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上棟式ってお祭りですか。

 鉄筋コンクリートの8階建て、地方では十分にビルと呼んでいい。

 未佳は見上げて驚いた。

 まだ、鉄骨しかないからだ。

 上棟式というのは、建物の完成式典みたいなものだと想像していた。

 しかし骨組みしかない状況で、表の看板には完成は来年の春とある。

 その骨組みの頂上には、五色の細長い旗が風になびいている。

 紅白の横断幕が張り巡らされて、従業員と思わしき人達はみなハッピを着ている。

 未佳も同様にハッピを着せられた。

 そして天幕で来客に配る粗品を長テーブルに並べていた。

「若い子っていいわね、肌がとってもきれい。」

 そう言う女性も未佳より少し年上といったところで、十分に若かった。

 なによりも、長身なのにすこぶる華奢で、端正な目鼻立ちに風に負けないショートボブは、まごうことなく美人と言えるものだった。

「私にとってはアンタ達のどちらも羨ましいわよ。」

 そう言う年配女性は、ふくよかで、まごうことなくオバチャンという言葉が似合う。

 だが二人とも優しくて、未佳はかなり安心していた。


 一方で英治達は、大通りから入ってくる車を会場内に誘導するだけなので、かなり暇をもてあましていた。

 まだ始まるまで時間があるとはいえ、訪れる車はほとんどない。

 これは楽勝と思いきや、真夏に日陰もないところで立たされるという過酷な現状であった。

 さらに言えば、雅人と会話するにも気まずい。

 ひっきりなしに車が来ることを期待するばかりだった。

「マスコミが来るっていうから期待したんすけど、全然いないすよね。」

 雅人の方が無言に耐えられなかったようだ。

「そんなことはないですよ。ほら、あそこにいる人が新聞記者だから。」

 英治が指を差した先に、カメラを持った中年男性が立っていた。

 左腕になにやら腕章をつけている。

「あの人、カメラマンだったんすか。てっきりここの会社の広報とかだと思ってたっす。」

 地方新聞の記者が一人だけ。

 想定の範囲内だが、あまりに寂しい。

 大手物産会社とはいえ、地方のビルの上棟式にマスコミが来ること自体が眉唾だった。

 どうやら地域のイベント欄に載せる用の記事なのだろう。

「だったら俺、さっき写真撮られたんすよ。新聞載るんすかね。」

 新聞に載るとしたら、写真は一枚だけだろう。

 仮にものすごいイケメンだったとしても、駐車場誘導員の写真を載せるわけがない。

「載るかもしれないね。」

 これを生返事という。

 その時、二人の前に黒塗りの高級車が現れた。

 スーツ姿の中年男性が運転し、後部座席に恰幅の良い年配男性がどっしりと座っている。

 英治は当たり前に車両を誘導したが、雅人はすっかり萎縮していた。

「なんなんすか、あの高級車は。」

「企業のお偉いさんか、あるいは地方議員ってとこだろう。」

 英治は雅人に、方向だけ示せば余計な誘導は不要であると伝え、二手に分かれることにした。

 以前の未佳もそうだったが、黒塗りの高級車というだけで怖いと思ってしまう。

 そう思わない英治はすでに若者の心を持っていないのかもしれない。

 そして高級車は続々とやってきた。

 国産車、外国車、高級車の見本市の様だ。

 もちろん家族連れでやってくる人たちもいる。

 しかしながら、高級車の印象が強過ぎて、目に入らなかった。


 英治は未佳のいる天幕に目をやった。

 しかし英治のいる場所からはよく見えない。

 徒歩でくる人たちも増え、車の誘導も気が抜けない。

 未佳のことが気になって仕方がない英治であった。

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