五話目
美少女になれば、イケメンと付き合えると信じてる
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「んー! 楽しかった!」
動揺しながらも、なんとかゲームを続行してたら、百合は気が済んだのか、コントローラーから手を離した。
「お兄ちゃん、なんかいつもよりダメダメだったけど、どうかしたの?」
誰のせいだと思ってるのか。
恋人関連で俺と綾瀬のことをいじるのはやめてほしい。
二度と会わなくなるかもしれない。
「いや、百合が上手くなってたから、ダメダメに見えたんじゃないかな」
「ふーん、そっかー。あ、そうだお姉ちゃん」
「ふぇ!? え、えっと、なに?」
「お姉ちゃん、今日泊まるんだよね? 一緒にお風呂入ろうよ」
「え? そ、それはいいけど……」
綾瀬がチラッとこっちを見てきたので、頷いておく。
「そうだね、一緒に入ろ?」
「やった」
仲睦まじい光景だ。
姉妹と言われても信じてしまうほどに。
「お風呂はこっちだよー」
「わ、わっ……ち、ちょっとまって〜」
百合に引っ張られながら、綾瀬はお風呂場まで連れ去られて行く。
とりあえず多少散らかったテーブルなどを片付けておくことに。
「貴一」
お菓子の袋、ゲーム機のケーブルなどをキレイにしていたら、母親から声をかけられた。
部屋で寝てたんじゃないのかと思い、後ろに振り返る。
「どうかした?」
「あの子は?」
「百合とお風呂に入ってるよ」
「それなら都合が良いわね。……よいしょ」
ソファに声を出しながら座る。
もうそんな歳になってしまったのか……。
「貴一?」
「都合が良い、って、どうかした?」
思考が読まれそうになったので、すぐに話を戻す。
俺の言葉を聞いた母親は、しばし考えてから、口を開いた。
「孫の顔はもう見れそうなの?」
「ふぁ!?」
雰囲気がすごく真面目な感じだったから、一体なんだと思えば、また下ネタだった。
母親に下ネタを振られる息子の気持ちを考えてほしい。
「あの子、アンタの彼女でしょ?」
「クラスメイトだよ」
「嘘おっしゃい。最低でも友達以上恋人未満に見えるけど?」
「目が腐ってるんじゃないの?」
なぜ俺と綾瀬が恋人のように見えるのか。
いや嬉しいけど、そうじゃないし。
それに、綾瀬も嫌がるだろう。
「まあ、そう言うなら別にいいけど。私、明日も仕事だから、夜はできるだけ声を抑えてね」
「うるせえよッ!」
つい全力で突っ込んだら、リビングの扉が開かれた。
「あれ? お兄ちゃんどうかした?」
「なんか天川くんの大声が聞こえたけど、どうか……あっ」
ピンクと青を取り入れたパジャマを着込んで、頭からバスタオルを垂らす綾瀬が出てきた。
可愛すぎて隣にいる百合に目なんて行かない。
「す、すみませんお母さま、お風呂使わせていただいて」
「あらー、いいのよ別に。それより、不備とかなかった?」
「い、いえっ。とても良かったです」
「それなら良かった。それじゃ貴一、私はもう寝るから」
「おやすみ」
「綾瀬ちゃんもおやすみね」
「おやすみなさい」
「私はお姉ちゃんともう少し話してから寝るね」
「分かったわ。気にせずベッドに入ってきていいからね」
「はーい」
百合は基本、家族の誰かと寝ないと、夜寝れないのだ。
だからたまに、俺と寝るときもある。
「俺はお風呂入ってくるから」
「うん、行ってらっしゃい」
「な、なんなんだこの二人……!! 流れが完全に……っ!」
