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未佳の日常

「未佳、起きなさい。もう6時よ。」

 未佳の母親は布団に包まるように寝ている未佳の肩を揺する。

 未佳の部屋は和室である。

 畳の上に布団を敷いて寝ているのであった。

「今日は仕事休みだよ。」

 気怠そうに答える未佳。

「休みでも関係ないでしょう。自堕落な人間になるわよ。」

「ジダラクってなにぃ。」

「自分で調べなさい。お母さんは仕事に行くからね。」

 未佳の母親は介護施設で働いている。

 今日は早番みたいである。

 未佳に比べると長身で痩身と、あまり似ている親子ではない。

「お父さんはぁ。」

「もうすぐ帰ってくるわよ。ほら起きなさい。」

「はぁい。」

 未佳は起き上がると、布団を二つ折りにした。

 部屋は6畳間で、学習机とタンスに本棚があるだけだ。

 ほとんどモノは置かれていない。

「いつ見ても年頃の女の子の部屋とは思えないわね。おじいちゃんの部屋みたい。」

「うるさいなあ、ほっといてよ。」

 未佳は寝巻き用の赤いジャージから、普段着用の紺のジャージに着替えた。

 今日は平日である。

 しかし外は雨模様。

 作業の大半が中止となった為、未佳にまで仕事は回ってこなかった。

 警備員には、社員さんと呼ばれる人達がいる。

 社員さんは、25日の出勤日数が補償されている。

 健康保険や厚生年金にも加入している。

 まずは社員さんから優先的に配置され、次にアルバイトである未佳達になるのだ。

 梅雨時期は仕事が激減するという。

 他のバイトも掛け持ちする必要があるかもしれない。

 金銭面のこともあるが、はっきりいうと暇なのだ。

 学校は夕方の5時半からである。

 それまで外出しようにも、『平日の昼間から外出なんて、ご近所さんの目があるからダメよ』と母親からきつく言われている。

 取り敢えず食パンでも焼いて食べよう。

 そうこうしている内に父親が帰ってきた。

「おかえりなさい。パン焼けたけど食べる。」

「いらん。」

 父親はちょっと小太りで、背もあまり高くない。

 未佳は父親似だと言われることが多いのだが、その度に未佳は不機嫌になってしまう。

 父親は工場勤務で、昼夜2交代勤務である。

 今週は夜勤の週だ。

 結構大きな工場らしいのだが、人手不足が深刻らしい。

 一度『未佳も工場で働いてみるか。中卒オンナでも大丈夫だぞ。』と言ったら、母親が烈火のごとく怒り狂ったという経緯がある。

 未佳は、こんな自分でも受け入れてくれるなら、と思ったのだが。

「父さん寝るから静かにしてろよ。」

 父親はそういって、部屋に閉じこもってしまう。

 静かにもなにも、ここは築30年のアパートである。

 文化住宅とも呼ばれるらしい。

 木造で壁が薄いため、嫌でも静かにしていないと、お隣さんに迷惑がかかる。

 未佳は教科書を取り出し、学校の勉強を始めた。

 勉強くらいしかすることがない。

 だが30分くらいすると、部屋を掃除しようと思い立った。

 固く絞った雑巾を手に、まずは本棚から拭きあげる。

 本棚は、ほとんどが少女漫画ばかりだ。

 この漫画、もうすぐ新刊が出るなあ、と手に取った漫画をパラパラとめくる。

 内容忘れたなあ、と読み返していると、あっと言う間にお昼になっていた。

 携帯電話を見てみるが、英治からのメールはない。

「お昼どうしよう。お父さんは3時くらいまで寝てるだろうし。私もそれまで寝てようかな。」

 考えているうちに未佳は眠ってしまっていた。

 母親の心配もよそに『自堕落』という言葉が似合ってしまう未佳であった。

読んで頂きありがとうございました。


次回更新は6日のお昼12時です。次回も宜しくお願いします。

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