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転生魔女は悠々自適に世界を旅する  作者: 黛ちまた
双子魔女の旅立ち

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村奪還および駆逐作戦開始ー!〈前編〉

 約束の日。

 ギルドに向かうと、ギルマスの部屋に通された。先日の補佐官と五人の兵士がいた。今回同行する人達とみた。


「今回依頼を受けてもらった、アナベラ殿のご息女達だ」


 ザッと音をさせて兵士五人が同時に胸に手を当てた。兵士や騎士の敬礼的な仕草だと思う。私とエレンはお辞儀。


「あの、領主様にご提案というか、お許しをいただきたい件があります」


 長年のリーマン生活が魂に刻まれてるのか、どうしても強気に出れないのである。

 補佐官が怪訝な顔をする。


「どういった内容かお伺いしても?」

「はい」


 椅子に座るよう促されたので座る。兵士さん達は立ったままだ。


 私達が考えた一時凌ぎの防御壁構想を話すと、補佐官は何度もうぅん、と唸った。「それが可能であれば確かに」とか「だがそうなるとあちらは」とか声に出しちゃってたけど聞かなかったふりをする。


「最終的に維持されるかどうするかの判断はお任せします。私達としては次にまた同じことをされないための一時凌ぎでも全く構いません」


 もっと良い案があるならそれを実行に移してもらえばいい。私達は英雄になりたいわけじゃないし、根本的解決方法思い付かないし、魔女の戯れということで使ってもらっていい。どうも母の名はそれなりに知れ渡っているようだから、平和的解決というか、"アナベラ殿が出てくるのであれば仕方がありませんな"みたいな双方が円満に折れる理由として使ってもらって、民草がこれ以上被害に遭わないことが大事。


「主人に奏上します」


 補佐官は自分では判断できないので持ち帰るよう。よろしくお願いします。


 話も終わったので、いざ出発。

 私達はかぼちゃの馬車に乗り込む。その後ろを五人の兵士が馬でついてくるようだ。

 おぉ、この世界で初めて馬を見たー。魔女馬車は馬車って名前のくせに馬がいないから。クルックさんはラバで森に来てたし。

 ファゴットには馬が疲れすぎない程々の速さで目的地に向かってもらってる。その間私達は、兵士達には申し訳ないけど、二階の居間で家着でぐーたらしてます。彼らもまさか魔女がこんなぐーたらしてるとは思いもしないだろう。




 火も暮れて、外が真っ暗になったので馬車を止めてもらう。私達だけなら夜通し進むけど、兵士と馬には休憩が必要ですからね。

 ローブを羽織って馬車を下りると、兵士達が待機していた。


「お疲れ様です。今日はここを拠点として休みたいと思っています」

「分かりました。では野営と見張りをします」

「見張りは大丈夫です。皆さんがいる場所にも防御幕を張るので、安心してお休みください」


 野営を張る場所を教えてもらってから、防御幕を張る。目で見えるようにしておいたほうが分かりいいかなーと思って、淡く光らせておく。

 むくつけき男に変身したファゴットが、馬用にと水の入った桶を持って馬車を下りて来た。これはアレですね、シエに乗って周辺を回ってくるつもりだな。

 エレンが料理の入ったお皿を持って馬車から下りてきたので、私も馬車に戻って飲み物やらカトラリーを取りに戻った。

 ほかほかと湯気をたてる煮込み料理(羊)にふかふかのパン、さすがに飲み物は水だけど、旅なんかでキレイな水を確保するのは難しいからね、兵士さん達は喜んでました。あ、あとカトラリーもね。水はお代わりできるようにボトルで持ってきた。


「食べ終わったらお皿をまとめておいていただければ、後で回収します」

「ありがとうございます」


 お辞儀をする兵士にお辞儀で返して、馬車に戻る。

 さて、我らもごはーん!!

 今日は羊の煮込み料理! 季節の野菜とパン(白くないよ) いただきまーす!







