十七話目
お久しぶりです
リアルで色々とあり、情緒不安定でしたが、なんとか復帰し、久しぶりに更新できることができました
読者の皆様からの感想が、何よりの励みです
P.s.内容が内容なため、甘々にできなかったから公共施設で読んでも問題ないよ
綾瀬からの誘いから、早一週間。
二人で不動産屋を巡ったり、ネットで調べたりなどして、二人の住む家を見つけることができた、
そして、いざ引っ越しをすることになるのだが、土日の2連休では準備などで足りないと予想し、有給を出すことに。
「え? 有給? お前が?」
「えぇ。通してもらえないでしょうかね」
有給申請理由は『引っ越し準備』と書いたが、果たして通るだろうか。
「ダメに決まってるだろう」
「ですか」
「今まで、お前は有給を使わずにいた」
(ああ、俺は休まない人間だから、休むと思われてないのか。土日で頑張るしか……)
「だから俺達は、労基法的な理由で、お前に無理やり有給を使わせてきた」
「……ん?」
なんだか流れは思ってたのと違うぞ?
「そんなお前が、今こうして有給申請をしてくるとは……。俺は嬉しいよ」
「な、なら……っ」
「だが、ダメだ」
「ど、どうして……?」
「有給に理由なんか要らない。理由は『私用のため』で十分だ。書き直せ」
「ぼ、ボス……っ!!」
一生付いていこうと思った。
とまあ、そんな一悶着も終え、二日間の有給で四連休となった土曜日がやってきた
☆☆☆☆
「あ、それはこちらに。はい、はい。それはあちらの部屋に。ああ、そうですね、それでお願いします」
引越センターの人たちと慌ただしく話す綾瀬を尻目に、俺は与えられた仕事をこなす。
「いくら安く済ませようと思って、テレビなどの配線は自分たちでやるって……数千円の差なんだから業者にやらせればいいんじゃなかろうか」
独り言をこぼしながら、ケーブルを繋げていく。
えっと、これはレコーダーで、こっちはゲーム機。
更にこっちが電源と。
あ、テレビ回線も繋げないとだ。
電源を入れて、リモコンで操作していく。
「布団はこちらの方へお願いします」
綾瀬が実に忙しそうだ。
借りた部屋は2LDKとなる。
家賃は七万で、駐車場無料に敷金礼金無し。
まあまあ良い物件だろう。
駅からは少し遠いが、近くにスーパーもあるので綾瀬も買い物がしやすい。
近いほうが通いやすいと言ったのだが、
『あと一年もせずに大学を卒業するんだから、わざわざ近いところに住んで家賃を高くするメリットはないよ』
とのこと。
「てかこのテレビ、高いからか性能良いな」
裏側見ろよこれ……。
ケーブルではなくWi-Fiでチャンネル見れるんだぜ……?
衛星放送、と言うんだっけか。
にしても60インチは大きすぎる気がする。
いや選んだの俺だけど。
あれだよね。
店頭では小さく見えるけど、家に持ち帰るとかなり大きい、みたいな錯覚あるよね。
「この度は我が社を利用していただきありがとうございました。弊社はお二人の明るい未来をお祈り申し上げます」
「ふぇ? っ! い、いえいえ! そ、そんな!!」
突然慌てふためく綾瀬。
可愛い。
「それでは、我々は失礼させていただきます」
そう言って、業者は帰って行った。
「あ、天川くん」
先程の言葉をまだ引きずっているのか、顔が赤い。
「どうかした?」
「これから、楽しいことや辛いこと、嬉しいことや悲しいことがあると思う。でも、それでも、天川くんとなら、どんな困難でも乗り切れると思うんだ。だから──」
一拍置き、彼女は恥ずかしそうに笑う。
「──幸せで明るい未来、築いていこうね」
「……ああ、そうだな」
なんというか、プロボーズ紛いな事を言ってることに、綾瀬は気付いているんだろうか。
……いないんだろうな。
こうして、綾瀬との同棲生活が始まった。
☆☆☆☆
「はいっ、これでおしまい」
ダンボールを綺麗に折りたたみ、玄関に置く綾瀬。
衣服や日常品の入ったダンボールは、これで全て出し切った。
まさか一日で終わるとは思ってなかったが。
これが頭の良い女の力か……!