なんかいきなり騒ぎ始めた百合を無視して、俺はリビングを出て風呂場に向かう。
ていうか綾瀬ともう少し話すって言ってたが、お風呂で色々と話したんじゃないんだろうか。
☆☆☆☆
お兄ちゃんがお風呂に入ったことを確認して、私はお姉ちゃんと大事な話をすることに。
だって──お兄ちゃんの人生に関係することだから。
「お姉ちゃんってさ、お兄ちゃんのこと好きなの?」
「ふぇ!? い、いきなりどうしたの!?」
年上とは思えないほどに可愛い。
危ない門を開けても仕方ないことかもしれない。
でもノーマルで生きていきたいから、門を開けちゃだめ。
「隠さなくてもいいよ。私も二人の意を汲んで、いつも通りにしてたけど、お姉ちゃんと私しかいないもん」
一緒にゲームしてお風呂に入って裸の付き合いもした。
警戒されることはないはず。
というか、お兄ちゃんのことが好きだった場合、私やお母さんの許可を取らないと、お兄ちゃんのことは渡せない。
だから、警戒されようがされまいが、そこは関係ないかも。
「……うん、そう。天川くんのこと、すき」
ポツリ、と。
お姉ちゃんが本音で話してくれた。
そのことが嬉しくて、思わず抱きついてしまう。
「きゃ!? い、いきなりどうしたの?」
「んーん、なんでもな〜い」
どうせお兄ちゃんも、お姉ちゃんのことが好きなんだろう。
二人共、互いを見る目が他とは違う。
ていうか好意がバレバレなんだけど。
なぜ気付かないのか不思議に思うほどに。
鈍感過ぎる。
「お兄ちゃんのどこを好きになったの?」
「ど、どこって……。一目惚れだから……」
耳まで真っ赤にして、声が小さくなっていく。
お兄ちゃんと同じ年ってことは、二十歳なんだろう。
初心過ぎる。
初々しい。
少女漫画の主人公か、って突っ込みたくなる。
クラスにカップルいるけど、あの人たちよりもすごい。
「一目惚れってことは、いつお兄ちゃんと同じクラスに?」
「し、小学一年生のときと、小学六年生のときと、中学三年生のとき」
うっそ……。
「小1で一目惚れなんだよね? つまり片想い14年!?」
「そ、そうなるかな……?」
どんだけ純情で一途なんだろう。
てかお兄ちゃん、好きな人いたんだ。
ていうか地味に、同じクラスになったことを覚えてるのが怖い。
「でもそっかぁ〜、一目惚れで14年かぁ〜」
「あ、あまり言わないでくれると嬉しいかな〜、って」
「恥ずかしがることないよ? 付き合って10年は世の中の結婚した人とかは軽く超えるけど、片想いで10年も想い続けるのは、そうそうできることじゃないもん」
「そ、そうなの……?」
不思議そうに言われた。
むしろなぜできる事だと思ってるんだ。
小中、という多感な時期で、色々と目移りする中、たった一人の相手を見るのは、簡単じゃない。
私も中学生だけど。
初恋もまだだけど。
お兄ちゃんが優しすぎて、目が肥えてる。
お兄ちゃんが全面的に悪いと思う。
「あれ? まだリビングにいたのか?」
「あ、あ、あ、天川くん……!?」
さっきまでお兄ちゃんのことを話してたからか、動揺がすごい。
こんだけのものを見せても、お兄ちゃんは気持ちに気付かないもんね。
ある意味、尊敬できる。
ぜひとも反面教師にしよう。
そう思った私であった。
☆☆☆☆
「百合はまだ寝なくていいのか?」
中学生なんだから、遅くまで起きると成長が止まると思うんだが。
「もう寝るよ。お姉ちゃんと話したいことも話したし」
「そうなのか」
なんか隣にいる綾瀬は下を向いてるけど。
なに言ったんだこの妹。
なにか悪口とか?
