超能力バトルっぽい場所ですか。
パトロールも3件目となると慣れてくる。
ああ今度はこのパターンねと、どこか偉そうにしている未佳であった。
今度はビルの解体現場である。
高い鉄板の壁に覆われた向こう側には、半壊したビルがそのままにしてある。
そしてやっぱり放置された油圧ショベルがあった。
まあ、ここは壁の向こうなので盗難の心配も低いのだろう。
しかしその扱いを見ると、200万円のマイカーをいつも丁寧にワックスがけしている父親が、なんだか滑稽に思えてしまう。
10階建てのビルの壁や床が乱雑に壊されているみたいだけれど、それでも倒壊しないのは、プロの壊し方というのがあるのだろうか。
あるいは激しい超能力バトルが繰り広げられたのではないか、などと想像してしまう。
半壊したビルばかり見ている未佳に英治は声をかけた。
「ここって先週映画のロケが行われたんだよ。」
「映画って、何の映画ですか。」
「いやよくは知らないんだけど、漫画が原作の超能力バトルものらしいよ。」
「やっぱりか。」
変に納得する未佳に、英治は何のことやらだった。
「誰か有名な人が来たとか。」
「なんか横文字のアイドルグループのナントカ・・・。」
「全然わかんないよ、おじいちゃん。」
「おじいちゃんはヒドイ。やめてあげて。」
「ああ、でもそれって公開されてから、あの時見にいけば良かったって後悔するパターンなんだろうなぁ。」
未佳は大きく溜息をついた。
「それって公開と後悔をかけてるとか。」
「たまたまだよ、おじいちゃん。」
再びおじいちゃんと呼ばれた英治だが、それ以上に気になることがあって仕方がなかった。
それは未佳の男性の好みである。
これだけ映画のロケに食いつくのは、能力ものの漫画が好きなのか、男性アイドルが好きなのか。
思い切って聞いてみた。
「アイドルに興味があったりするのかな。」
思い切った割には若干弱気だ。
「え、別にそうではないけれど・・・。英治君こそどうなの。」
返されるとは思っていなかった英治は、答えなど用意していないかった。
「あっと、俺の場合はアイドルには興味がないというか、良く知らないというか。むしろ女優さんの方が興味あるかな。」
そう言って、英治は女優の名前を数人挙げた。
しかし質問した未佳はほとんど聞いてはいなかった。
それどころか不機嫌な顔になっている。
「あれ、俺なんか変なこと言ったかな。」
「別に・・・。」
やっぱり不機嫌だ。
「怒ってるよね。」
「別に・・・、他の女の人の話なんか聞きたくないっていうか・・・。」
「え、そっちが聞いておいて、しかもテレビで見るだけの人じゃないか。」
未佳は口をとがらせている。
英治が言った女優に対し嫉妬している。
そう思うと不満げな表情も愛おしく感じる。
「私とタイプが全然違うし。」
そこまで考えていなかった。
「私って、英治君の好みのタイプじゃないんだね。」
英治が未佳の好みが気になっていたように、未佳も英治の好みが気になっていたのだ。
しかも名前を挙げた女優が誰一人として未佳に似ていない。
未佳自身も女優に似ているなんて思っていない。
ただ、『テレビに出ている人には興味がないよ。君が一番だから。』と言って欲しかったのだ。
英治がそんな気の利いたセリフを言うはずもなく、ただただ言葉に詰まっていた。
「俺は未佳の見た目で好きになったわけじゃなくて、一緒にいると楽しかったり、まあその可愛いなとは思うんだけど・・・。」
しどろもどろで言い訳する英治。
未佳は『好き』と『可愛い』の二つですでに機嫌は良くなっていた。
それでも顔に出さないよう、口をへの字にして押し黙った。
英治は益々慌てるように言い訳を繰り返す。
にやけてしまいそうな顔を手でおさえ、下手な言い訳を存分に聞く未佳であった。