効率が違う。
バカとは違うのだよ、バカとは!
「天川くんも終わった?」
「終わったよ」
元々、荷物の少ない俺に、荷物の整頓なんて造作のないこと。
多分荷物が多かったら、遊び出して綾瀬に泣きついていたと思う。
「必要最低限のものは揃ったな」
「そうだね。あとは食材の買い出しと予備の日常品ってところかな」
部屋から出て呟けば、返事が帰ってくる。
これほど幸せなことはあるだろうか?
いや、ない。
「でも、会社の人もよく有給使わせてくれたね」
「まあ、良くも悪くも変人しかいないしな……」
去年は社長が、クリスマスの日にサンタのコスをしてお菓子を配っていた。
バレンタインになれば、わざわざ女装してチョコを配っていた。
新入社員はかなり困惑していたが、そのうち慣れるだろう。
俺はもう慣れた。
とりあえず二人してソファーに座る。
自然と、手と手が絡み合う。
「私、ずっと夢見てたんだ」
綾瀬がボソリと呟く。
「夢?」
「うん。いつからだったかな? 天川くんと大人になって、こうやって一緒に住もうとしてたの」
「お、おう……」
「夢、叶ったんだね」
こちらにより掛かり、体重を預けてくる。
頭を撫でてると、気持ちよさそうな顔になった。
「えへへ」
「俺も、綾瀬と付き合えたらいいな、とか。一緒に住めたらいいな、とか。色々考えてたよ」
「そうなの?」
「ああ。それが、今こうして現実にある。これ以上の幸せはないよ」
「……んふふー。そっかぁ〜。よしっ」
綾瀬は一気に立ち上がり、こちらを見る。
「ご飯の買い出し行こう? 何が食べたい?」
「んー、じゃあオムライスで」
「うん、分かったっ」
弾んだ声を出しながら、こちらに手を差し出す綾瀬。
その手を取り、俺も立ち上がる。
「行こうか」
「うんっ」
しっかりと指同士を絡めさせ合いながら、俺達は部屋から出た。
☆☆☆☆
それは、四連休最終日の出来事だった。
「え? 授業参観?」
『そう。百合の授業参観が、今週の土曜にあるのよ』
「衝撃の事実。なぜ今頃なのか」
『急な仕事が入ったのよ。休むわけにはいかない。おまけに、本人の口ぶりからすると、クラスメートの子たちはみんなご両親が来るそうよ』
それはまた……。
周りの友達は親が来てるのに、自分のところだけ来ない、と。
すごく心がつらそうだ。
『土曜日だから、アンタも休みだろうし、悪いんだけど行ってあげてくれない?』
「いやそれはいいんだけど、不安しかないんだが」
『心配しなくても、ただ教室にいるだけでいいわよ。一応親族の方と書いてあるし、兄であるアンタが行っても問題ないわ』
そういう問題なんだろうか。
まあいい。
「了解」
『助かるわ。持つべきものは頼りになる息子ね』
「よく言うよ」
電話を切る。
ソファーにもたれ掛かり、天井を見る。
すると、綾瀬がやって来た。
「誰から?」
「母親だよ」
「お母様から? 用件はなんて?」
「なんでも、今週の土曜に百合の授業参観があるらしく、代わりに俺が行くことになった」
「へぇ〜。でも、やっぱり家を出たわけだから、百合ちゃんとの交流も低くなるし、良いと思うよ」
どうしよう。
あの人からの命令だと嫌々感が出るのに、綾瀬から言われるとすごくやる気になる。
これが流行りのデンプシー効果というやつか。
いやデンプシー効果なんて、聞いたことないけど。
「そうだ。どうせなら綾瀬も来るか?」
「え? でも部外者の私じゃ無理だよ」
「従姉妹という設定にすればいいだろう。何とかなるさ」
「んー……、そうかなぁー?」
と、いうわけで。
急きょ、授業参観に行くことになった。
次回、隣の授業参観(晩御飯風)
未だ、幼馴染物も進行しておらず、なかなかに悩みどころです。
少しだけ進行してますが、何分リアルがつらくて
年下お姉さんの子宮から産まれたいだけの人生だった