二十三話
誤字報告・感想、ありがとうございます。
誤字については言い訳させてください。
iPadPROで書き始めたので、慣れてないんです。
前までは携帯やポメラで書いていました。
最近、沙雪の調子がおかしい。
年末年始は長期休暇なので、いつもとおかしい沙雪とずっと一緒にいることに。
まあただ一緒にいたかった、という気持ちもあるが。
そんなわけで、何度か聞いても『なんでもないよ』と笑顔で言われる始末。
おかしい。何かがおかしい。
そんなことを思いながら、今日はブライダル専門までやってきた。
指を測るのに、紙を巻いて測る。
などあるらしいが、不器用な俺にそんなことできるわけもなく。
専門店に、指輪のレプリカ一覧があり、それを彼女の指に一つ一つ嵌めて確かめていく方法だ。
はいそこ、脳筋とか言わない。
「お待ちしておりました、天川様。彼女様のサイズは分かりましたでしょうか」
「はい。9号でした」
「かしこまりました。それでは、カタログをお持ちしますので、こちらへ腰をかけてお待ちください」
案内された椅子に座り、少し待てば先程の店員が帰ってきた。
「こちらになります」
カタログを見せてもらうが、正直何が違うのか分からない。
沙雪は、可愛いものが好きだが、シンプルな物も好きなので、シンプルな指輪を探すことに。
「いかがでしょう。当店自慢の指輪もあります」
紙も渡された。
そこには、ダイヤかプラチナか分からない宝石のついた指輪が写されている。
値段を見ると驚き。正直高すぎる。
「シンプルな物が欲しいんですけど……」
「これは失礼しました。私はここにいますので、何か困ったことなどありましたら、お気軽にご相談ください」
「あ、はい」
店員が離れていくのを確認してから、またカタログに目を向ける。
あれじゃない、これじゃない。
これは沙雪が気に入らない……。
なんて迷っていると、一つのものを見つけた。
「あのー」
「はい。どうなさいましたか?」
「この指輪を見せてもらいたいんですが」
「かしこまりました。少々お待ちください」
また、店員が離れていく。
ていうかあの人すごいな。
ちょっと話しただけですぐ来たぞ。
ちょっと離れていたのに。
「こちら、天川様の選んでいただいたものになります」
ケースから開けられたのは、銀色に輝く指輪。
特に装飾らしい装飾もなく、シンプルな輪っかがある。
……沙雪、喜んでくれるかな。というか、受け入れてくれるんだろうか。
「…………天川様?」
悩んでいると、店員さんから話しかけられてしまった。
すぐに考えを中断し、店員さんと話す。
「買います」
「ありがとうございます。すぐに準備致します」
あれこれと店員さんが準備する中、俺も渡された書類を書いていく。
保証証みたいなもので、万が一サイズが合わなかった場合の交換など、色々と書かれていた。
正直、こういう長い文章は頭が痛くなるので、やめて欲しいのが本音。
百合の授業参観の紙も読んですぐやめた実績がある。
「お待たせしました。こちら、購入していただく指輪です。お代は──」
言われた値段を一括で払い、品物を受け取る。
「ご購入ありがとうございます。我々スタッフ一同、天川様の未来を願っております」
なんていうか、めっちゃ下からの対応で困ってしまう。
一礼をして、専門店から出ていく。
☆☆☆☆
家に帰ると、沙雪が待っていた。
「おかえり、貴一くん」
「ただいま、沙雪」
いつもなら、ここで俺に抱きついて来るはずなんだか、今日はしてこない。
それどころか、いつもと雰囲気が違う。
「どうかした?」
「あの、えっとね……」
いつもと違う。それだけははっきりと分かる。
だから、沙雪が次に伝えてくる言葉が来るまで待つことに。
「な、なんて言うか、改めて伝えようとすると恥ずかしいね」
「いつも恥ずかしいことしてるのに?」
「そ、そういうこと言ってるんじゃないよ!」
顔を真っ赤にしながら怒ってくる沙雪。
怒ってる姿も可愛い。
「……できたの」
「え?」
ご飯が?
いやいや、ご飯ができたくらいで、こんな恥ずかしがる理由がない。
それとも、また何か新しいプレイを思いついて、その準備ができたんだろうか。
「き、貴一くんとのね……。子供ができたの」
「えっ……?」
言葉を失った。
いや、そりゃできるようなことはしてきた。
我が辞書に避妊なんて言葉はないくらいに、かなりシてきた。
「あの、貴一くん……?」
「え、あ、え……」
こういう時、どんな顔したらいいのか分からない。
こんな時、どんな言葉をかけたらいいのか分からなかった。
「う、嬉しくない……? もし嫌なら、本当は嫌だけど、貴一くんとは離れて、一人で育てるよ?」
「な……、いっ……」
なに訳の分からないことを言ってるんだ。
そう言おうとしたが、言葉が出てこない。
だから変わりに、彼女のことを抱きしめる。
「きゃっ。き、貴一くん……?」
「ありがとう。離れないでくれ。ずっと一緒にいよう」
「──ッ!?」
声にならない音が聞こえた。
「嬉しくないわけがない。沙雪との子供が嫌だなんて、微塵たりとも思わない。産んでほしい。そして、一緒に育てていこう」
「…………うん。うんっ!」
その日は、沙雪とずっと喜んだ。
そして、興奮がある程度下がったあと、沙雪とソファに座る。
「でもそっか。最近、何か調子がおかしいと思ってたけど、妊娠してたからなんだな」
「うん。隠してて悲しかったけど、驚かせたかったんだ」
「驚いたよ。すごく驚いた。でもそっか」
順番、逆になったな。
なんて言葉は出さず、本題に入る。
「貴一くん?」
「沙雪から大事な話をしてもらった後で悪いし、なんか責任取るためみたいになるけど」
買ってきたケースを取り出す。
そして、中を見せながら彼女の瞳を真っ直ぐ見ながら、思いを伝える。
「綾瀬沙雪さん」
「は、はいっ!」
声は上擦っていて、少しだけ涙が溜まっていた。
「これから、天川沙雪になりませんか?」
「そ、それって……」
「結婚しよう」
言葉と同時に、彼女の目から、涙が溢れていく。
悲しみの涙じゃないことなんて、一目で分かる。
そして何より──
「結婚、お受けします」
涙を流しながら、笑顔を向けてくれる彼女は、指輪なんかよりも綺麗だった──
☆☆☆☆
「ねえ、貴一くん」
「ん?」
プロポーズして、なんていうかお互いに気恥ずかしい気持ちになって沈黙してたが、沙雪が先に口を開いた。
「私たち、結婚するんだね」
指に嵌めた指輪を見て、感慨深そうにするうちの嫁。
プロポーズしてから、指輪を見てニヤニヤしてた妻。
「結婚するんだから、私のお母様とお父様に挨拶するんだよね?」
「あっ……」
「え? どうかしたの?」
すっかり忘れてた。
というか、告白して付き合って、一度も挨拶したことがない。
「もしかして……。忘れてたの?」
はわわ……。
挨拶、なんて言えばいいんだろう。
可愛い女の子とイチャイチャしたいだけの人生でした。
遂にここまで来ました。
話数で見ると少ないですけど、年月で見ると長かった。
ここまで来れたのも、読者様のおかげです。
ありがとうございます。




