第3話 –ユズキ–
かつて最強と呼ばれた少年ユマが、ひょんなことから出会った少年アキと共にかつての仲間を探し求める。運命に導かれるままにそれぞれの過去と想いが交差する王道ファンタジーです‼︎
下手ですが見ていただけたら嬉しいです(*^^*)
「–––––もう3日くらい歩いてるけどフロール村ってのはまだつかねーの?」
一体どのくらいの距離を想像していたのか。アキは1時間に1回ぐらいそう口にする。
「さっき休憩したばかりだろ?もう少し頑張れよ……ほら、この森を抜けたらすぐだ。」
前方に広がる森を見てそう言うと、アキは明らかに嬉しげな声を上げた。
「本当?あーやっとだー!」
「多分な。」
「…え?」
「俺も初めてなんだよ。」
「……え…えー…?行ったことあるんじゃねーの?」
「ねーよ。」
どうして行ったことあると思ったのか…半ば呆れながらそう考えていると、それに答えるかのようにアキが言った。
「えー…だって行ったことあるような口ぶりだったじゃん!」
「そうか?…俺は行ったことねーよ。フロール村はユズキの故郷だから聞いたんだよ…7年前にな。」
微かな胸の痛みに気付かないふりをして、俺はアキにそう語った。
「え!!7年前⁉︎小さな村なんだろ?フロール村がまだあるのかなんてわかんねーじゃん!大体そこにユズキって奴ちゃんといるんだよな…?」
「まぁ、大丈夫だろ。それにユズキはあいつと違ってあんまり移動するタイプじゃないしな。いるだろ…多分。」
また多分って言った!と騒ぐアキを放って森へ足を踏み入れた。
***
キィン…カァン
「なんか…剣を交えてるような音が…って、ユマ⁉︎」
耳を澄まし、昔と変わらず森林の緑を閉じ込めたような深い翡翠色の頭に瞳、整った顔立ち、金色に光る装飾のついた耳飾り、そして短剣を持つその姿を見つけると一目散にその場へ向かった。どうやら山賊らしき男3人を相手にしているらしかった。
剣を持った山賊の2人を持ち前の短剣と黒光る短剣の二刀で受けていたが、ふいに木の上にいたもう1人の山賊が飛び降りてきてその勢いのまま剣を振り上げる。気付いて後ろを振り向くが両手も塞がっていて間に合わない。俺は咄嗟に山賊と翠頭の男の間に滑り込むと、山賊の剣を自らの剣で受け止めた。
ガキィィィン
そんな剣と剣がぶつかり合う衝撃音が森に響き渡った。
「……ユマ…?」
心底驚いた顔で名を呼ぶ男に思わず口許が緩んだ。
「暫く見ない間に腕鈍ったんじゃねーの?ユーズキくん!」
ニッと笑ってそう応えた俺にユズキは尚もポカンとしたまま口を開く。
「何でここに?」
「んー、まぁそれはともかく置いといて、こいつら片付けちまおうぜ。」
「はー…やっと追いついたー!ユマー何がどうなってんのー?」
「おー丁度いい所に。アキ、1人相手よろしく!」
「はぁ?」
敵は3人、こっちもアキが来たことで3人。丁度よくなったところで俺は目の前の敵に向き直る。
「おーおー兄ちゃんよう、よくも邪魔してくれたなー?」
「邪魔?何の邪魔だよ?」
相対している目の前の山賊はジトリとした嫌な笑みを浮かべてそう言った。笑みを浮かべて問い返してみたが、俺はこいつらが何故ユズキを襲ったのか、ほぼ見当がついている。だからこそ、俺はこの目の前の男に聞かなくてはいけない。
だけど、こいつらの前で“それ”を聞くことはできない。
俺は相対しながらユズキやアキから遠ざかるように誘導する。
ある程度遠ざかると、同じく黙り込んでいた男が、口を開く。
「わざわざ遠ざかるなんてお仲間には聞かせたくない話なのかな?」
「…さっきの俺の質問に答えろよ。」
「俺の質問には答えてくれないくせに自分の質問には答えろってか?酷い奴だね、ユマくんは。」
どうやら意図的に遠ざかっていたことに気付かれていたようで、山賊はまた嫌な笑みを浮かべながら自身の唇をチロリと舐めると、舐め回すように俺の顔を見ていた。
「ちょっと痛めつけてある奴のところに連れて行くつもりだった。」
「カナメか?その命令をしたお前らの雇い主は。」
山賊のその答えに俺は推測が見当外れでないことを確信すると同時に、腹の底に燻っていつまでも消えない怒りが湧き出してきて、それをぶつけるように一気に詰め寄った。そんな俺の言葉を聞いた山賊は面白そうに俺を見てヒューっと口笛を鳴らした。
「ご名答ー!なんだ、聞かなくてもわかってんじゃねーか。」
「…俺のことも知ってたのか…?」
「さぁ、どーだろな?“流星くん”」
答えは言っているようなもので、俺は思わず息を呑んだ。“流星”とはそう遠くない記憶、俺が騎士団にいた頃周りがそう呼んでいた呼び名だ。カナメが関わっていないのなら山賊がその名を知っているはずがなかった。
「……もういい、そろそろ決着つけようぜ。ユズキとアキが待ってる。…その名を知ってるなら俺が決して弱っちくはないことはしってんだろ。」
そう言っている自分の山賊へ向ける眼光が鋭くなってきているのを感じた。
「…その通り、だからここは退いてやるから逃がしてくれよ。」
そんな俺の様子を見てか、山賊は額に汗を滲ませて去って行った。俺はその後ろ姿を見ながら立ちつくす。
…こんなところで遊んでいるわけにはいかない。俺は一刻も早く目的を果たして、そして……
(リリ……)
–––––あいつを必ずあの鋼鉄の檻から救い出す。
閲覧ありがとうございました!
次回も見ていただけたら幸せです(*^^*)