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終わりの始まり

 立って乗るタイプのフォークリフト、リーチフォークというのだが、小回りがとても聞く上に、丸っこい車体から、まるでテントウムシのようだ。

 そのリーチフォークを操る女性、車と同様に少し丸っこい。

 未佳である。

 ここはとある運送会社の持つ資材倉庫である。

 未佳は警備会社から、運送会社へと転職していた。

 少しだけあこがれていた女性ドライバー、実際には車の免許がない為に無理である。

 そこで講習で乗れるフォークリフトを選択した。

 フォークリフトと乗用車では、運転感覚が異なるのだが、そもそも運転できない未佳には、何の違和感もなく受け入れていた。才能の開花である。

 未佳が運送会社へと転職したのは、合同説明会がきっかけだった。

 変なTシャツ社長と英治が言い争いになったものの、言いたいことを言い合える仲になったそうだ。

 あくまでTシャツ社長の言い分であって、英治の考えは違うかもしれない。

「打算だよ。こっちの方が待遇がいいから。」

 そう言う英治は配車係として運送会社に転職していた。

 配車係とは、簡単に言えば仕事に応じてトラックを手配する係である。

 警備会社のときと大差ないくらいに考えていた英治だが、トラックと一口で言っても多種多様あり、そもそもトラックとトレーラーの認識も薄かったから、思ったほど楽ではなかった。

 セミトレーラー、フルトレーラー、ポールトレーラー、それぞれ運転するのに要する技能が異なる。

 物をただ運ぶだけではない。帰りにも荷物を運ぶことが出来れば、その分利益を上げることが出来る。

 自社だけでなく他の運送会社から庸車することで、仕事量の調節も出来る。

 もっとも今はどこの会社もドライバー不足である。

 仕事量は溢れているのに、ドライバーが追いつかない。そんな現状となっている。

 Tシャツ社長は免許を持たない若者や女性を次々と受入れ、会社の経費で免許を取らせている。

 せっかく免許を取らせても、辞めてしまっては大損だ。

 それでも積極的に免許を取らせている。

 一人でも二人でも残ってくれれば良い。そんな考えだ。

 だから会社はそれほど儲かってはいない。

 だから社長と言えど高級スーツに身を包むなんてことはできない。

 だから英治は入社した。この社長にいつかスーツを着せてやろう。もっとも似合わないだろうが。

 英治はずっとこの運送会社に腰を据えるつもりはない。

 Tシャツ社長も、いつでも飛び出していいと言っている。

 むしろ飛び出せるくらいに大きな男になってみろとまで言っている。

 未佳は二人のことを子供っぽいと思うし、違ったタイプで根っこは同じなんだと思う。

 英治は警備会社で強メンタルを手に入れた。

 将来性を考えると、転職は正解だと思えた。

 新しいことを吸収したい。

 もっともっと成長したい。

 未佳も同じだった。

 同じことの繰り返しでも構わないと思っていたが、仕事上で成長できるという喜びを味わえるようになっていた。

 今はまだフォークリフトで倉庫をチョロチョロする程度だが、やがては色々な車に乗りたいと思っている。

 そしていつか英治にこう言うのだ。


「明日の配置はどこですか。」


これでこのお話は終わりです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。


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