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暇なときってどうしてますか。

「ヒマなときってどうしてますか。」

「暇な時・・・寝てるかな。普段なかなか睡眠時間が確保できないので。」

 とあるショッピングセンターの駐車場、未佳と英治は駐車場の誘導要員として駆り出されていた。

「そうじゃなくて、お仕事してるときですよ。現場でヒマなときってあるでしょう。」

「ああ、今みたいな時間ね。」

 そう、通常は3名で配置されている駐車場であったが、セール期間ということで、店側が2名の増員を申し出た。

 しかし期待とは裏腹に客足は伸びず、駐車場も空きが目立っている。

「ここはまだ動きがある現場だからいいけど、車一台通らない田舎道での工事は辛かった。」

「そうそう、そういう時ですよ。どうしてますか。」

 英治は少し間を置いた。

 言い辛そうな顔になった。

 まあいいかという顔になった。

「一日中、鼻唄を歌ってた。」

 予想外の答えに未佳は驚きを隠せなかった。

「で、『御機嫌のところ悪いけど』って声かけられて、振り返ったら監督さんがいたという。」

「ええ、なんですかその面白エピソードは。絶対ネタでしょう。」

「ネタじゃないよ。実話だよ。」

 英治の仕事モードが薄れかけている。

「あと、前を通る車を見てるかな。」

「そういえば英治さんって、なにげに車詳しいですよね。好きなんですか。」

 『好き』という言葉に反応してたじろいでしまう英治。

 『車』だと心の中で言い聞かせた。

「車だけど、別に興味ないよ。」

「え、でも車の名前とか知ってますよね。」

「うん、それはね、暇すぎて、前を通る車が何か遠くから当てるクイズをやってたから。」

 クイズと言えば聞こえはいいが、

「それって一人でやってたんですか。」

「そうだけど。」

 それで詳しくなったなんて、よっぽど暇だったんだと容易に想像ができる。

「ごめんなさい、後見てくれない。」

 いつの間にか近づいていた軽乗用車の窓から主婦と思わしき中年女性が声をかけてきた。

「ちょっと待ってください。」

 駆け寄ろうとした未佳を英治は制止した。

「申し訳ありません。バック誘導は出来ない決まりなんですよ。事故があっても責任が取れないものですから。」

 女性の顔色がみるみる強張っていく。

 英治は出来る限りの笑顔を見せた。

「誘導は出来ない決まりですが、車の後方でダンスするだけなら大丈夫ですよ。たまたま動きに合わせてバックすると良いかもしれません。」

 そう言うと英治は軽乗用車の後方に回り込み、手招きを始めた。

 英治の誘導は見事である。

 ハンドルを切るよう合図を送り、それにならって車は動く。

 きれいに一発で駐車が完了し、主婦も上機嫌となった。

「あんた、誘導上手だね。さすがプロだわ。」

「いえいえ、あくまでダンスしてただけですから。」

 未佳は英治の誘導テクニックに感心するとともに、ちょっとめんどくさい人だなとも思えて笑ってしまった。

「なに笑ってるの。」

「だってダンスだなんて・・・素直じゃないなあって。」

「バック誘導はしちゃダメなんだぞ。」

「でもしましたよね。」

「だからダンスだって。」

 本当にめんどくさい人だな。

 そう思うと可笑しくてたまらない未佳であった。



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