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双極のブレイクスルー  作者: 頴娃伺
アルテマフォースの真実
8/8

リノア

リノアが目を覚ますと、そこは朱雀帝国では無いことは確かである。すくなくとも近くに人がいる気配は感じられない。

ブレスレット型の魔障石は外されており、今寝かされていたベッドから5メートル程離れた所にケースに容れられてあるのが見える。状態を起こしてみる。手足など繋がれている感じもなくて、へやのなかでは自由を与えてくれているようだ。

部屋の大きさは10畳位。窓は一つ見えるだけでそれ以外は特になにもない。コンクリート張りの質素な造りで開閉出来る扉には格子が窓にはいっていて割って逃げることすら叶わない。

いや、逃げようとした瞬間に半殺しは躊躇がないと思う。逃げようとは考えるだけ無駄だと思う。

捕まるなんて思わないのでブレスレットも純度がかるいのを選んでいるので大した魔法も使えない。

全てが裏目に出た。戦闘服から程遠い見た目重視の服と軽い純度の魔障石。更にストックの石も持ってきていない。それはしょうがない。分かる。

助けを待つしか無いのは見た通りでどうしようもない。

「ラウレル…」

喧嘩別れみたいな形になってしまって、もし助けに来てくれたってどうすればいいか解らない。

しかも、ルシエとか言う彼女が出来ているラウレルは多分絶対に自分の事なんてどうでもいいって思ってるはず。

唯の義兄妹なのだ。それ以上の感覚は向こうには無い。

『期待するだけ無駄の極みだ』

ドアから入ってくるのは、機械兵出あった。言葉はノイズは入っておらず、次ははっきりと聞こえた。

『ここはアスク同盟連邦神界派出所である。神界では帝国と名乗り活動している。神界の民よ聞いたことはあるかね?』

「はい、あります。こちらの世界に大きな迷惑をかけている異世界の住民ですよね」

『そこまで仮説が起てられていたとはとは予想外だ』

「いえいえ、そういう事は得意なんです。ここの世界は」

『そうか。まだこちら…神界の情報は全くといって皆無だからね、君が少し協力してくれる事を希望したいのだが』

機械兵は人間らしいうごきで言う。入ってくるときに一緒に持ってきた紅茶を入れてくれるようだ。しかし非協力的な態度を見せればこの動きは機械のように一切の躊躇はなくなるだろう。

ーーラウレルならどうするだろうか。

そんな事を考えながら、リノアは頷く事しか出来なかった。

『そうか。感謝する。それならこちらも待遇を改めないといけないな』

―待遇?勝手に連れてきて協力してあげるというと待遇が変わるのか。異界はこちらの世界よりも人間に対する対応が違うようで驚く。

「具体的に何をすればいいのですか?」

その機械兵は紅茶を注ぎ終わり近くの素朴なテーブルに置いた。それから右手を顎に持って行き考える様子を見せる。

『作戦の主に相談をしてくる。少し待っていてくれないか?』

いうと、その機械兵はコードが切れたかのように動かなくなる。よく見ると凄く良く出来た機械だと思う。コートを羽織っているので内側は見えないが、武器などが仕込んであるのだろうか。

ふと、紅茶に目がいく。―毒なんて入ってないよね・・・?

そっとベットから起き上がり紅茶の置かれたテーブルに近づく。

湯気を立てて美味しそうな甘い香りが鼻に香る。

「飲んでいいのかな?」

つぶやく。まぁ飲んでもらうために注いだんだよね。機械なんて水を飲めないものね。

「あれ~?飲まないの?」

覗いているリノアに女の声がかけられてびっくりする。

それが、機械のものじゃなくて生身の声だったから。

いや、ここに人間がいるなんてあたりまえじゃないか。いつから機械しかいないって思い込んでいたんだろう。

「君がこっちの王族さん?」

―王族とはなにか、おそらくアルダイムだとは予想出来た。しかし自分にはアルダイムの血は流れていない。なのになんで?

「わかりません。王族とは何ですか?」

「あらたまなくていいんだよ。・・・王族?アルダイムだよね」

引き気味なリノアにその女の子はグイグイと突っ込んできてうるさい。

「でも・・わた・・」

途中で辞める。もし自分が王族ではないと知られると自分の身が危ない。

『そうです。いくつかの質問に答えてください』

いきなり機械兵の声が聴こえる。

『では、用事が見つかりましたのでこれで。ああ、その紅茶には何もしてませんからね。朱雀の国から買ってきたものです』

なら安心か。少なくとも。それと

「この子の名前は何ですか?」

いきなり話しかけてきた女の子の肩を掴んで強制的に機械兵の目に入る位置に持っていく。

『この子・・・とは?』

―は?ここにいるじゃない。ポンコツなの?