『そんなにかわいい顔してるとか許せない!』『反応がいちいち可愛すぎぃ!』『髪綺麗! スタイル抜群! ボンキュッボン!』
とかだろうか。
俺もイケメンになれば、かっこいいセリフが言えるのに。
顔がイケメンなら、行動もイケメンになれると信じてる。
「あとはお二人でごゆっくり〜」
なんて言いながら百合はリビングから消えて行った。
眠った母親のベッドにダイブでもしに行ったんだろう。
俺も一度されたが、胃の中のものが出るかと思った。
閑話休題。
「とりあえず、俺の部屋行く?」
「え? あ、うん……。そうだね」
なんというか緊張してしまう。
女の子を自室に呼ぶって、こんなにも緊張することだったのか。
しかも好きな人だから尚更だ。
リビングを軽く片付け、家中の電気を消して階段を登る。
「ここが俺の部屋だよ」
「わぁー、ここが男の人の部屋……? なの……?」
疑問を出すのはやめてほしい。
そりゃ確かに、物が少ないけど。
テレビとゲーム機とパソコンと布団しかないけど。
あとは本棚(本が入ってるとは言っていない)くらい。
「天川くん、本当にここに住んでるの?」
「いや住んでるよ」
ゲーム機はBDプレイヤーにもなるんだぞ。
テレビはアンテナ繋いでないから、番組見れないけど。
「なんていうか……、その……」
「いや無理して何か言おうとしなくていいから。むしろスルーしてくれた方が嬉しいから」
枕の近くに置いてあるエアコンのリモコンを操作する。
「ベッドにしないの?」
「寝相で落ちたら痛いじゃん」
「小学生じゃないんだから……」
呆れながら笑う彼女。
あまりにも可愛すぎて心臓が破裂しそう。
「ほら綾瀬、おいで」
手招きをして、彼女を布団に誘う。
布団に入ろうとしたところで、動きが止まった。
「? どうかした?」
「えっと、ね……。非常に言いづらいんだけど……」
「気にせずに言ってくれ」
「……服を、脱いでほしいなって」
「え?」
「あっ……、その……! べ、別にえっちな意味じゃなくてね!?」
必死に弁明する綾瀬可愛い。
じゃなくて。
「どんな意味?」
「昨日、一緒に寝たとき、すごく幸せだったから……」
涙目になりながら、昨夜のことを思い出したのか、少しだけ顔を赤くする。
そんな姿を見て、ついつい吹き出してしまった。
「ふはっ」
「な、なんで笑うの〜!」
「い、いやだって……! それくらいなら、別にいいよ」
「え?」
俺は上着を脱いで、上半身裸になる。
「わわっ……」
「これでいい?」
「う、う、うん……っ」
彼女は恥ずかしくなったのか、下を向きながら、自分も上着を脱いだ。
フリフリのブラが露わになり、今度はこっちが恥ずかしくなる。
ブラで押して上げてるのか知らないけど、谷間がはっきり見えてやばい。
なにがやばいって、ナニがやばい。
「あ、あんまり見ないでよぅ……」
「え? あ、ご、ごめんっ」
つい凝視してしまった。
好きな人のことなら、なんでも見たり知りたくなるのは人間の真理だと思う。
綾瀬は身を隠すように、同じ布団に入ってくる。
「ねえ天川くん」
「んー? どうかした?」
「ちょっと腕を前に突き出してみて」
「こう?」
言われた通り、横になり腕を前に出すと、そこに綾瀬は頭を置いた。
「腕枕の完成だ〜」
なんてとんでもなく素敵な笑顔で言うものだから、思わず吐血するところだった。
今のはずるい、逝った。
「ぎゅ〜」
更に俺の体に腕を回し、思いきり抱きついてくる。
柔らかい感触が胸に当たる。
全神経がそっちに集中してしまう。
男の性だと思ってる。
「いい匂いー」
さっきお風呂に入ったばかりだから、きっとボディソープの匂いがするんだろう。
正直これ以上はよくない。
なにがよくないって、ナニによくない。
「素数だ、素数を……」
「何言ってるの……?」
変な目で見られたが、今はそれどころじゃない。
……あっ。
「きゃ!? ね、ねぇ天川くん」
「男なんだ、許してください」
「えっと、それはいいんだけど……。し、シたい?」
「いやいや、明日も仕事あるし、大丈夫」
個人的にはすごくシたい。
でも我慢しないといけない。
男はつらいよ。
「我慢できなくなったら、いつでも言ってね?」
ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
可愛すぎてつらい。
つらみが深い。
つらさが臨界点を突破。
やばみが限界点を超えそう。
何を言ってるのか分からねえと思うが、俺も何を言ってるのか分からねえ。
「んー……」
頬をスリスリと寄せてきた。
妹のシャンプーを使ったのだろうか?
頭を揺らした瞬間、妹と同じ匂いがした。
本人の匂いとは別なのですぐ分かる。
「すごく……安心するぅ……」
語尾が弱々しくなっていき、
「すぅ……すぅ……」
いつしか規則正しい寝息が聞こえてきた。
寝たというのに、抱き着いてきた腕は健在だ。
「……あれ、これまずくないか?」
気付いてはいけないことに気がついてしまった。
いや綾瀬に言えば、やらせてくれるだろう。
だが、なんか言うのも男としてどうかなと思ってしまう。
我慢するしかない。
「……長い夜になりそうだ」
俺はこの日、好きな人と一緒に寝ることがつらいことを知った。
ショタになれば、女子大生年上お姉さんが甘やかしてくれるって信じてる
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