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転生魔女は悠々自適に世界を旅する  作者: 黛ちまた
双子魔女の旅立ち

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食材と織物と旅行記と屋台と買い過ぎ注意

 クルックさんのお店を出た後、食材調達に向かう。


「あ、本屋さんだ」


 私の呟きを聞き逃さなかったエレンは、本屋をガン見する。食材調達に行かなくちゃいけないけど、本屋さんに行きたくてたまらないんだろうなぁ。


「エレンは本屋さんに行って来たら? 私は食材を買ってから帰るよ」

「いいの?」

「いいよ。帰りは気を付けてね」

「ありがとう!」


 目をキラキラさせちゃってもう。

 その場で解散して、エレンは本屋に突撃した。無限収納本棚、買ってもらって正解だったなぁ。

 魔女馬車キャンピングカーの冷蔵庫やパントリー内に何があるのか分からないから、色んなものを見繕っておこうかな。




 魔女馬車に戻ると、ファゴットが帰って来ていた。ちゃんと時間を守っているようで感心感心。……でもなんかソワソワしてる。まだ日暮れまで時間あるからなぁ。

 むくつけき男のソワソワ姿……。


「ファゴット、魔法かけ直してまた出かけて来る?」

「いいのか!?」

「いいよ。ただそうだね、キトラ、一緒に行ってきてくれる?」


 キトラが頷く。

 ファゴットの安全もそうなんだけど、ファゴットが帰り渋ることのないように、キトラが強制的に連れ帰るようになんだけどね。

 もう一度魔法をかけると、意気揚々とキトラを連れたファゴットは出かけて行った。この分だと早々にファゴットが領都の地図を完成させそう。

 振り返るとシルルもそわそわしていた。あー、私が何を買ってきたか気になってるんだね。エレンがいない時点で本屋に行ってることは分かってるよね、うん。


 旅を始めてから二階の温室でシルルが水耕栽培を始めたけど、一週間やそこらで育つはずもない。魔法を使えば早いんだけどね。魔女通販ネットショップのカタログにもこの魔法がオススメ! とか書いてあったんだけど、手仕事をこよなく愛するシルルがそんなことを許してくれるはずもなく。自然に育つのを待つ日々です。


 マジックバッグから買ってきたものを取り出し、テーブルの上に並べる。

 まず野菜。自分達の畑で自作してたけど、植えられる数にも限りがある。その点領都の耕作地はかなり広いようで、畑では育てていなかった野菜もあった。


「これはスティッキオ、ゴルゴと、ビーツ、ラディッキオとズッキーニと花ズッキーニ、トマトベリーにフィノッキオ、平さやいんげん、あとトロペア」


 一つひとつを手に取って確認するシルル。何を作ろうか考えながら見てるんだろうなぁ。


「果物はルバーブと苺」


 こっちの果物を食べると、前世の日本人農家さんの努力がいかに凄いかが分かる。色や形、香り、甘さ、その全てが全然違うんだよね。こっちではそのまま食べても甘さがあまりないから、お酒に漬けておいて菓子に混ぜて焼いたり、コンフィチュールやジャムにされるのがほとんど。


「魚はニジマスとザンダーでしょ」


 領都は海から離れてるから、川魚が基本。


「肉は鳥の魔物と、牛の魔物にしてみた。お店には豚の魔物肉や鹿の魔物肉もあったけど、鹿肉はシャレンを思い出すから買わないよ」


 使い魔と魔物は別物だって分かってるから、気持ちの問題という奴。

 シルルは分かってるといった顔で頷くと、ささっと食材を片付け始めた。


 家着に着替えて、シルル特製のクルミクッキーを食べる。これまでは森の中にいたからクルミやピーカンナッツが手に入ってたけど、これからは手に入りにくくなるなぁ。チョコレートとかもまだ食べたことないし、やっぱり南国に行かないと無理かな。魔女通販で売ってたけど高かったなぁ。


「ただいまー」


 エレンがシエとミトラと一緒に帰って来た。満面の笑顔。あれは気に入るものが手に入ったと見た。


「料理について書かれた旅行記を買って来たよ。あと領都特有の織物」


 シルルがシュッとエレンの前に立つ。はやっ!

 エレンのマジックバッグから取り出された本と織物を手にしたシルルは、ギュッと胸に抱いた。シルルは妖精だし、人間の文字を読めなかったんだけど、エレンが読む旅行記に料理に関する描写があったのを知ってから、人間の文字を勉強した。料理への情熱凄い!


「エレンは気に入った本は手に入ったの?」

「あったー。歴史書と地理に関するものを買いました。でもまだちょっとしか見れてないからまた行く」


 こっちも本への情熱が凄い。


 シルルが晩ご飯の仕込みをしている間、私とエレンは二階の居間に。買ってきた本に没頭しているエレンの横で、天狼達のブラッシングをする私。お手入れという名の飼い主へのご褒美タイムです。キトラはファゴットとお出かけしてるから、帰って来たらだなぁ。

 抜けた毛はシルルが洗ってフェルトにしてる。どこまで器用なんだ、シルキー。


 ここ数年のルームシューズは天狼達の毛で作ったフェルトでできてる。鍋敷きやコースター。あとは私達の髪飾り用の花にもなってる。キトラとミトラとシュナは黒い毛が多いから、シエのフォーンの毛は貴重らしいよ。

 トトとルーヒはコブタとコツメカワウソに擬態しているけど、スライムだから脱毛しない。今度羊毛を手に入れようかな。シルルなら編み物も好きだろう、きっと。

 紡績で栄える街に行くのも良さそうだけど、私達のお財布が大変なことになりそうだから、やっぱりお金を稼がないとね。


 階下からファゴットの声がした。帰って来たみたい。無事でなにより。

 今回のことで領都内なら天狼を連れて行かせることでファゴットを守れることに気付いた。私達が街の中にいる時はいいけど、依頼で領都を出る時は馬車の中にいてもらったほうがいい気がする。毎日依頼を受ける気もないから、ちょうど良いのでは?


 下で何やらファゴットがシルル相手に言い訳をしている気配がする。何があったのかと見に行ったら、屋台で色々と食べ物を買ってきてしまったみたい。蜂蜜にしか興味がないのに何で買ってきてるの……。

 ファゴットは食べない。シルルも食べない。食べるのは私とエレン。そうするとシルルのごはんを私達が食べられない。ということでシルルに怒られているんだね、きっと。


「まぁまぁ、せっかく買ってきてくれたから食べるよ。それでどんなものかシルルに伝えるね。そうしたら次はシルルが作って食べさせて。絶対にそのほうが美味しいから。私達も楽しみが増えるでしょ」


 エレンの言葉にシルルが機嫌を直す。エレン、やりおるなー。


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