 私達が寝ている間にファゴットは天狼に乗ってあちこち散策したようだった。調子に乗って散策して、魔物を連れて帰って来たみたいで、朝、兵士達のごはんを持って馬車を下りたら、防御幕の周りにいっぱい魔物がいた。……ファゴット、なにやってんの。

 魔物は防御幕があるから寄って来れないものの、囲まれていて兵士達はあんまり眠れなかったみたいだ。うちのファゴットの所為です。ごめんなさい。


 魔物を片付けないとだなーと思っていたら、エレンが私のマジックバッグを持って現れた。


「ありがとう」

「食事前に片付けておいたほうがいいかなと思って」

「そうだね」


 魔物達に見張られながらの食事とか、味がしなさそう。


 トッと軽快な音をさせて横に立ったキトラを撫でる。

 集まった魔物はスケルトンでした。当然食用不可だし、何処かに死霊使い(ネクロマンサー)がいるんだろうな。


「『索敵』ネクロマンサー」


 詠唱すると、スケルトンから光の筋が伸びていって、そこそこ離れた林の中に吸い込まれていった。

 操られてるだけのスケルトンの相手をしても仕方がないので、天狼キトラに跨って死霊使いを目指す。索敵されて慌てて林の奥に逃げたようだったけど、天狼の足より早く逃げられるわけもなく、すぐに見つかってシュナに叩かれ倒れた。


「『風刃』」


 後方から飛んできたエレンの魔法であっさりお亡くなりに。南無。

 死霊使いを守るように取り囲んでいたスケルトン達はガチャガチャと音をたててその場に崩れた。

 まったく、死者を冒涜してはならんよ。


 土魔法で穴を掘り、埋葬する。生前のお名前が分からないから、お墓を建てることもできないけど。お墓があったらあったで流れの死霊使いにまた捕まってしまうから、穴は深めにしておいた。まぁ見つかってしまうと思うんだけど、それでもね。


 馬車まで戻ると、兵士さん達が戦いの準備をして待っていた。ごめん、もう終わってます。


「ご無事でなによりです。死霊使いは倒されたのですね」


 幕の外にいたスケルトン達もことごとくその場に崩れていた。


「はい。埋葬していたので戻りが遅くなってすみません」


 エレンが道から少し離れた場所に穴を空けていくので、風魔法でスケルトンを浮かばせて、穴に入れていく。手伝います、と言って兵士さん達もスケルトンを搬送してくれた。骨が混じらないように一人ずつ動かすから時間かかるんだよね。助かります。

 総勢五十体ほどのスケルトンを葬って、馬車に戻る。

 いやー、誰かさんの所為で朝から働いたなー。あとでお話が必要だなー。


 朝食を兵士達に渡した後、馬車の中でファゴットを正座させてお説教しましたとも。

 地図のために出歩いても構いませんよ。だけど上手く撒いてきなさいよ。連れて帰ってくるの禁止。守れないなら天狼の貸し出し禁止するよ、と言ったら濡れた犬みたいにしょんぼりしていたけど、当然です。

 私達だけなら別に何も問題ないけど、今は兵士さん達がいるんだから、彼らの安全を守らねばならぬのですよ。

 シルルもファゴットを怒っていたけど、シルルのお説教の内容は連れてくるなら食べられるものを、とかだと思う。なんせシルルなので。


 少しの休憩を挟んで、出発。

 今日中には一つ目の目的地に到着かつ殲滅の予定!

 待ってろよ、ゴブリンめ。根絶やしにしてくれるわ!(悪者っぽい)




 予定どおり村の跡地に到着。木で作った柵で村を囲っているみたい。うーん、結構知恵を付けてきてるね。

 ゴブリンは学習能力が高い。人間が作ったものから、それが何に使われるものなのかを理解する。学習型AIより省エネルギーで学習しているあたり、人に近い脳構造なのかも? って褒めてる場合じゃなかった。さっさと倒さねば。とはいえこの柵、邪魔だな。

 燃やしたれ、と思った私の横でパチン、と指を鳴らす音が。直後に炎の柱が現れて、柵を燃やしていく。


 エレンちゃん早いな!?

