かぼちゃがランドマークになってしもた
ギルド登録は済んだので、次の問題は魔女馬車の設置場所確保です。
冒険者が天幕を張れる場所は一番外側の城壁の内側。畑なんかも同じエリアで、二つ目の城壁内に店や領都民が住んでる。最も守られている場所はいわゆるお貴族様とか豪商がお住まいらしい。
特権階級に興味はないし、忖度もしなーい! せっかく魔女というチートに生まれたんだから、好きに生きちゃうぞー!
街の中を散策するのは明日にして、天幕を張れる場所に到着。沢山の天幕がずらーっと並んでて、なんか凄い。いやだって本当、天幕ばっかり並んでる。使い込み度の違いはあるものの、色は似た感じ。冒険者が使う天幕に求められるのは丈夫さや森の中でも目立たないもの、つまり実用性だよね。
程よい広さが見つかったので、そこに魔女馬車召喚。かぼちゃの馬車目立つ。まさに悪目立ち。
ランドマークみたいになってしまったけど、まぁいいや。ここに永住するわけじゃないし。
遠巻きに眺めてる冒険者の視線を無視し、扉を開く。興味津々なところ申し訳ないけど、招かれた者しか中は見えないのだよ、すまんな!
ファゴットも呼んで中に入る。人間には青い炎が馬車の中に吸い込まれたようにしか見えないでしょう。
馬車はチート仕様だから攻撃無効ですよー。正しくは攻撃が無効になる防御魔法を張ってて、それは魔導石を動力源としてる。私とエレンがちょくちょく魔力を補充してるからシルルは好きなだけ魔女馬車内の魔道具を使えるのです。実家には乾燥機とかなかったから、楽しいみたい。乾燥直後の洗濯物って温かくて気持ち良いよね。分かる。
「ただいまぁーっ」
「ただいまー」
やっと喋れるー!
待ち構えていたシルルにバッグやらローブを奪われ、手洗いとうがいをしてから家着(これがまたふわもこで可愛いんだよ)に着替えてダイニングへ。
椅子に寄りかかって、私もエレンも息を吐く。
「珍しがられるのは分かってたけど、こういうのは予想してなかったよー」
「ちょっと話しづらいね」
周囲がこちらに意識を向けてるのが分かるんだもの。いつものように話せない。
「でも、これで最初に立てた目標のうち二つは完了したね」
「そうだね。今はまだ家から持ってきたものがあるから素材を自力で入手できていないし」
「そうだよね。でも明日は領都内の散策をしようよ。クルックさんのお店にも行きたいし、エレンも本屋とか行きたいでしょ?」
「行きたい!」
シルル好みの布や刺繍なんかがあるかは分からないけど、それも確認したいところです。
「領都ならではの珍しい食材や調味料があったら嬉しい」
「それが済んでから依頼受ければいいね」
「依頼薬草採取から始めたい!」
「お約束ですな」
天狼いるし我らチートな魔女だから、私何かやっちゃいました? もやれるだろうけど、そうじゃないんですよー、まず薬草採取したいの。鑑定用魔道具も持ってるし、最初は薬草採取がしたい。
エレンが最高級の無限本棚を買ってもらったあと、お母さんに欲しいものはないのかと問われたんだよね。特に思いつくものもなかったし、大丈夫だよって答えた。本当になかったから。
母としては不平等に思ったのか、エレンの最高級本棚と同じくらいの価値を持つ鑑定機能付き指輪を買ってくれたのです。
せっかくいただいたのだからこれで珍しいものとか見つけて、実家に手紙と一緒に送るのさ!
そういえばお母さんが街には郵便を生業とする店があるって言ってたな。創業者は魔女らしいので、かの高名な映画のファンなんじゃないかなって勝手に思ってる。
魔法で手紙や物を送ることは出来る。一回きりの擬似使い魔みたいな感じで、対象の相手に絶対届けてくれる優れた魔法。魔法が使える人なら使えるから、こちらの世界の人間達も使える。その魔法を確立したのが魔女だったというだけで。
魔女通販、魔女郵便(私達は不要だとしても)、前世の便利なものをこの世界でも再現しようとする先人には感謝感謝です。
テーブルに並ぶ食事を、ファゴットが興味津々といった顔で見てる。
「ファゴットも食べる?」
〈いや、僕は蜂蜜があればいいから〉
そう言ってシルルからハニークリームサンドクッキーと蜂蜜入りの紅茶をもらってた。蜂蜜好きだからパンケーキもいけるんじゃないかな。
シルキーは喋れない(喋らない?)けど、エインセルのファゴットは喋る。妖精との親和性が高い人や魔女、賢者なんかは会話が可能なんだって。
「シルル、明日の朝食、パンケーキにしてほしい。バターと蜂蜜たっぷりの」
蜂蜜と聞いてファゴットが反応する。
〈それは僕も食べたい〉
「皆で一緒に食べよう」
食後はファゴットが作っている地図を見せてもらった。なかなか細かく書き込まれている。私が馬車の中でぐぅたらしている間に作っていたんだなー。
〈頼みがある〉
ファゴットが頼み? なんだろう?
〈街の中の地図も作ってみたいんだが、いかんせん僕は人間に狙われやすい〉
「そうだね」
〈むくつけき男に変身させてくれないだろうか〉
そこまでして街の中を見たいのか。
今後も街中を自由に歩くのであればそれはありかも。青い炎の姿で歩いたほうが安全だろうけど、それは嫌みたいだ。
ファゴットは少女に見える少年というだけでなく、飛び抜けた美貌の持ち主。かつ妖精というのも相まって希少な存在。人間のフリをして歩くだけでも危険だと思う。
「私達がかけられる魔法は二時間までしか効果がないから、一時間ほどで帰って来るぐらいの気持ちで出かけたほうがいいよ」
「それでも良いならかける」
〈大丈夫だ!〉
あと十分ある、なんてやってると大抵トラブルが起きるものです。お約束って奴ですよ。
妖精を変身させる魔道具って作れるのかなぁ?
魔法だとどうしても時間制限があるから、装備している間効果のある魔道具がいいんだよね。魔力はファゴット自身のもので大丈夫だろうし。
私がファゴットに変身魔法を。エレンが防御魔法をかけることになった。
むくつけき男が出入りするかぼちゃの馬車!




