お仕事しますか、それともデートにしますか。
「明日の配置はどこですか。」
電話越しの未佳の声は、いつも通りに明るかった。
「ちょっと待って、主任に代わるから。」
一方で英治はというと、素気なく主任に電話を回した。
回された主任は、訳が分からなかったが、とりあえず明日の配置を説明した。
未佳からの電話が切れた途端に、英治の携帯電話が鳴った。
未佳からである。
「もしもし、どうしたの。」
「どうしたのじゃないですよ。なんなんすかアレは。」
「ん、いや、今日は楽しかったですか。」
「楽しかったですよ。それがどうかしましたか。」
「いや、よかったね。」
嫌な間が流れた。
英治は切ってしまおうかとも思った。
いやむしろ切ってしまいたかった。
とはいえ切れないままに席を外し、事務所の外に出た。
「ハッキリ言ったらどうですか。『俺以外の男と遊びに行くなんて嫌だ』って。」
「うん、嫌だ。」
あっさりと認めた英治に対し、未佳の方が面喰ってしまった。
電話でよかった。
今、とても見せられる顔をしていないだろう。
「そ、それじゃあ、あしたの配置をおしらせしますよ。」
たどたどしく未佳は言う。
「明日の配置って、主任から聞かなかったんですか。」
「それは断りました。これから発表するのは明日の英治さんの配置です。」
「俺の・・・配置ですか。」
未佳は二度ほど咳払いをした。
この咳払いが、英治には雑音として届いた為、携帯電話を耳から離した。
「・・・・・・だ。私と・・・に・・・すよ。」
未佳の言葉は、携帯電話を耳から離していた為に、ほとんど聞き取ることが出来なかった。
「ごめん、今何て言った、もう一度お願い。」
「うそ、絶対うそだ、辱しめだ、公開処刑だ。」
未佳は騒ぎ立てたが、本当に聞こえなかった英治には何が何やら分からない。
「なんか雑音がうるさくて、ちょうど耳から離してたんだよ。」
「分かりました、もう一度だけですよ。明日の配置は海だ。私と遊びに行くぞ。」
しばらく沈黙が流れた。
「それって俺の真似なの。」
「だから嫌だったんですよ。ワザとでしょう。絶対聞こえてたでしょう。」
「そんなことないって。」
英治は一転して立場が上になったような気がした。
「明日の配置は海だね。了解、で、どこの海に行く。」
「どこでもいいんですけど、海というか、二人で出掛けることが目的だから。あ、ただし車はダメです。電車で行きますよ。」
「電車で海ってチャレンジャーだな。」
「そうなんですか。」
「そうだよ。しかもまだ寒いよ。」
「それがいいんですよ。」
結局押し切られる形で海に行くことになってしまった。
英治は事務所に戻ると、主任に明日休むことを告げた。
明日は元より休みなのだが、言わないと休めない。
言うと当たり前だと言われる。
面倒なことである。
とはいえ、明日は楽しみでもあり不安でもある。
きっと未佳も最初はこんな気持ちだったんだろう。
そう思いつつ、残務処理をする英治であった。