 っていうかエレンちゃんも指パッチンで豪炎発動できるの羨ましい。

 よーし、私も燃やしちゃうぞー。残念ながら私は詠唱が必要ですけどね!


「『豪炎』」


 隣の柵も燃やす。あっという間に炭化した柵と、音に気が付いたゴブリン達が出てきた。うん、装飾品とか身に着けてるね。人間から強奪したものだろう。奴らは知恵はあるし器用だけど自分達で作り出すという発想にはならない。人間から奪うのみ。


 ギィギィと不快な声を上げてる。抗議してるんだと思うけど、おまえ達だって人間が抗議したって止めないんだから、お互いさまって奴ですぞ!


 天狼であるキトラ、シュナ、シエ、ミトラに合図すると、四匹はタタッと軽快な音をさせてゴブリン達に襲いかかった。

 私とエレンは天狼達に防御の魔法をかけておく。あの子達ならゴブリンの攻撃をものともしないんだけど、嫌なんですよ、万が一にも傷付くのが。だから過保護といわれようとも保護魔法はかける!


 防御魔法が終わったら調査魔法で人間や動物が囚われていないかを調べる。この瞬間が一番嫌い。いないでほしいと心から思う。


「……いなさそう」

「そうだね、私も調べたけどいないみたい」


 上手く住民達が逃げられたのであれば良かった。

 餌と思しき動物はいるみたい。助けられそうであれば助ける。村人が育てていた家畜の可能性がある。


 音に反応して家々から武器を持ったゴブリン達が叫びながらこっちに走ってくるのを、私達は魔法で迎撃する。

 奴等は死んだふりなんかもするので、確実に仕留めていく。

 お母さんに鍛えられたからこうやって戦えてるけど、あの鬼の猛特訓なしで旅に出ていたら、躊躇したと思う。

 実のところ、森にいた時、動物タイプの魔物と戦うのだって初めは抵抗があった。ましてやゴブリンは亜人だ。人間に攻撃をするようでなかなか攻撃魔法を放てなかった。さすがに襲われる前には魔法で倒したけど。

 魔物だし分かり合えない存在だと頭で分かってはいても、前世の倫理がそれを邪魔した。

 だから前世を思い出して、お母さんに年単位で鍛えてもらったから、今こうして躊躇なく戦えてる。お母さんありがとう。


「『防御』」


 私とエレンの周りにも防御を張る。動物タイプの魔物相手ならやらないけど、ゴブリンは飛び道具も使ってくるし、もしかしたらメイジもいるかもしれない。

 パァンと弾く音が頭上からした。間に合って良かった。やっぱりいたみたい、ゴブリンメイジ。

 見るとローブを着たいかにもなゴブリンがいたので、魔法には魔法で返す。


「『豪炎』」


 火柱から轟々という音と、ゴブリンメイジの断末魔が聞こえた。燃やし尽くしてるとは思うけど、念のため止めも刺しておく。

 

 ゴブリンメイジがいたとなると、普通の村人ではかなり苦戦したのではないだろうか。犠牲者も出たことだろう。

 次々と襲ってくるゴブリンやゴブリンメイジを倒していく。遠目にも村の大きさがそれなりに大きかったから、敵の数も多かろうとは思っていたけど、倒しても倒しても出てくるー!

 建物はなるべく傷つけたくないので、魔法の制御も精度を必要とする。

 あー、魔力多く生まれて良かったー!

 あとエレンと天狼達がいなかったら、いくら魔女がチートでもソロで討伐とかはやれなかったなって思う。


「エレン、ありがとう!」

「何にか分からないけど、こちらこそ!」


 夜になって視界が悪くなる前に殲滅してやるー!


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