬉しいって言ってたもん」
「あぁいや、そういうことじゃなくて……。まあいいや」
「うん。ところで、凛ちゃんは作らないの?」
「ウチは作らないよ。どうせ貰う側だし」
凛ちゃんは女の子にモテる女の子なのだ。
学校の男子よりも貰ってるのをよく見てた。
私は天川くんしか見てないから、バレンタインに他の男の人に渡すことはしなかったけど。
それはさておき。
「たまに作ったらー?」
「……はぁ。じゃあ天川にでも作るよ」
「…………」
「冗談だって。だからそんな怖い顔しないの。可愛い顔が台無しだよ」
別に怖い顔なんてしてないもん。
睨んでもないもん。
嫉妬なんてしてないもん。
独占しようとか思ってないもん。
どこぞの馬の骨とかが天川くんと話すのが許せないからって、私がお世話するから両足切断して、ずっと部屋で養いたいとか、そんなこと思ってないもん!
「ほーら」
凛ちゃんは私の頬に触り、グニグニと揺らす。
さり気ないボディタッチで、何人ものの女の子をたらしてきた凛ちゃん。
「むぅ……」
「今度は膨れるのね……。ほら沙雪、それよりチョコ作るよ」
「え? あ、う、うん」
「見た目は無難なチョコでいいんじゃない? 沙雪からなら、天川も何でも喜ぶと思うよ」
「そ、そうかな……」
「そうそう」
凛ちゃんがそこまで言うなら……。
まずは市販のチョコを溶かしていく。
「見た目はまあ、丸とか四角とか適当な感じで」
「うん」
「味は沙雪が作るから心配ないとして。まずどうするの? チョコブラウニーとかチョコフォンデュとかチョコケーキとか色々あるけど」
「チョコフォンデュは道具がないと……」
作れはするけど、バレンタインにわざわざそんな行為したら、好意がばれちゃう。
バレないように接してるんだから。
チョコを溶かしている間に、型を作っておく。
「私が作るのはチョコカップケーキだよ」
「ああ、それにしたの。でも道具は?」
「一応ある」
無かったら作らないもん。
たまたまあったから良かった。
調理を進めながら、凛ちゃんに聞く。
「でもやっぱり、唾液とか血とか入れたほうがいいと思うの」
「なにわけのわからないこと言ってるの。そんなことしたらドン引きよ」
「で、でもでも、体液を入れると二人は永劫添い遂げられるとか、聞いたことあるよ!?」
「聞いたことないわねそんな話。普通に作らないと天川に幻滅されるわよ」
「げ、幻滅……」
料理していた手が止まる。
『ごめん沙雪。沙雪がそんなことするなんて思わなかった。こんなことするなんて、恋人じゃいられない。結婚しよう』
「えへ、えへへへ」
「なんで幻滅って聞いて喜んでんの……」
凛ちゃんが頭を抱えた。
ごめんなさい。
「そういえば、高校のときにいた──」
それから、昔話などを入れながら、二人だけの女子会が続いた。
☆☆☆☆
「なんで世間はバレンタインなのに、仕事してるんだ」
上司にバレンタインください、って言ったら仕事を貰った。
あの上司は絶対に許さない。
家の鍵を開けて、中に入る。
「ただいまー」
「お兄ちゃんおかえりー」
百合が出迎えてくれる。
笑顔で来てくれるので、つい頭を撫でていると、
「天川くん」
彼女の声が聞こえた。
すぐそちらに目を向けると、エプロン姿でおたまを持っている姿が目に映る。
控えめに言って可愛い。
「ただいま、綾瀬」
「おかえり、天川くん」
なんだか、エプロン姿で夫の帰りを待ちながら料理をしている新妻みたいだ。
ただいまマイハニー。
互いに名字呼びなのを突っ込むのはNG.
