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BRAVE HEART  作者: Hinako
6/11

第5話 –変調–

オリジナル小説です!


かつて最強と呼ばれた少年ユマが、ひょんなことから出会った少年アキと共にかつての仲間を探し求める。運命に導かれるままにそれぞれの過去と想いが交差する王道ファンタジーです‼︎


下手ですが見ていただけたら嬉しいです(*^^*)

「ユマ。」

「ったく!いきなり人を巻き込むなよな‼︎」


 ユマが相手をしていたリーダー格のやつが何処かへ逃げ去ると、俺達が相手をしていた2人の山賊も一緒に逃げて行った。ユマとリーダー格は何か話していたように見えたが、遠すぎて何を話していたのかはわからなかった。


「悪い悪い。……まぁとりあえず、久しぶりだなユズキ。」

「あぁ。で、何でこんな所にお前がいるんだ?それにそいつ誰だ?」


 俺の隣にいる赤髪の男に謝罪し、俺の方へ向き直ってそう言ったユマに対して俺は問い掛けた。

 俺の問いに対し、ユマは口角を上げて笑う。何度も見てきた、これは茶化す時のユマの笑い方だ。


「そいつはアキ、ここに来る途中で会って今一緒に旅してる。俺が遥々こんな所まで来たのは…久しぶりにお前の顔が見たかったからかな。」

「よろしくな!ユズキ。」

「はぁ…まぁ、よろしく。」


 7年経っても相変わらず、ユマが何を考えているのかはよくわからない。むしろ昔よりも思考が読めなくなっている気がした。


「それで…さっきの奴ら、何度も来てるのか?」

「…まぁ何度か、な。何が目的なのかは知らねーけど。」

「…そっか。」


 笑みを消し、そう聞くユマの問い掛けに答えるとユマは何とも言えない顔で一言そう言った。

「は…腹減った…」

 俺とユマが話していると、側でアキが腹を鳴らしてそう言った。


「さっき食べたばっかじゃなかったっけ?」

「う、動いたら消化したんだよ!」


 ユマは呆れた様子でアキを見てそう言うと、アキが答える。必死な様子のアキが面白かったのか、ユマは軽く笑った。

「…付いて来い、村まで歩くぞ。」

 山賊が現れたため、少し村の方が気になるのもあり、そう言うとユマ達2人を先導する。









***



「村は変わりないのか?」

 森を抜けて村付近まで来た時、ユマがそう聞いてきた。


「あぁ、村の皆は元気だ。……ただ…」

「ただ…?」



「–––––出て行け!」



 俺の言葉にユマが首を傾げたその時、村から大声が聞こえた。


「何だ?」

「また来やがったか…」


 アキがそう言って声が聞こえた村の方を見る。俺はいつまでも懲りない奴らに舌打ちし、そう言うと走って村に向かう。


「もう金なんてねーよ!早くここから出て行け‼︎」

「国の為に税金を払うことは国民の義務だ!払わないなんてことは許されない。」

「だから金がないって言ってんだろ!これ以上払っちまったら俺達が生きていけなくなるんだよ!」

「義務は義務だ。払えないって言うなら…お前が奴隷にでもなるか?…おっと…騎士様を蹴るなんて躾のなってないガキだな…!少々お仕置きが必要だな…」


 年12歳くらいの赤茶色の髪に白と黒を基調とした服装の村の男の子と3人の内の1番偉そうな騎士との言い争いが続く。最初のうちは冷静に話していた騎士だったが、だんだん嫌な笑みを浮かべ始め、男の子の胸倉を掴む。男の子は自身の胸倉を掴んだ騎士を蹴り飛ばすと、騎士は男の子の胸倉を掴んでいた手を離し少し態勢を崩した。騎士は怒りを露わにし自身の剣に手をかける。

 ヤバい。そう思い腰の剣に手をかけたが、それよりも一歩早く俺の横を誰かが通り過ぎた。



ガキイィン



「な…!」

 騎士が自身の剣を抜き、そのまま男の子に向かって振り抜いたが、その剣は騎士と男の子の間に割り込んだユマの剣が受け止めた。驚いた騎士がユマの剣を弾き飛ばそうとギリギリと剣を軋ませるが、ユマの剣を簡単に弾き飛ばせるやつなど俺の知る限りはいない。

