デート気分ですか。
「今日はお誘いいただきありがとうございます。」
未佳は深々とお辞儀をした。
雅人は恐縮して頭を掻いた。
未佳はいたずらっぽく笑う。
英治に比べると雅人は幾分子供に思える。
車ではなく電車を使う。
隣り合わせに座り、お互いのスマホで撮った面白写真を見せあった。
お気に入りの曲を紹介したりもした。
目的地に向かうところから楽しいと感じる。
英治といると楽しい。
でも距離を感じてしまう。
そうだ、私は年下なんだ、子供なんだって。
「私って子供っぽいかな。」
「全然、むしろ大人っぽいくらいじゃない。もう働いてるわけだし。」
そうだ、私は子供じゃない。
だからといって大人でもない。
働いている人はみんな大人だと思っていた。
でもそうじゃない。
分かってしまったんだ。
だからもう、子供じゃない。
途端に雅人といることが悪いことのように思えた。
英治と付き合っているわけではない。
だから何も悪いことはしていない。
なのになぜ、こんなにも落ち着かないのだろうか。
もう楽しいなんて思えなくなってしまった。
帰りたい、未佳がそう思った時だった。
「未佳ちゃん、俺は未佳ちゃんのことが好きだ。俺と付き合ってくれないか。」
未佳は驚いた。
告白されたのは人生で初めてだった。
雅人のことは嫌いではない。
どちらかと言えば好きな方ではある。
ただ、恋愛感情かと言えば良く分からない。
では英治はどうだろう。
英治のことは好きとも嫌いとも言えない。
すごいと思う反面、めんどくさいとも思う。
素敵だと思う反面、弱い人だとも思う。
好きだと言われれば好きだし、嫌いだと言われれば嫌いだし。
「雅人君とは友達でいたいな。」
未佳は屈託のない笑顔で答えた。
「俺のこと好きじゃないってこと。」
未佳は首を横に振った。
「雅人君といると楽しいよ。でも恋人にはなれないって思うの。」
「好きな人がいるとか。」
「そういうことじゃなくて、楽しいだけの関係でいいじゃない。それが友達でしょう。」
雅人は納得いかない顔をしていたが、これ以上の深追いはやめることにした。
「友達ってことで今はいいや。」
未佳は変わらずの笑顔だった。
「しっかし雅人君ってチャレンジャーだね。」
「どうして。」
「だって行きがけに告白するなんて、もしダメだったときどうするつもりだったの。」
しばらく間が空いた。
「もし・・・ってダメだったじゃんか。」
「あ、そういえばそうだった。」
「なに、俺ってフラれたんだよね。」
「はい、フリました。ごめんなさい。」
雅人も未佳も笑っている。
「未佳ちゃんで良かった。」
「私は雅人君じゃない方が良かったな。」
「ひ、ひどい。何も止めを刺しに来なくてもいいじゃんかよ。」
楽しいだけの関係、それでいいんだと心の中で繰り返す未佳であった。