「てかあれ? 母さんは?」
綾瀬がおたまを持っているというとは、料理は綾瀬がしていることになる。
基本は母さんが作ってるんだが。
「なんだか市の集まりがあるみたいでね? それに参加しないとだから、帰りはいつになるか分からない、って」
「ああ、なるほどね」
ご近所付き合いだろう。
俺はご近所さんとかいないので、そういったことに関しては関係ない。
ビバぼっち(泣)。
「それで、綾瀬は何を作ってたんだ?」
鼻孔をくすぐるスパイシーな匂いで、大方の検討はつくが、もし間違ってたら悲しいので聞いておく。
「カレーだよー」
可愛らしい笑顔と共に答えを教えてくれた。
この一ヶ月で大分、綾瀬の耐性ができている。
前までみたいに、笑顔一つでやられるほど弱くないのだ。
「美味しく作るから、待っててねっ」
「ぐは……」
第二の笑顔が降りかかる。
俺の防壁を簡単にぶち破ってきた。
訂正。
俺はまだまだ弱いようだ。
☆☆☆☆
「お姉ちゃんの料理美味しいね!」
「そうだなぁ」
百合がはしゃぎながら、カレーを食べ続けている。
感想に相槌を打ちながら、俺もカレーを食べ続けていく。
「お兄ちゃん」
「そうだなぁ」
「聞いてるー?」
「そうだなぁ」
「お兄ちゃんのカレー奪うよ」
「そうだ……、いやまて」
さり気なく人の楽しみを奪うんじゃないよ。
「私の話を聞いてよ」
「ん? どうかした? ゲームのコントローラー壊れた?」
「壊れてないよっ! そうじゃなくて、私とお兄ちゃん、普通に食べてるけど、お姉ちゃんはまだ食べてないよ?」
「いいか百合。美味しいものを目の前に出されて、人間はそれを我慢できないんだ。俺たちは教育を受けた犬以下なんだ」
「……本音は?」
「謝って許してもらおう」
「怒ってないから、謝らなくてもいいよ〜」
百合との会話を聞いてたのか、綾瀬が笑いながら入ってくる。
自分の作ったカレーを持って。
「それに、自分の作った料理を、美味しいって言って食べてくれることが、何よりの幸せだから」
天使かと思った。
むしろ天使じゃなかったらなんだというのか。
女神? 天女? 聖女?
「辛さも丁度いいし、お姉ちゃんはアレだね。典型的な『お嫁さん』だよね。胃袋掴まれちゃった」
「もう、百合ちゃんは口が上手いんだから〜」
照れくさそうに笑う彼女。
満更でも無さそうだ。
「でも綾瀬、最近は家に来ること多いけど、大学は大丈夫なのか?」
「もう進学が目前だから、長い時間は暇なんだ。だから、大丈夫だよ」
「マジか……。大学生ってやっぱり暇が多いのか」
「いやお兄ちゃん、お姉ちゃんが特異だと思う」
まあ、可愛さだとかそういう意味では特異だが。
そういう意味ではないことは俺でも分かる。
「天川くんは、特にやりたい仕事が無かったから、高卒で働き始めたんだもんね」
「そうだよ。まあ、それ以外にもあるけど」
百合のことをちらっと見る。
俺の目線に気付いた綾瀬は、何も言わずに話題を変えた。
「百合ちゃんは、なにかやりたいこととかあるの?」
「ん〜? 今はまだ決めてないよ。とりあえずまあまあの偏差値がある普通科の高校に入って、そこから探そうかなーって」
しっかりしてるのかしてないのか分からないな。
まあ百合の人生だから、百合の好きにすればいい。
母と兄の、妹に対する純粋な気持ちだ。
「んー……。でも少し、辛さが足りないかなぁ」
綾瀬は自分の料理を辛口評価で見ている。
辛さが足りないから甘口評価かもしれないが。
「そう? 俺はこのくらいでもいいと思うよ」
「盛り付けで少しだけ変わっちゃったかな。天川くん、こっちも食べてみて」
そう言って、カレーを少しと、具材を取ったスプーンをこちらに差し出す。
それを一口。
「あむ。いや、別に変わらないと思うよ。ほら」
綾瀬と同じようにする。
「あーん。あ、本当だ。天川くんがこれでいいならいいんだけど」
「……むしろ私が辛さが足りなくなってきたんだけど。甘いんだけど」
「え!? 百合ちゃん、大丈夫!?」
「このバカップル!!」
百合の叫びが家中に響いた。
カップルじゃねえよ。
バレンタイン前編です。
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