「…ふざけんなよ。騎士は国民を守るのが仕事だろーが…そんな騎士が丸腰の子供相手に剣振り上げてるんじゃねーよ。」

 俯いていた顔を上げたユマは明らかに怒っていた。


「躾がなってねーのはどっちだよ。国民の為に国があるのに、その国が国民の生活を脅かしてどうするんだよ。そんなに戦争がやりたいか?」

 そう言うユマの瞳は怒りと哀しみで染まっているような気がした。


「早く出て行け。そして二度とこの村に近付くな。」

「ユズキ…!」


 騎士に向かって俺はそう言った。俺を見つけた男の子は安堵を含んだ様子で名を呼んだ。


「ユズキ……ということはまさか…ユマか…?なんで流星がここに…いや、そんな訳がない…だって今は…!」

「出て行け。この剣で切られたいか?」


 騎士は気になることを口走るが、ユマが途中で遮ると、騎士3人は怯えた様子でそのまま村から出て行った。

 そんな騎士達を見ながら黙って佇むユマが今この時、どれだけのものを背負っていたのか俺はまだ知らなかった。


「…大丈夫か?」

「……何が?」


 ユマの背中を見ていると自然と口からそんな言葉が零れた。振り向いたユマは全てを悟っているかのようにそう言って笑う。その笑みは何だか酷く、危うく見えた。


「はぁ〜〜〜…」

「大丈夫かー?」


 気が抜けたのか、男の子はドスッと地面に尻餅をついた。そんな男の子にアキが声をかける。


「平気か?カイ。」

「怪我ないか?」


 男の子こと、カイに向かって俺とユマが問う。

「大丈夫!それより兄ちゃんスゲーな…!ユズキも強いけど、あの馬鹿騎士達をあんな簡単に追っ払っちまうなんて!」

 カイはキラキラした尊敬の眼差しでユマを見て言う。

「はは、凄いだろ?…ところで彼奴らここに何度も来てるのか?」

 ユマがカイに向かってそう聞いた直後、誰かの腹の音が鳴った。

「ははは…」

 腹を鳴らした張本人であろうアキが呑気に笑う。

「お腹空いてんの?なら、家においでよ!」

 ユマは肩を竦め、俺は呆れた思いでアキを見ていると、カイがそう申し出た。









***



「–––––ところで兄ちゃんたち誰なんだ?ユズキの知り合い?」

 カイの家で皆揃って飯を食べている時、カイがそう聞いてきた。


「昔の仲間。」

「騎士団にいた頃の?」

「…あぁ。」

「この兄ちゃんも…?」

「いや、こいつはただのうるさい食いしん坊だ。」

「俺の扱い…!」


 ユマについて答えると、今度はアキを指して聞くカイに俺はそう答えた。アキは俺の紹介が気に食わなかったのか、ブーブー文句を言っていた。…もちろん冗談であって、それだけの男だとは思っていない。ユマがどこから連れてきたのかはわからないが、剣の腕と身のこなしはかなりのものだ。

「…で、大方事情は察してるけど彼奴らいつもあんな感じなのか?」

 俺たちの会話を聞きながら笑っていたユマが笑みを消し、問う。ユマの問いにカイは表情を固くすると、口を開く。

「…最近、やたら税金が馬鹿高くなって…とても払えない金を徴収しに彼奴らが来るんだ。何度も何度もしつこくてその度にユズキが追い払ってくれてた…」

 カイは悔しそうな表情を浮かべながら続ける。

「…義務だ義務だってあの馬鹿騎士たちは俺たちのことなんてちっとも考えてくれない…!ホント彼奴ら最低だ!…俺たちがこんな思いしてるのに王様は何してるんだよ…!」

 あの日、俺たちはそれぞれ騎士団を離れた。それからの騎士団のことは知らず、この7年間で騎士団は変わってしまった。乱暴で勝手で国民の声は届かない。カイがそう言うのも無理はない。だけど、俺の知っている王は決して民の声が届かないような王ではなかった。…それに、ユマのこの表情は何だ?怒りの中に深い哀しみが入り混じったような…ユマはもしかしたら何か知っているのだろうか…?

「…あ、最低なのはあの馬鹿騎士たちであってユマやユズキのことじゃないから!彼奴ら追っ払ってくれて本当感謝してるんだ。…俺じゃ彼奴らを追っ払うことは出来なかった…ユズキがいなかったら今頃どうなってたか…」

 カイは子供ながら本当にしっかりしてるいいやつだ。ユマもそう思ったのかカイの頭にポンと手を置いた。


「えらいな、お前。…ユズキがいなくても村の皆を守ろうとしたんだろ?」

「……でも、俺は何も出来なかった…」


 ユマの言葉を聞いて、泣きそうな表情でそう言うカイを見てユマの表情も曇る。


「…ゴメンな。」

「ユ、ユマが謝ることなんてないよ…!」

「…俺は、自分のことで手一杯だったから…」


 何を考えているのか、ユマは悲しげにそう言った。

「–––––なぁ!皆で温泉行こうぜ‼︎」

 話を聞いていたのかいないのか、カイの母と話していたアキが突然空気を読むことなくそう言った。

「温泉?」

 アキの言葉にコロっといつもの様子に戻ったユマが言った。


「ここにあるんだろ?」

「温泉なら向こうにあるよ!案内してあげるよ‼︎」

「お、サンキュー!ユマ達も行くだろ?」

「あー…俺はちょっと用があるから先行って来いよ。」

 アキとカイが温泉の話で盛り上がっている中、ユマはそう言った。


「そっか!ユズキは?」

「…行く。」


 ユマの用とは何なのだろうか…?考えつつ、見送るユマに背を向けて、アキとカイと共にカイの家を出る。


(ユマ…?一体何処に…)


 アキとカイが楽しそうに喋っている後ろを歩いていた俺はふとカイの家の方を振り返ると、俺たちが離れたのを見計らったかのようにユマが家から出てきたのが見えた。

「悪い、用ができた。」

 そのまま人の居ない家の裏の方に歩いて行くユマが気になった俺はアキ達にそう言うと返事も待たずに来た道を戻る。



 カイの家の方まで戻って来た俺はそのまま裏の方へ向かった。角の辺りからこっそり覗き見て、思わず絶句した。

 嫌でもわかってしまった。

 俺たちが散り散りになったあの日から数年の間、確実に“何か”が起こっていたのだと、その証がユマの身体に刻まれていた。




閲覧ありがとうございました!

次回も見ていただけたら幸せです(*^^*)

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