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未佳と英治の非日常

―今、現場終わり。俺がどこにいるか分かるか。

 英治からメールが来た。

 今日は現場に入っていたんだ。

―お疲れ様。実は隣の県にいます、なんてことないよね。

 すると思いの外すぐに返事が返ってきた。

―なんで分かった。超能力か、GPS機能とかついてんのか。

 まさか本当だったとは。

 『愛の力だよ』と打ってはみたが、すぐに消した。

―私も今いるから。

 返事がなかなか返ってこない。

 『運命を感じる』とか打ってはみたけど消しているのかもしれない。

 でもやっぱり運命を感じる。

 1日の中で英治のことを考えない日はない。

 (今日は自堕落に過ごしてしまったけれど。)

 偶然にしては出来過ぎている。

 もっとも、偶然出会ったり、すれ違ったり、多くの人と人が気付かず過ごしているはずである。

 そのことを気にとめるか否かが運命なのではないだろうか。

 つい先ほどまでは、だんだん離れていると思っていた。

 でも近づいていたのだ。

 まだ会ってもいないのに、なんだか嬉しくなってしまう。

―偶然だね。そんな予定聞いてないよ。

―言ってない・・・というか言うヒマがなかった。英治くんだってそうだよ。

―昼前に突然言われたから。

 お互い周りに振り回されたのか。

 それとも振り回してくれたのか。

 未佳は今すぐ車を降りて、英治の元に行きたかった。

 だがさすがにそれはできない。

 両親には英治のことを説明できない。

 会社の人で、よくしてくれているという話はした。

 でも一緒に遊びに行ってますなんて話はしていない。

 家族旅行を抜け出して会いに行きます、なんて言えば、ただならぬ関係だと思われるだろう。

 だが、そこまでの関係とは言えない。

 両親を紹介します、なんてまだ早い。

 そうこうしているうちに重大なことが判明した。

 今日宿泊する宿が同じだということだ。

 嬉しいけれど困った。

 困ったけれど嬉しい。

 先程から落ち着かない様子で携帯電話を使う未佳に、母親が話しかけてきた。

「どうしたの、なにかあった。さっきから変だけど。」

「変かな。別に普通だよ。」

 しかしこれはチャンスかもしれない。

 思い切って話してみようか。

 とりあえず会社の人ってことでいこう。

「実はね、今から行く宿に、会社の人も泊まるんだって。メールで分かってビックリしてたの。」

「ふうん、それはすごい偶然ね。」

「そうでしょう。」

 父親は特に興味を示さなかったが、母親は何かを感じたのか深く掘り下げてきた。

「その人ってどんなひと。」

「どんなって、リーダーさんだよ。前に話した、とってもよくしてくれる人。」

「独身なの。」

「独身だよ。」

「イケメン、ねえイケメンなの。」

 えらく食いつくなあ。

「背は高いけど、顔は普通かな。」

「あんたけっこう面食いだもんね。」

「そんなことないよ。」

「そんなことあるわよ。警備会社のリーダーってお給料いいのかしら。」

「どうだろう。あんまりよくないみたいだよ。公務員になりたがってたくらいだから。」

 母親はにやりと笑った。

「あんたそんなことまでよく知ってるね。だいたいメールしてる時点で普通じゃないでしょう。」

 するどい、未佳は思わず苦笑いをしてしまった。

「まあ、そのまだ何にもないよ。」

「まだってことは、いいなって思ってるんだね。」

 もうこれ以上話すとまずい状況だ。

 未佳は口を手で覆い、黙秘の姿勢をとることにした。

「あら、だんまりを決め込むつもりね。まあいいわ、同じ宿に泊まるならこれから会えるわね。楽しみ

ねえ。」

「何が楽しみなんだ。面白くない。」

 父親はものすごく不機嫌になっていた。

 運転も荒っぽくなっており、無事に辿り着けるのか心配になってきた未佳だった。

ありがとうございました。


次回更新は6月7日(火)12:00の予定です。次回も宜しくお願いします。

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