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頑張った証拠ですか。

「ご来場、ありがとうございます。」

 未佳は笑顔で紙の手提げ袋を手渡した。

 中身はメモとボールペンそして缶に入ったクッキーだ。

 お偉いさんももちろんやってきた。

 しかし笑顔で迎える未佳に対し、お偉いさん達も笑顔になっていた。

「暑いなかスーツなんて大変ですね。」

「いやあ、でもめでたい席だからいいんだよ。」

「奥に冷たいお茶も用意してますよ。」

「ありがとう、いただくとするよ。」

 未佳に対し、みな気さくに返してくれる。

 一緒に受付をしている女性二人も未佳に優しい。

 今までで一番楽しい現場かもしれない。

「おねえちゃん、ふーせんほしい。」

 幼稚園くらいだろうか、長テーブルと同じ背丈の男の子がぴょんぴょんと飛び跳ねている。

「はい、どうぞ。」

 未佳は後に束ねてある風船の束から青い風船を手渡した。

「ありがとう。」

 未佳は笑顔で手を振った。

 間違いなく、今までで一番楽しい現場である。

「粗品が少なくなってきましたので、用意しますね。」

 未佳は後ろに置いてあるダンボールから手提げ袋を取り出すと、長テーブルの上に並べようとした。

「並べるのは私がするから、手渡してくれるかな。そっちの方が効率いいよ。」

「はい。」

 未佳は取り出した手提げ袋を美人のお姉さんに手渡す。

 その時、未佳は気づいてしまった。

 自分とお姉さんとでは、肌の色がまったく違うことに。

 日中外にいることが多い未佳は、当然ながら日焼けしていた。

 日焼け止めは塗っているが、焼け石に水といったところである。

 一方でお姉さんは、まさに透けるような白い肌である。

 なんだか少しだけ寂しくなってしまった。

 そんな表情に気付いたのか、お姉さんが声をかける。

「どうしたの。」

「あ、いえ、その、お姉さんって色白できれいだなって。私なんか日に焼けて真っ黒だし。」

 お姉さんは少し照れたように笑っている。

「ありがとう、でもその日焼けは、あなたが頑張ってきた証拠でしょう。」

 『頑張ってきた証拠』そう思えると楽にはなる。

 でもやっぱり色は白い方がいい。

 そう思えて仕方がなかった。

「お世話になります。」

 大きな声が響き渡る。

 見ると大きなバッグを背負った女子高生たちが20人ほどやってきた。

 全員制服姿であり、みな一様に肌は浅黒い。

 その体のどこにそんな力があるのかと疑問に思うほど大きなバッグを背負っている女の子もいる。

 未佳はプログラムを確認した。

 地元高校の吹奏楽部による演奏とある。

 彼女たちは吹奏楽部なのだ。

 未佳の通う高校にも吹奏楽部はある。

 思い返せば、夜学である未佳が登校するときに、グラウンドの一角でトランペットを吹いていた。

 音楽室で吹けばいいのに、と思っていたものだが。

 高校生たちは受付の前を挨拶しながら通りすぎる。

 未佳は一番近くを通る眼鏡をかけた小柄な女の子に声をかけた。

「ねえ、いつも練習って外でしてるの。」

「え・・はい、そうです。屋内練習は音合わせくらいで、基本は屋外練習です。」

 突然話しかけられて、少し戸惑いは見せたものの、歯切れの良い言葉が返ってきた。

「日焼けがイヤじゃないの。」

「日焼けですか、そういえば焼けてますね。みんな一緒だから気にしてませんでした。」

 確かに未佳自身も今までそれほど気にしていなかった。

 彼女たちを見ていると、『頑張ってきた証拠』というのも頷ける。

「その日焼けって、練習頑張ってきた証拠だよね。」

「はい、ありがとうございます。」

 未佳と高校生のやりとりを横でお姉さんはニヤニヤしながら眺めていた。

「頑張ってきた証拠ねえ。どうやら高校生に励まされた感じかな。」

 未佳は照れ笑いをするのが精一杯だった。

 それでもやっぱり色白のお姉さんが羨ましい。

 そのことに変わりはない。

 でも今はこれでいいんだと思える。

「ああ、高校時代に戻りたいなあ。」

 つぶやくお姉さん。

「私は現役高校生ですよ。夜学ですけど。」

「え、ウソ、勤労学生ってやつ。あなたそれは頑張りすぎよ。ていうか10代なの、羨ましい。」


ー私はあなたが羨ましいですよ、美人のお姉さん。


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