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BRAVE HEART  作者: Hinako
9/11

第8話 –決意–

オリジナル小説です!


かつて最強と呼ばれた少年ユマが、ひょんなことから出会った少年アキと共にかつての仲間を探し求める。運命に導かれるままにそれぞれの過去と想いが交差する王道ファンタジーです‼︎


下手ですが見ていただけたら嬉しいです(*^^*)

「–––––まさかリュウとユズキが同じ村出身だとは思わなかったよ。」


 騎士や山賊達が森の方へ消えていくのを見届けてからカイの家までの帰り道、前を歩いているユマが何時もの笑みを浮かべながら何事も無かったかのように口を開く。


「…その手と腕は大丈夫なのか?」

「平気だって、このくらいの怪我慣れてるよ。」


 すっと視線を下に向けると、片手と両腕は既に赤黒い血に塗れてグチャグチャだ。それなのに俺の問いかけにユマは慣れた様子で表情を崩さずにそう答える。

 確かに言葉の通り、昔から怪我には慣れているのだろう。…だけど、俺には余りにも自分のことに関して無頓着すぎるように思えた。

 他人の為になら、自分が傷付くことは厭わない。ユマはそういう男で、それは昔から変わらない。でも、あの頃よりもそれは強く鮮明に表れ、自分を蔑ろにしている気がした。

 それはあの日の影響か、それとも7年の間に起こった“何か”のせいか…。


「ユズキ、リュウ。」


 ボーッと考えていると、前を向いたままユマが声をかけてきた。


「俺、夜が明けたら村を発つよ。」


 ユマははっきりとそう言った。


「そうか…。」

「もう行くのか。」

「何、俺が居なくなったら寂しいの、ユズキくん?」

「あー寂しい寂しい。」

「真顔で棒読みと来たか。」


 リュウは一言そう口にし、俺が言うとユマがこっちを振り向いていつものように茶化してきて、それを適当に遇らうと、ユマがそう言って軽く笑う。


「お前も一緒に来るか?」


 俺を真っ直ぐに見てさらっと放たれたその言葉に、俺は返答することができなかった。


「…なんてな。」


 答えられずにいる俺を見てか、ユマはそう言ってどこか寂しげな笑みを見せると、再び背を向けた。

 いつでも強く逞しかったその背中は、服の下の傷を知ってしまったせいか、何だか脆く見えた。このまま別れてしまったらもう二度と、会えない気がした。









***



「ユマ…!」


 家の近くまで来ると、カイとアキが家の前に立っていて、俺達の姿を見つけるとカイが駆け寄って来た。


「カイ…アキも、待っててくれたのか。」


 カイとアキを見てユマはそう言うが、カイはそれどころではない様子だった。


「ユマ、その腕…」

「あぁ、これくらい何ともねーよ。」

「俺、救急箱持って来る。」


 カイが血塗れの腕や手を心配そうに見て、アキはそう言ってカイの家に入って行く。


「こうして無事帰って来れたわけだし、俺は怪我には慣れてるし、大丈夫だから気にするなよ。」

「でも、俺のせいで…」

「いや、カイのせいじゃない。…むしろ巻き込んで悪かったな。」


 暗い表情のままのカイを見て、ユマはカイの頭をグシャグシャと撫ぜながらそう声を掛ける。


「それ、アキにやって貰ったのか?」


 首元の手当されてある箇所を見てユマがそう言った。


「うん、そうだよ。……って、あれ…?リュウ⁉︎」

「おう、やっと気付いてくれたか。久し振りだなカイ。」

「えー!何で居るの?」


 カイは答えると、漸くユマの背後に居るリュウに気付いたようで、驚いてその名を呼ぶ。そんなカイにリュウは笑って応える。


「救急箱持って来たぞー。」

「おー、ありがとな。」

「ユマって結構無茶苦茶やるよな。強引というか何と言うか…」

「そうか?」


 戻って来たアキは呆れた様子でそう言うが、ユマの自覚の無さそうな返答に肩を落とす。

 そんな光景を見ながら俺は、未だ定まらない心に悶々とするばかりで1人その場を離れた。









***



 –––––お前、何も知らないんだな。


 ユマの言動が気に掛かり山賊と話していたあの時、息絶え絶えに山賊はそう言った。

 確かに山賊の言う通り、俺は何も知らない。どうしてあんなに怒りと憎しみの篭った言動と行動で、哀しげで切なげな瞳を向けるのか。その瞳に映るものは何なのか。

 ユマが必死に隠そうとしているそのことを俺は知らなくてはいけない。…例えどれだけ残酷な現実が待ち受けていようとも。

 もう二度と、大事な仲間を失わないように。


 –––––でも、俺はこの村が好きだ。仲間と同じようにカイ達村の人も大事だ。比べることは出来ないから、どちらか選べと言われても無理な話だ。



「やっぱりここか。」


 ぼんやりと高台から村を眺めていると、背後からそんな声が響く。


「…リュウ。」


 振り向くとリュウが立っていて、昔よりも少し老けた顔で、だけど変わることのない表情でニカッと歯を見せて笑う。


「何かに悩んだ時此処に来るのは変わらないな。」


 そう言いながら隣に胡座をかいて座る。

 リュウと別れたのは8年前、俺が王都の騎士団に入る為村を出た時だ。村に戻って来た時はリュウは徴兵で王都に向かったから入れ替わりで、会うことは無かった。


「…俺変わったか?」

「そうだな。…最後に会ったあの時は何事にも無関心で、危なっかしいくらい無気力で…それこそ誰かに斬りかかられても、獣に飛び掛かられても抗わないんじゃないかってくらい自暴自棄になってるように見えたな。」