「無駄だからね。私の魔法は認知できなくさせるの。でも、効かない人もいるけどね」

女の子は軽くはははと笑ってリノアを見る。

『まぁ、混乱しているのでしょうか?半日後に迎えに来ますので準備を・・・って何も持ってきていませんね』

「えぇ。おかげさまで」

少し喧嘩腰で返して機械兵は気にした様子もなく部屋を出て行く。

「話そうよ。ショウン家のリノアちゃん」

「気づいて?・・・」

「大丈夫。あたししか知らないし、もし知られてもあたしが守ってあげるから」

少し上からな気がするが機械の目をごまかせる能力があるのなら、それは確実に向こうのほうが力が上だ。

「まぁいいや。またあとでね。リノアちゃん」

勝手に上がり込んで勝手に帰るのか。まるでぬらりひょんだな。と思いながら鍵が開いているドアを開けて出て行く。

―嗚呼、鍵は開いているのか。





『四つ目の質問です。この上界の神の名はなんというのですか、わからなければ黙秘でも結構ですけど』

豪華に飾った帝国の城ロエス・ロルスーー大きな一歩という意味らしい。ーーの中全員で三百は座れるであろう食堂には今はリノアと《自動人形》と称されるオートマグの二人しかいない。

目の前に一人では食べ切れないほどの料理がだされ、リノアはそれに二、三口ほど食べて残している。至極美味しかったというのは黙っておく。

「こっちの神を信仰している者はごく一部で私もその一人です。しかし名前は知っています。真祖アルファイル」

『そこまで一緒なのであれば尚更併合したほうが得だと考えます。伝説はご存知でしょうか?』

真祖アルファイルの伝説、それが嘘っぽいから誰も信じていない。しかしこれで繋がった。全てが。リノアは苦笑する。


海の果てとその真実。下界の民と真祖の血筋、上界のアルダイムと下界のアルテマフォース。


タイル張りの壁に温かそうに蝋燭が揺れている。天井には蛍光灯という、下界の科学の結晶とも言うべき光原が赤白く光っている。

ーー蝋燭要らないんじゃないの?別に嫌いじゃ無いけど。

リノアはロエス・ロルスの客室に案内されれていた。強引に連れてきた割には少しマナーはなっているらしい。

「寝られないの?」

ベットに横になっていると、客室の机に向かっている一人の少女が話しかける。下界の住人なのだそうだ。

「なんで話しかけるの。関わらないで。今は機嫌が悪いから」

「王子様に振られたんだってね。そんな事持ち出さないでくれる?唯、あたしは君と話したいんだ」

「なんで私なの?ロボットさんが沢山いるじゃない。私なんて昨日今日連れて来られただけなのよ」

「そんな君だから話したいんだ。少しはそんな気はないのかい?あたしは下界の人間なんだよ、聞きたいことだってあるでしょ」

「無いから。黙ってて」


「そんなことを言われてもね、こちらにはきみとお喋りしないといけないからな」

その女の子は笑いながら言う。黒髪が光に反射してリングを作っている。

「それは帝国さんの事情でしょ。私には関係ない」

リノアは強気で切り出す。こんな人になんの権力もないはずだ。

「あたしはね、アルテマフォースの一族なの。先祖は君と同じ真祖アルファイルさ」

ーー…宣言撤回。恐らくアスク連邦に置いて大きな権力を持っている名家と考える。

アルテマフォースは直系のアルダイムの分家として知られる。上界には一人も居ないが、アスク連邦にはいる。

「だからなに。私にはどうでもいいことなんだけど」

「分からないかな。伝説では生まれ変わりが近々覚醒するんだ。アスクの皆は上のアルダイムと手を組みたいんだよ」

ーー分からないって。生まれ変わり、あるとするならラウレルだし、元々ショウン家の私には関係ない。

「伝説にそんな記述は無かったはずだけど…アルダイムと手を組んだ所で進歩はしないと思うけど」

「一緒の神を持つけど神教は少し違うんだね。…協力してくれると君の願をひとつ叶えてあげよう」

「あなたにそんな事出来るとは考えられない。でも協力はする。それしか選択肢は無いから」

ーーま、これが最善策か。でもこちらが不利になる情報でも掴まないといけない。…でもこの女の子からは何も聞き出せないと思う。リノアはそう考える。

「そう。あたしはね、君の知りたい答えを知っている。あたしたちの行く末もね」

ーー何を言っているんだ?そんな事なら私がアルダイムの血が流れてない事なんて知っているって事だろ。でも

リノアの口から出た言葉は、

「ラウレルとルシエとか言うクソ達の事も…?」

「そうだね……君は考え過ぎだね。からかわれるのも無理はない」

女の子の言葉には根拠はないが、なんだか安心するなにかがあった。少し考える。

「からかわれる……」

客室に変な空気が流れる。少し居ずらくなったのでリノアは

「もう寝ます。でていってくれませんか?」

「…あたしの目的は達成した。少しくらいは話せたよ。では、良い夜を」

アルテマフォースの女の子は席を立ちドアの方へ歩いて行く。そしてドアノブに手をかける。振り返りざまに

「…無いと思うけど、逃げないでね。ドアには二人護衛管が居ますから何かあったら言ってね」

「…ん」

リノアは頷く。考えるが、この部屋に窓は無い。ドアの向こうに二人も人がいるんじゃ逃げようにも逃げられないし、上手くいったとしても朱雀帝国の三倍もある人工島から脱出出来るとは思えない。

女の子が扉を閉めた。誰もいないことを確認する。そして

「詰んでるじゃんか。でも、信じてるからねラウレル」

溜息と一緒に吐き出した。

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