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妖精が歩を進めるのに従い、僕もおずおずと妖精の後を追う。
この妖精が(今自分が感じている以上に)異質な存在であることは肌で感じとったが、そうかと言って、こんな異世界に放り出されてどこへ行く当てなどあるはずもない。
相変わらず辺りを見渡しても、不気味に黒く生い茂る木々が目に入るだけで、一層気が滅入る。
暫く歩くと、一軒の小さな家が見えてきた。妖精は怪しげに微笑み、
「今日はここに泊まりましょう。」
と誘う。
「ここは、民家じゃないのか?」
僕が疑問を述べると、
「いいじゃない。」
と、はぐらかすでもなく平然と答えた。
妖精の意図が見えず、半ば困惑し半ば憮然としながら、確かに歩き疲れてはいたので、妖精の提案を受け入れることにした。