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採用面接って疲れますか。その1

「今日は面接に2人来るからな。」

 主任は何故か張り切っている。

「今日は主任が面接するんですね。」

「何言ってんだ、お前だよ。」

 英治はやはりそうか、と肩を落とした。

「梅雨時の閑散期にどうして募集をかけたんですか。」

 そう、工事現場が雨で軒並み中断され、仕事の全体量が減ってしまっている。

「それは夏場に向けての先行投資だよ。」

 確かに夏場の警備は過酷である。

 場所によっては日差しを避けるところがない。

 体調不良者がでないよう、配置は気をつけなければならないし、適度に休日が必要となる。

 その為には人員の確保は重要な課題ではある。

 しかしながら、求人誌に掲載するだけで10万円前後のお金がかかる。

 先日の会議で色々と言われたばかりなのに、無駄な経費ではないのだろうか。

 英治は訝しげに主任の顔を見た。

 主任は自信満々である。

「分かりましたよ。で、面接は何時からですか。」

 主任は事務所の壁掛け時計を見た。

 大きな丸い壁掛け時計の文字盤には、とある建設会社の社名が大きく入っている。

 創立50周年記念での頂き物ではあるが、自己主張が強いのと、いかにも昭和な雰囲気が、妙な違和感を与えてくれる。

「今10時だからもうすぐ来るな。」

 主任はことあるごとに報連相が大事だというが、主任自信が一番できていないと英治は思った。

 いつものことであるが。

「すみませぇん。面接にきましたぁ。」

 入ってきたのは小太りの中年男だ。

 Tシャツにジーパンという面接にあるまじきラフな格好である。

 だが珍しいことではない為、そこはスルーである。

 ただそのTシャツが、青地に大きく『SPECIAL』とだけ書いてあり、『何がスペシャルなんだ』と気になる英治であった。

「こちらへどうぞ。」

 陽子が奥の応接室に案内する。

 応接室といってもパーテーションで区切られた場所に、ソファーが置いてあるだけなのだが。

 中年男はソファーの背もたれに寄りかかるように腰を下ろした。

 対面に英治が座る。

「お願いします。」

 お互いに頭を下げ、履歴書を受け取る。

 その渡された履歴書を見て英治は驚いた。

 写真がもろにカラーコピーなのも勿論だが、何よりも職歴の多さだ。

 既定の欄に収まり切れず、資格免許の欄にまで書いてある。

 その大半が短期間でしかない。

 英治は気を取り直して面接に挑む。

「では早速ですが、面接を始めます。まず簡単に自己紹介からお願いします。」

「ああ、自己紹介ね。履歴書に書いてあるから読んだらいいよ。」

「そうですか、分かりました。ところで職歴が多いようですが、何か理由がおありですか。」

「そうね、色んな経験してみたかったのと、ある意味自分探しかな。」

 自分探しというより自分を見失ってますよ・・・と言えるはずもなかった。

「警備の経験はありますか。」

「ないよ、見たらわかるでしょ。」

 ここで英治の方針が決まった。

「そうですか。これから夏場に入ると、かなり過酷な環境になります。炎天下の中で一日中立ちっ放しです。慣れた人でも熱中症になる危険があります。大丈夫ですか。」

「やってみないと分かんないかな。」

「勤務が深夜におよぶこともあります。深夜の交通誘導にはある程度の危険もつきものです。覚悟はおありですか。」

「覚悟って、そんなに大変なの。」

「大変です。」

「じゃあ辞めようかな。」

「それがいいでしょう。半端な覚悟では勤まりません。履歴書はお返しします。」

 そう言って手渡した履歴書の年月日を見ると、修正液で消した跡がある。

 この履歴書って何回使ったのだろうか。

 そう思いつつ、英治は中年男を出口まで誘導した。

「本日はありがとうございました。」

 見送りは笑顔である。

 中年男が見えなくなってから主任と陽子が近づいてきた。

「瞬殺か、そんなにダメだったか。」

「職歴が書き切れないくらいでした。ある意味正直ですけどね。会話は聞こえていたでしょう。」

「まあ、でも売り手市場の昨今、贅沢は敵だぞ。」

「分かってますよ。でも勘違いしないでください。断ったのは相手です。次に期待しましょう。」

読んでくださり、ありがとうございました。


次回更新は9日の21時です。次回も宜しくお願いします。

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