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転生魔女は悠々自適に世界を旅する  作者: 黛ちまた
新たな魔女の誕生

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2/8

行商人クルックと使い魔

 魔女は生まれながらに魔女なので、まほーが使えちゃうんだって。なんというチート。面倒くさがりな私に優しくて助かるー。

 前世読んでたコミックとか小説だと魔女が生活魔法を使って楽しそうだったけど、我が家には屋敷妖精のシルキーがいるのでそういうのはナシ。彼女達は家事を何より愛しているので邪魔してはならぬのです。


 ある日私達と同い年くらいの小さなシルキーが増えた。母に聞いたらうちに来たがっていたから受け入れたんだって。一つの家にはシルキーは大抵一人って聞いてたのになんでかなー?

 母のことだから何か考えがありそうだし詳しくは聞かない。それに大人のシルキーから色々教わってる姿は、大変そうというより楽しそうだし、良いのではなかろーか。




 森の深い所に住んでるから、いわゆる人間との接点はほとんどない。今は魔法を覚えたり、童心に帰って森の中を駆け回ってみたりするほうが楽しい。

 数ヶ月に一度訪れる行商人のクルックさんが来ると、見たこともない面白いものが見られるのは楽しい。


 母に頼まれてエレンと庭に花を植える。屋敷妖精のシルキーは屋敷から出たら契約が解消されてしまう。だから彼女達は屋敷から出ない。契約を解消したいと思ったら出て行ってしまうけど、よっぽどでなければ出ないらしい。シルキーは屋敷を出るとバンシーになるという。バンシーは人の死を予見し、その家の前で泣くとして人間には怖がられているらしい。そりゃそうだと思う。

 そんなわけだから庭仕事は私達と母がやる。

 

 シルキーを迎えたい家はシルキーのための椅子を用意する。そうするとシルキーがやって来る。だからあの小さなシルキーがうちにいるのはお母さんが新たな椅子を用意したからなのだ。

 エレンに何でだろうね、と聞いたら、何となく想像つくけど、まだ不確かだから言えないと言われてしまった。しつこく聞けば教えてくれるけど、そこまでしなくていいかなと思ったから聞いてない。


「お邪魔するよー」


 聞き覚えのある声に顔を上げると、思ったとおりの人がそこにいた。クルックさんだ。


「クルックさん!」

「いらっしゃい」

「やぁやぁ、小さな魔女さん達、元気だったかい?」

「元気だよ!」

「私、お母さんにクルックさんが来たことを伝えてくるね」


 しっかり者のエレンはそう言って家に駆けて行った。


「今日も大荷物だね!」


 クルックさんはいつも二頭のラバでやって来る。片方に乗って、もう片方に荷物を背負わせる。


「そうだね、今回は特別なものを持ってきたからいつもより多いよ」

「特別?」

「そうさ」


 私達もその特別なものを見せてもらえるかなー。見せてもらえるといいな!




 クルックさんが来て、お母さんとクルックさんはいつもの遣り取りをしてる。森の中に篭りきりだから物資が足りないのではなくて、この辺りでは手に入らないものをクルックさんは持って来てくれる。

 

 魔女はこの世界において邪悪扱いされてないみたいで、お母さんの馬車に乗って村まで降りたことは何回もある。

 村人もたまーにお願いごとをしに家に来たりする。

 自分達だけでは対処できないような強力なモンスターが現れたりすると、お母さんに退治をお願いに来るのだ。村は小さいからギルド(ファンタジーっぽーい!)なんてものもなくて、基本的に自分達で何とかするわけだけど、それでも無理な時は頼ってくるというわけだ。無論タダ働きはしないみたい。当然だね。とはいえ、ここは森の奧だから来るのも結構大変だと思う。そうまでしても何とかしてほしいってことだよね。

 村人がお母さんにも私達にも悪感情を持ってないのは接してれば分かる。素材なんかも適正値で売ってくれてるとお母さんは言ってたし。


 そうそう、お母さんの魔女の馬車は普通の馬車だった。いや、前世でも馬車なんて乗ったことないけど、写真とか映像では見たことがあった。あのまんまだった。

 引いてる馬がいないということを除けば普通の馬車に見えたんだけど、やっぱり普通じゃなかった。なんと、お母さんが呼ぶと現れるのだ。馬車がいられるだけのスペースさえあれば何処にでも呼べる。便利ー!

