気に食わない
掲載日:2017/03/31
「……気に食わんな」
社長はそれだけボソッと呟くだけだった。
それは、四半期事業報告会のこと。
成績が少し悪くなっているところを、社長は指摘したのだと思って、発表者はそこを重点的に話す。
「ですので、ここはテコ入れという形で……」
「いや、そこではない。むしろ下がったということは改善するべきところということだ。それよりも気に食わんのは、その予想だ」
「予想ですか」
思わずオウム返しをしてしまう。
「現状、改善されていない時点だろ。そうなれば予想も当然下がるはずだ。それなのに、そこの次々期四半期予想は右肩上がりになっているではないか。現状通りの予想ではないのではないか?」
社長の言葉通りのようで、発表者は少なくとも報告会をやり過ごそうとして甘めの報告をしたようだ。
「おっしゃる通りです、かなり甘めに設定しています」
「楽天的であることは生きるために必要ではあるが、ここは少しばかり悲観的な要素も入れなければならない。それを忘れてはいかんな、何が起こるか分からんのだから」
「おっしゃる通りです」
報告会は、これで幕切れとなった。
ちなみに1週間後、社長が指摘したところをしっかりと修正したうえで発表されたことは、言うまでもない。




