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双極のブレイクスルー  作者: 頴娃伺
展開と転回
5/8

自分



「…この二人は役に立たないな」

ラウレルは溜息をついた。だって人造人間と魔法を使えない魔女。自分の修業には全くといって普通と違う。唯、自分の想像力を鍛えられれば良いという自分の感覚と違う。

「銃で沢山撃たれれば良いの。その痛みを何十倍にも膨れさせて人に押し付ける感じ」

リノア談。魔障石の一番効率の良い使い方だといった。受けた人間は全身がぼろぼろで死ぬ広範囲の呪式魔法だという。恐らく銃で撃たれた瞬間に死ぬから却下した。

「なんかぁ、目の前に自分の道を作る感じ。ちょっと腹筋に力を入れるのぉ」

破壊の魔女は通った道に血や人間の塵一つ残らなかったそうだ。恐らく空間制御系の魔術だと思う。その気になれば山一つ消せるんだって。危険な魔女です。ていうか、石を使えないんだってね。感覚的に違うから却下。

「参考にもなんないから。全然感覚違うから」

「いつもどんなことをしてるんですかぁ?魔障石は想像力の具現化でしょぅ?」

「そうじゃないんだよ。ルシエの言ったように自分が知っている痛みや、体験した自然現象とかを自分なりのアレンジを加えて相手にぶつけるんだけど。石の純度がそこで大切になってくるけどね。父上がああだから、俺は大した痛みとかを受けたことが無いんだ」

「石の広域範囲は知っているんですよね。なんでなんでしょう。ラウ君のお父上様は」

ルシエが腕を組んで考える。そこでメイドさんもとい、ミカが口を開いた。

「私の能力を受けて下さいよぅ。再現出来るでしょうぅ?その言い分だと…ねぇ」

「無理だから、世界から駆逐されちゃうから…マジで」


三人で話していた。そんななか、扉がいきよいよく開かれた。見えた外は煙で白く満たされていて、それがへやのなかに入ってくる。それに人影が二、三人見える。焦ったラウレルは机の引き出しに入っている戦闘用の魔障石が柄の方に入っている刀を取り出す。純度は最高の八十九パーセント。それを腰のベルトに挿して普段用のブレスレット型の石を手にはめる。こっちも純度は八十パーセント程だ。

「ミカ、煙を部屋に入れないように結界を張ってくれっ」

ラウレルは指示をする。恐らく聞いてくれるだろう。

「空間を切り裂け《断絶空》」

ミカが右手の人差し指と中指を二本立てて唱える。当然石は持っていない。瞬間的に煙がドアから少し入ったところで止まる。空間に透明な壁を作ったようだ。音も何も聞こえなかった、敵にすると怖いな。

「どうするんですか、ラウ君」

何が起こったのかは知らないけど父上が解決してくれるさ。


「さあ、それはどうかな。アルダイムの王よ」

聞き慣れない声だった。野太く響くような声だ。その声の方を向く、そちらは煙りが充満した廊下の方じゃなくてそれの逆の窓の方だった。

「王よ、あなたは私達について来なければならない。いや、ついて来なさい。……連れて行く」

落ち着いたようなしっとりとした口調で。

「私達は反政府組織カークス。帝国を滅ぼすため、協力を仰ぐために参上した。リノアの姫が捕われたと聞いたが…」

「あのねぇ、大層な名前よねぇ。これが、ギルドの正式名称なの。少し前からラウレル様を迎え入れようって言われてたんだよねぇ。でも、私はそんな事しないからね。辞めてここで唯働いているメイドだからぁ」

