表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/44

1.プロローグ

本作の前半部は実際の婚活パーティーの流れに沿った構成になっていますが、完全なるフィクションです。主人公の真似して婚活パーティーに参加しても異世界には行けませんのでご了承ください。

 数え切れない程の戦いに身を投じ、幾度となく死線を潜り抜けてきた。

 積み上げた経験は糧となり、自信へと繋がった。

 自らを最強だとのたまうつもりはないが、その辺の有象無象が束になってかかって来た所で、まともな戦いにすらならないだろう事は、間違えようのない事実。

 その程度には強くなったつもりだ。


 だというのに……。


 この緊張感はなんだ。

 肌を刺すようなピリピリとした空気。

 多くの人がいるはずなのに、不気味な程に静まり返った室内。

 それはまるで、初めてドラゴンを前にした時の恐怖によく似ていた。

 一歩間違えれば死に直結する。

 そう感じてしまう程に、その空間は異質だった。

 ごくりと喉が鳴った。

 掌には汗が滲み、気付かぬうちに震えていた。

 出来る事なら、すぐにでも逃げ出したい。


 ――しかし。


 ここまで来て逃げる訳にはいかない。

 もし逃げれば、きっともう二度と戻ってこれないだろう。

 そしてこれまで築き上げて来た全てが泡となって消え、惨めな敗北者として生きる事になる。

 それだけはダメだ。


 目を瞑り、大きく息を吐き出す。

 瞼を上げ、再び周りを見渡した。


 大丈夫だ。


 自分に言い聞かせ、滲んだ汗をズボンで強引に拭った手を、懐へと向ける。

 取り出したのは一枚のカード。

 それは彼が参加資格を有している証。


 これから始まる、戦いへの参加チケットだ。


 受付を済ませた彼はゆっくりと歩き出した。

 それは何の変哲もない小さな一歩。

 されど彼にとっては意味のある、大きな一歩。 


 彼はついに婚活パーティーへとその身を投じたのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