 私やエレンもいつか持てるのかな!

 でも私はエレンと離れる気がないんだけど、エレンはどうかな。エレンが嫌じゃなかったら一緒の馬車で旅とかしてみたいなー。


 ノックする音がして、ドアが開くのと同時にお母さんが顔を見せた。


「あなた達に見せたいものがあるからいらっしゃい」


 もしかしてクルックさんが言ってた特別なもの!?

 特別なものを持ってきたんだって、という話はエレンにもしていたから、二人顔を見合わせた。お互いに期待に満ちた目をしてると思う。


「はーい!」

「はーい」


 居間に行くと、テーブルの真ん中に大きくて立派な箱が二つ並んで置かれてた。なんだろうと思って覗き込むと、色とりどりの、様々な模様が施された大きな卵が箱の中に並んでいた。イースターエッグとも違う、ちょっと神秘的にさえ感じる卵だ。


 見上げると、お母さんはにっこり微笑んだ。


「これはね、使い魔の卵よ」


 使い魔! 魔女っぽいのきた!


「好きな卵を選ぶの?」

「選ぶのではなくて、選ばれる感じかしらね」


 そうなんだ。

 でもどの卵もとても素敵だから選びきれないし、選ばれたほうが楽かも!


「卵の一つ一つに手をかざしてごらんなさい。卵があなた達を気に入ってくれれば光るわ」


 私もエレンも卵一つ一つに手をかざしていった。そうしたら二人とも、卵が二つ光った。


「おや、これはとても珍しい。二人とも二つの卵に選ばれるなんて」


 なんと使い魔候補が複数!


「どちらかしか選べないの?」


 私と同じ疑問を抱いたエレンがお母さんに尋ねる。


「そんなことはないわ。聞いたことはないけれど、もしここにある卵が全て光ったら、全て使い魔になるのよ」


 使い魔を複数持つのはありらしい。やったね!


「二人を選んだそれぞれの卵は、どちらも天狼の卵のようですなぁ」


 天狼! なんか強そう! フェンリルみたいな感じ??


「そうみたいね。それにしても二つの卵に選ばれると思っていなかったから、保育帯が一つ用しかないわ。急いで用意しないと」

「保育帯ってなに?」

「使い魔の卵は主人となるあなた達の魔力を食べて大きくなるの。だから卵が孵るまで身に付けておくのだけれど、それ専用の帯が卵一つ用のしかないのよ」


 卵二つを強引に入れられないもんね。納得。


「出来るまではそうねぇ、シーツで固定するしかないかしら」


 布の汎用性の高さありがたし。

 シルキーとお母さんがシーツで二つの卵が重ならないようにくるくると巻いて、私とエレンの背中にくるように結びつけてくれた。


「本来ならおなかのあたりにくるようにするんだけれどね、二つもあると動きづらいだろうから背負っていなさい」


 そう言われて卵を背負ったんだけど、ランドセルを背負ってる感じ。五歳児だけど。


「使い魔はどのくらいで孵るの?」


 この状態が一年とかは困っちゃうので、確認大事。


「そうね、大体三ヶ月くらいかしら。ただ卵が二つだからどうかしらね。あなた達魔力が多いから大丈夫かもしれないけれど」

「そーっと扱わないと割れる?」

「落としても割れないわ。ただ自分の魔力を馴染ませないといけないから抱えているだけ」


 ちょっと雑に扱ってもいいと理解した。

 良かったー、ガサツだからそーっと過ごすとか無理だもの。


 早く使い魔が孵りますようにー!


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