そんなミカの自己主張は置いといて。ラウレルはルシエに命じる

「ルシエ、窓を開けてみて」

「了解した。いつでも全力で戦闘が出来るように準備」

目が青く光る。空気の流れが変わったのがわかる。

ゆっくりと窓に手をかけて開けはなつ。

「良いね、良いね。そのままこっちに来ておくれよ」

ーーRankAの暗示のゴースト

夜のアルダイム本家の中庭に淡い赤のシルクハットを被った赤いスーツを着た高身長の男が宙に浮いていた。

「やっぱり……あいつの姿を見たらだめよっ!!」

焦ったミカにはいつものゆっくりとした口調が変わった。

しかし、もう遅かった。

そういったミカもかかっててしまう暗示にラウレルとルシエがかからない訳はなくて。

「悪いようにしないのさ。少し作戦を実行して貰うだけさ」

意識の遠のく三人に聞こえた言葉だった。

夢を見た。はるか昔に体験したような夢だ。


「ねえ。君は何がしたいんだい?」

それは城に隣接した高さ二百メートルは下らない講堂に似ていた。

背中に十字架の槍を背負った金髪の男は正面のカラフルなステンドグラスに向かい、問い掛けているように言う。それを後ろで見ていた。まだその男は続ける。

「どんな願いでも私が叶えてあげるからさ。君は願うだけでいいんだ」

それは、意識せずともラウレルの耳に届いた。

そして、どんな夢かを思い出す。これはほんとに体験した出来事だ。


ラウレルは身震いして前世の神としての記憶を押し殺す。


暗示のゴーストの能力は催眠術の簡易版でその効力は、RankSの人間でもすぐに寝てしまう程だ。そんなのが目の前に来て対抗する術なんて一つしかないわけだ。

「ねぇ、私まで縛る必要なくないぃ」

ミカが暴れる。

そうここは反政府組織カークスの本部、丸々一日を使いアーシア大陸にまで運んできたらしい。

「これから何されるんでしょうか。少し心配です」

「協力をしてほしいって言ってたんだ、多分何もしないよね」

ルシエとラウレルはミカの後ろに隠れながら小声で話していた。

三人は腕と足を縛られて体育ずわりをする形で座れされていてコンクリートの壁で三方向を囲まれていて残りの一方向は鉄格子がはめ込まれていて、外から見ると動物が入っている檻のように見える。そんななかに容れられて外に人が五人ほど立っている。皆自由な服を着ている。そのなかにゴーストの姿も見えた。その五人はミカの知り合いらしかった。

「辞めたと思ったらすぐに力が落ちるのか。ブレイキングウィッチ」

「しかし手柄であるぞ。こんな天才的な石使いのそばにいるとは」

ミカは、歯ぎしりをしながら縛られた手でメイド服のエプロンを悔しがるように握る。

「作戦会議をしたいけど…源三さん石を返してロープを解いてあげて下さい」

ゴーストが一番偉そうに踏ん反り返っているおじさんに話しかける。

「そうだな。純度が二人とも馬鹿高いが…ケースに入れて渡せ」

ゴーストと源三以外の三人が返事をしてこの部屋からでていく。

「ミカ、魔術で破壊出来ないの?」

当然の疑問と思う。石を必要としない魔術を使えばすぐにこんな檻を破壊出来そうだが。

「源三さんはRankSSでぇ、私の魔術と系統が一緒の魔法を使うからぁあの人だけには効かないのぉ。しかも硬化魔法と一緒の体術も使うからぁ…殺されちゃうんだよねぇ」

「マジですか。あのブレイキングウィッチでも勝てない人が」

「情報不足です。あんな人知りません」

ルシエも混乱するようだ。源三さん恐ろしす。


数分後にでていった人が帰ってきた。両手にはブレスレットの入ったケースと刀のケース、あとはリノアの石。

「私は阪多辺源三だ。ゴーストの手荒な真似は許して貰いたいが・・・」

そう言って源三は少し笑う。しかしミカは「いいですよ」なんていいながら目はすごく源三さんを睨んでいた。

「君はラウレル・アルダイムだな。そして君は・・・?」

ルシエを見ながら源三は問いかける。石の純度からして警戒しているようだ。でも、クリカラットの兵だとはわかっていない。

「こちらはラウレル様の付添人のルシエという者ですよぅ」

源三さんに説明して一息つくミカは手足が自由になっている。その次にルシエに近づくギルドのメンバーにラウレルはガンつける。今まではどうか知らないけどなんか、自分以外の男が近づくのはムカつく。

ーーそんな感情はどうなんだろうか。

「なにもしないからね、そんな目で見ないでおくれ、僕のダイヤの心が傷つきそうだよ」

「ダイヤってなかなか傷つきませんよね」

いらっときたのでジト目で棒読みな言葉をぶつける。

流れで次にラウレルが手足のロープを解かれた。そして源三に質問をする

「僕達に何をさせたいんですか?」

「そうだよな、説明しないといけないな。ゴースト持ってこい」

なんかよく分からないが指をずっと鳴らしているゴーストという男のくせはやめてほしいと思う。

「帝国の件だ。私達も大朱雀帝国とクリカラットの同盟軍が開戦をするときに一緒に突っ込んで見るつもりだ」

「同盟は成功したんですか?」

「今は少し困難だが、私の部下がクリカラットにいる。そいつが踏ん張っている状況だ」

と、その部下がどのくらいの権力を持っているか知らないが王が変わっていろいろあるんだろうと、それ以上の追求は自重する。

「クリカラット前王の行動が表に出てきたのだ。それが全て大朱雀帝国に不感を思わせる内容でね・・・聞きたいかい?」

ものすごく話したい、という希望が凄く伝わってくる目線にラウレルはミカにふる。ルシエは熱心に聞いているようだ。

ミカはラウレルに向かって、両手を「こんな人なんです」というふうに謝る素振りを見せる。

ーーまぁ、気になるところもあるから聞こうかな。

「はい。聞きたいです、聞かせてくれませんか?」

「しょうがないなー。せっかくだから長く話そう。3日も4日も一緒だろ」

この髭面ムカつくな。ラウレルが思う。・・待て、3日も4日も?

「4日も寝てたんですか?」

それに食いついたのは一番はルシエだった。

ーー「しょうがないです。こんなに寝たのは初めてなんです」って顔でラウレルを見る。


「わかってて焦っていないのかと思ったよ。知らなかったのか。・・どうでもいいな。本題に入ろう」


最初は三日前に遡る。源三さんは話始める。

「作戦会議は?」なんて慌てているゴーストは、ざまあみろだ。

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