表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/72

男同士の会話ですか。

「よし、温泉に行こう。」

 食事を終えた4人は、一旦部屋に戻ると着替えを持って温泉に移動した。

「すみません、家族旅行なのにお邪魔しちゃって。」

 英治は申し訳なさそうに頭を下げる。

 むしろ邪魔したのは私たちの方だよと、未佳は小さくうつむいた。

 これから温泉に入る、ということは英治は未佳の父親と入ることになるわけである。

 正式にお付き合いする前から家族ぐるみの付き合いになるなんて。

 ある意味、願ったり叶ったりではあるけれど。

「それじゃあ1時間後ということでいいわね。」

 そういうと、母親は確認も取らず女湯に入っていった。

 慌てて未佳も後を追う。

「1時間って長いんじゃないか。」

 父親はぼやいている。

「そうですね。女性は長風呂が好きですよね。」

 合わせるように英治も言う。

「お前、そのうち疲れるぞ。もっと肩の力を抜け。」

 父親はそういうと、さっさと男湯に入っていった。


 ここの温泉は単純アルカリ泉で、源泉かけ流しの湯である。

 檜の浴槽が3つあり、露天風呂も2つある。

 ややぬるめのお湯が、疲れを解きほぐしてくれる。

 英治は風呂で足が伸ばせることに喜びを感じていた。

 天井を見上げると、湯気で霞んでよく見えない。

 それがまるで別世界のようで、全身の力が抜けてしまう。

「温泉っていいですね。癒されます。」

「なんだ若者が年寄くさいこと言って。」

「年寄ですか・・・。出来れば年寄になってしまいたいですね。」

「変わったこと言うな。なんでだ。」

「今の私って年齢的には大人なんでしょうけれど、大人でも子供でもないって感じがして中途半端なんですよ。もう子供には戻れませんから、いっそ大人も大人になってしまいたいなって思います。」

 父親はしばらく黙り込んだ。

 未佳が言っていた『公務員になりたがっていた』というのを思い出していた。

 十分に大人の対応ができる奴だとは思ったが、それまでに苦い経験があるからこそなんだろう。

「お前って生きるの下手くそだろう。」

「生きるのに下手とか上手とかあるんですか。」

「あるんだよ。考えなくてもいいことを考えてしまう奴とか、自分が損しても他人を助けてしまう奴とか。」

「それが下手な生き方ですか。」

「そうだ。だいたいお前さんみたいな若者は、まだまだ可能性にあふれているんだ。自分で限界を決め込んでんじゃあない。」

「決め込んでいるつもりはないのですが、世の中って上手くはいかないものだなとは思います。」

「だから面白いって思える奴になればいいじゃないか。それが上手く生きるコツってやつだよ。」

 英治は言葉を噛みしめてみた。

 それでも自分は上手くは生きれないだろう。

「まあ、娘の幸せを考えると上手く生きている奴がいいんだろうけど、俺の本心としては不器用な奴の方が信用はできるがな。」

 何だかその一言で救われた気がした英治だった。 

読んでいただき、ありがとうございました。


次回更新は8日の12時予定です。次回も宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