「……そうしたらユマにぶん殴られた。」


 そう言うと、リュウは少し驚いた様子だったがやがて納得したように口角を上げる。


「…そうか…ユマか、お前を変えたのは…。」


 楽しげにそう言ったリュウだが、何を思ってかその瞳は悲しげに見えた。


「悩み事はユマのことか?」


 どうやら俺の悩みは悩みの種であるユマにも再会したばかりのリュウにもバレバレらしい。


「……あいつ、何も言わないんだよ。」


 少し躊躇って、口を開く。


「何の為にユマがこの村まで来たのかは何となく…察してる。でも、ああいうやつだからこの村の現状を見て俺が即決出来ないのをわかっているから何も言わない。」


 黙って聞いているリュウに向かって俺は続ける。


「だけど、そうやって人のことを慮るユマが、大抵のことは1人で何とかしてしまうやつが、余程のこともなくこんな所まで来るわけがない…。」


 俺の力が必要な程のこととは何なのか。気にはなるが今はそんなことどうでも良かった。


「…俺の今があるのはユマのおかげだ。だから俺はあいつの力になれるのならなってやりたい。でも…」

「そこまで腹決めてるなら迷う必要は無いだろ。」


 俺の話を黙って聞いていたリュウが口を開いてはっきりとそう言った。


「村のことは心配するな。俺はその為に帰って来たんだからな。」


 いつもの調子で明るくそう言ったリュウだが、その表情は少し悲しげな笑みに変わった。


「…ユマにはお前が必要だ。たとえそれを口にすることが無かったとしても。…あいつは強いけど、唯の1人の人間だ。そして今の状況はあまりにもユマに無理を強いる。」


 何も知らないとは思っていなかったが、何かを知っているような口振りのリュウの話を黙って聞く。


「誰かが側に居て支えてやらなきゃきっと潰れちまう。…それくらいあいつの背負っているものは、重い。」


 リュウのその言葉は俺の心にもズシリとした重みを残して行く。


「共にそれを背負う覚悟があるのなら、あいつの助けになってやってくれ。…俺には無理だ。その役目はお前じゃなきゃ駄目なんだよ、ユズキ。」

「……俺じゃなきゃ、か……リュウはユマのことに関して一体どこまで知ってるんだ…?」


 リュウは眉尻を下げた状態で口角を上げ、そう話した。笑いきれていない、どこか悲しげなその表情の根源は何なのか。ユマが話さなかった核心についての話を俺はリュウに振った。


「…まぁ、おおよそ、な。現状は把握してるつもりだ。」


 そう言うリュウに知っていることを全て問い詰めたい気持ちはあったが、話してくれる気は無いのだと直感した。

 そんな俺の心中はお見通しなのであろうリュウは困ったように笑みを見せる。


「お前には話しておかないといけないことなんだろうけど、ユマが話すのを待ってやってくれ。気持ちの整理がついたらきっと話すだろ。…それに、ユマについて行くならその内嫌でも知ることになる。」


 そう話したリュウの表情は笑みが消え、やはりどこか悲しげだった。



 リュウがここを護るのならもう心残りはないはずだった。それなのに今ひとつ決断しきれないのは何故なのか。恐らくその理由は罪悪感だ。

 村を出て騎士団に入ったことを後悔はしていない。だけど、後悔していないからといってそれが本当に正しかったのかはわからない。

 唯、強くなりたかった。強くならなければ誰も守れないし、何も守れない。大事な人を喪った哀しみや後悔を繰り返し続けるだけだ。

 そんな思いだった。でも、結局俺は滅茶苦茶になった村を放って1人、勝手に村を出た。そして、今また俺はあの時と同じことをしようとしている。それで本当に良いのだろうか。


「行ってよ、ユズキ!」


 迷いを払えずにいると、背後からそんな声が聞こえた。


「カイ…。」


 振り向くとそこにはカイが立っていた。


「おれ達のことは心配しなくていいよ!リュウも帰って来てくれたし、それに俺、頑張るから…!ユズキやユマみたいに村の皆を守れるように強くなるから!…だからユズキはユズキのやりたいことをやってよ!……俺もう、別れてそのまま二度と会えない…そんなことはもう嫌だよ…。」


 必死な様子で俺に言うカイだったが、次第に悲しげな色を帯びていく。

 別れて二度と会えなくなった。それはおそらく父のことだろう。カイの父は俺の父やユマの父と同じように徴兵されて家族と別れ、村を出て、そして二度と戻って来ることは無かった。

 きっとカイもユマの危うさを感じ取っている。だからこそ必死で悲しげなのだろう。

 迷っていた。決め切れなかった。だけど、カイにここまで言われてしまえば俺は決断せざるを得なかった。


「……わかった、俺行くよ。この村の為にも騎士団をどうにかして来る。そして…」


 この先の言葉を言わなくてもカイは察したようで笑って頷いた。リュウもニカッと歯を見せて笑う。


「俺ここで待ってるから、だから全部終わったら皆で会いに来てよ!その時はきっとまた、森の木の実や海の魚をふんだんに使った母さんの手料理を食べたり、温かい温泉に入ったりしようよ。」

「…あぁ、きっと。」


 希望に満ちた口約束に思わず口元が緩んだ。


 –––––進む先に暗くて深い絶望が待ち受けていることも知らずに。




感想ありましたらコメお願いしますm(_ _)m


閲覧ありがとうございました!

次回も見て頂けたら幸せです(*^^*)

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