第2話 –ユマとアキ–
オリジナルの王道ファンタジー小説です!
かつて最強と呼ばれた少年ユマが、ひょんなことから出会った少年アキと共にかつての仲間を探し求める。運命に導かれるままにそれぞれの過去と想いが交差する物語です‼︎
下手ですが見ていただけたら嬉しいです(*^^*)
「–––––お前、本当について来る気なのか?」
俺は先ほどついて行くと宣言して、現在俺の後ろを歩くアキの方を振り返ると呆れの混じった気持ちでそう言った。
「おうよ!」
そう言い放つアキにため息を吐くと、立ち止って後ろを振り返り、アキと真正面に向かい合う。
「…俺についてこない方が良い。」
俺はアキをじっと見てそう言った。これは忠告だ。きっと俺のこれから行く先々は決して安全安心なんかではない。この先アキを俺1人で守りきれる保証などどこにもないのだ。
「なんで?」
「……俺はこれから悪の魔王を倒しに行くんだよ。」
「じゃあ俺も手伝うよ!」
理由を聞いてきたアキに俺は適当な理由を言った。しかし間髪入れずにアキから返ってきた言葉に俺はガクッとうな垂れると再度ため息を吐き口を開く。
「俺はいざという時お前を守りきれる自信はない。だから…」
「あぁ、そういうこと。」
アキは即座にそう言ったかと思うと背に吊ってある鞘から剣を抜いた。そして俺から少し距離をとると、剣は鋭く空を切ったかと思うとまた更に斬りはらい、空を突き、また斬り払う。その姿はとても様になっていた。
「どう?俺戦力になると思うけど?」
剣を鞘に納めるとアキはニッと笑ってそう言った。
確かに今の剣技を見る限り十分な戦力にはなるだろう。
自分の身は自分で守れる力もある。何より、アキの一切引く気がない様子に俺は観念するしかなかった。
「…わかったよ!」
「そういうと思った!よろしく、ユマ!……ところで、今どこに向かってんの?」
得意げな顔で笑ってそう言うアキはどうやら目的も知らずに俺について来ていたようだ。呆れて息を1つ吐いた。
「北方にあるフロール村。」
「フロール村?聞いたことないけどそこに魔王がいるのか?」
「…小さな村だからな。そこに俺の昔の仲間がいる。」
どうやらアキはさっきの俺の適当な誤魔化しをまだ信じているらしい。…まぁ魔王退治、は根本は違うけれどあながち間違ってもいないのかもしれない。
「まずは仲間集めってこと?仲間かー…その仲間ってどんなやつ?」
「…優しいやつだよ。でもちょっと不器用なんだよなー…」
ふと頭にあいつの顔が浮かび、口元が緩んだ。
「とにかくすげー頼りになるやつだよ!あいつら以上に頼れるやつを俺は知らない。」
「へー…信頼してるんだな、仲間のこと…いいな、そういうの。」
アキは笑っていたけれど、俺にはどこか悲しげに聞こえた。
「バーカ。一緒に旅する以上、お前も仲間だ。仲間の背中は俺がきっちり守ってやるよ!」
そう言うと、アキは一瞬驚いたような顔をするとすぐに口角を上げて笑った。
「んじゃ、俺はユマの背中を守るよ!」
「あぁ、任せたぜ!」
アキの言葉に笑ってそう言うと、俺は前を向いた。
後ろを歩いているアキがどんな思いで俺の背を見て、自らの背に吊ってある剣の柄を握りしめていたのかも知らずに。
***
ある部屋の堅く閉ざされた鋼鉄の扉の前で男は立ち止った。
「–––––姫さん、すまねぇ…」
男は悲壮な顔で扉に向かってそう言った。扉の先にいる着物のような服に桃色の打ち掛けを羽織り、髪を横に束ねている女は扉の前まで来ると片方の手のひらでその扉に触れ、ゆっくりと、しかしはっきりと首を振った。
「あなたには守るべき人達がいるのでしょう?ならあなたはここにいてはいけない。…私は大丈夫。だから、どうかあなたはあなたの道を進んで。……今までありがとう。」
女は哀しげに微笑んでそう言うと、それから、と続ける。
–––––もしもユマに逢ったら…伝えて。
そう言って女は何かを口走ると、男は深く頷き去って行った。
人の気配が無くなると女は膝から崩れ落ち、その場に座り込んだ。
「…ユマ……誰か…助けて…」
女は扉に縋り付き、震えと掠れが混じった小さな声でそう言った。女の頬を何かが伝い、そして落ちた。
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