就職説明会ですか。(その1)
市内でも最大の駅の前にあるコンベンションセンターで合同企業就職説明会は開催される。
コンベンションセンターとは、展示場や大型会議場などの大型複合施設である。
ここは多額の税金を投入して作られた為に、建設当時は街頭デモまであったそうだが、様々な企業や官公庁の催し物が開催され、すっかり市の顔ともいえる施設になっていた。
そんな施設で行われる説明会だ。市の本気度も推し量れる。
それもそのはず、古くから工業で栄えただけに、衰退も早かった。
全国でも少子高齢化の影響が大きく、労働人口の確保に躍起となっているのだ。
英治と未佳は駅前で待ち合わせをすることにした。
当初は車で行く予定だったが、未佳のたっての希望で公共交通機関を利用することとなったのだ。
英治は少し面倒だとは思ったが、駅前の駐車場は代金が高いということもあり、まあいいかという感じだった。
しかしいざ駅前に立っていると、妙な緊張感がある。
なぜなら未佳が見当たらない。この駅には北口と南口がある。今北口で待っているのだが、約束は南口だっただろうか。
南口に様子を見にいこうと思うが、その間に行き違いになるかもしれない。
電話をすればいいだけなのだが、なぜか未佳に止められている。
まだ時間前だから焦る必要はないのだけれど、結構な人ごみの中、一人で立っているのが苦痛に感じてきた。
あまりキョロキョロしていると、挙動不審に見られてしまう。
ましてや今日は久しぶりのスーツ姿だ。
内心穏やかではないが、とにかく平然を装っている。
そんな時、誰かがポンと背中に触れてきた。
「お待たせ。」
未佳である。やはりスーツ姿だった。
「ああ良かった。待ち合わせ場所を間違えたかとドキドキしてたよ。」
英治は安堵の笑みを浮かべた。
未佳もそれに応えるように笑った。
いや、未佳はむしろ笑いを堪えていた。
実は英治より先に待合せ場所に着くと、少し離れた場所から英治の様子をうかがっていたのだ。
してやったりではあるものの、予想以上に英治が挙動不審すぎて、これは言える状況ではないと思う未佳であった。
開場であるコンベンションセンターまでは、駅前からペデストリアンデッキで繋がっている。
大きな建物の割に入口がやけに小さい。そんな自動ドアを抜けると、3フロアぶち抜きの吹き抜けになっていた。
未佳は見上げて興奮気味だ。
「入ったのは初めてなんだけど、こうなってたんだ。早く上に上がってみようよ。」
英治はそんな未佳を見て、少し申し訳なさそうに看板を指差した。
『合同就職説明会この下』
「えぇ~、地下でやるの。」
不満気な未佳である。現在地は二階なので、会場は一階であり地下ではない。だが、それすら申し訳なくて言えなかった。別に英治は、いや英治に限らず誰も悪くないと言うのに。
エスカレーターで下におりると、そこはコンクリート打ちっ放しの、無機質かつ広大な空間が広がっていた。
衝立が立ち並び、各社2メートル四方のスペースにイスを六脚並べてブースを設置している。パッと見で二十社くらいだろうか、これほど衝立があっても開放感を感じるのは、天井がとてつもなく高いからだろう。
「こちらで受付をお願いします。」
スーツ姿の若い女性が英治に話しかけてきた。
その女性がそれなりに美人だったことから、未佳は少しムッとしていた。
英治は気にも留めず、受付で必要事項を記入している。
「ついでに書いとくよ。」
英治はサラサラと未佳の分まで記入した。
書類なんて苦手な未佳からすると、英治はすこぶる頼もしく感じた。
そして手渡されたパンフレットはもはや冊子と呼べるものだった。
どうやら三十社が参加しているらしい。
それぞれが写真付きで仕事を紹介していて、ちょっとした求人情報誌となっている。
「まずは就職セミナーだってさ。」
二人は会場の一角に設置されたセミナーコーナーへと足を運んだ。




