第4章 夏 榎王子のオアシス
この世の中には悲しい出来事がたくさんあります。あなたはきっと大丈夫。そんなメッセージをこめてこの作品を作りました。
ソウトたちは、榎王子のオアシスへとたどり着きました。そこではどんなことが起こるのでしょうか。
葦舟は砂の川をゆっくりと滑り出した。赤かった空が少しだけ青みがかってきている。砂の大地の上にわずかだがこけが生えていた。
やがて、砂の川の向こうにオアシスの茂みが見えてきた。
そのオアシスはまっすぐに立つ木に囲まれていた。
秀は、老人にもらった地図をながめながら、旅の仲間に話しかけた。
「次の関門は砂漠のオアシス。榎王子の国です。」
オアシスの森が見えるすぐそばまでたどりつくと、葦舟は砂の川の岸辺に寄った。
暑い。とにかく暑い。赤い空の日差しも熱い。砂の照り返しも暑い。砂の川は日差しをさえぎるものがないのでとにかく暑かった。
オアシスの中央へと続く小道が左右に分かれていた。
「どっちの道だろう。この地図ではどっちの道までは分からないや。」
秀は困り果てた。分かれ道に近づくと小道の上に、カゲノオたちが横たわっていた。 カゲノオたちは、オアシスの中央へと続くだろう小道にしゃがみ込んでいた。
「こっちへ行けっていうことだよな。」
勇がまた剣で道を指し示した。
「よかったね。名付ける者。大分進んでこれたね。」
「ありがとう、カゲノオ。道しるべになってくれたんだね。」
ソウトは胸の前で手を合わせて、カゲノオたちに感謝の言葉を告げた。
ソウトの言葉を聞くと、カゲノオたちはまた光のつぶになって空へ舞って行った。
ようやくオアシスの中央へとたどり着いた。そこからは泉が湧き出していた。無数の青いチョウが飛んでいた。
泉のわきに一人の美しい若者が座っていた。
ソウトは泉のそばによると、若者におじぎをした。
「ソウトと申します。名付ける者と呼ばれています。この世界の世界の刻を取り戻すために旅を始めました。」
若者は返事をしなかった。
「わからない。どうしてもこの謎がとけない。」
王子は独り言を言っていた。
「わからない。ああ、明日までにこの謎がとけないと、隣の国の騎士に。」
「どんな謎ですか。」
ソウトが大きな声で話しかけると、若者が顔を上げた。
「君はだれ。僕は国の榎王子だ。」
「ソウトと申します。名付ける者と呼ばれています。この世界の世界の刻を取り戻すために旅を始めました。」
ソウトは先ほどとおなじあいさつしてもう一度おじぎをした。
「どんな謎ですか。」
ともう一度質問をした。
「ああ、隣の国の騎士から出された謎だ。明日までに解かなければならない。もう半年も考えているのに、一つも解けやしない。」
榎王子はうつむいてしまった。
「どんな謎ですか。いっしょに考えますよ。」
と今度は秀が質問をした。
うつむいていた榎王子は顔を上げて
「えっ、いいのかい。とってもむずかしい謎なんだよ。」
秀は
「とにかく教えてください。謎が分からなければ考えられないので。」
と言って眼鏡をくいっと上げた。
「一つ目の謎は、朝は4本の足で歩き、昼は2本の足で歩き、夜は3本の足で歩く生き物はなんだ。」
「そんな生き物なんているか。」
勇が頭を抱えた。
「一日の中で足の数が変わるなんて。」
優が不思議がった。
愛を背負ったケイは不思議そうな顔をして二人をながめた。
「足の数が一日の中で変わる生き物?」
ソウトも腕を組んで考え始めた。
秀が手を上げて話し始めた。
「答えを言っても良いですか。」
「もう分かったのかい。」
勇は目を見開いて秀を見た。
「さすがは秀。」
優は拍手をして秀を見つめた。
「もっとも秀でた者、秀。」
ソウトはあの時の言葉をもう一度つぶやいた。
「それは人間ですね。人間は赤ん坊の時には手と足4つではい回ります。成長すると2本の足で歩ます。そして年をとると、杖をつくから3本の足になります。」
秀がすらすらと答えた。
「スピンクスがオイディプスに出した謎かけですよ。簡単です。」
榎王子が秀の手をとって喜んだ。
「一日の中じゃないじゃんか。」
勇がぷくっとふくれた。
「朝、昼、夜は人生をあらわしたたとえですよ。謎かけではよくあるたとえです。」
秀はふくれる勇に向かってくいっと眼鏡を上げた。
「ありがとう。君はすごいね。でも謎はまだあるんだ。解いてもらってもいいかい。」
榎王子は感動したのだろう。声がうわずっている。
「2つ目の謎は、建物があって、そこに入るとき、人は目を閉じている。でも、そこから出るとき、人の目は開いている。この建物と何だろう?」
「ああ、世界最古のなぞなぞですね。それは学校です。」
秀は再びすらすら答えた。
「学校に入る時に、目を閉じていたら危ないよ。」
勇が秀に叫んだ。
「実際に目を閉じているわけではないんですよ。学校に入る前、人は何も見えていない、何も分からないという、たとえで目を閉じていると言っているんです。」
秀は勇に向かってくいっと眼鏡を上げた。
「ではどうして出る時に目を開いているの。」
優がすかさず質問した。
「学校から出ると、人は目を開けているというのは、勉強をしてもののいろいろな見方が分かったことをたとえいるんです。」
「またたとえかよ。」
勇がさらにふくれっ面になった。
ケイが拍手をするとつられたのだろうか、わきに座っている愛も拍手を始めた。
「なるほど、やっぱり君はすごいな。」
榎王子は感動して秀の腕をにぎりしめた。
「では、これが最後の謎だ。すべての女性が一番欲しいものは何だという謎だ。」
「それは、頼りがいのある夫だろう。」
勇がすかさず答えた。剣を抜いてふりまわして、敵に向かうようにすっと構えた。
「いろんな仕事を上手にできる技かしら。」
優が首をかしげながら答えた。
「きっと便利よね。私ならこれだわ。」
ソウトもケイも腕組みをして考え込んだ。
「すべての女性が一番欲しいものっていったって、人それぞれじゃないか。」
ソウトはケイに向かってつぶやいた。ケイは何も言わずに笑い返した。
秀がまた手を上げた。
「答えを言っても良いですか。」
「えっ、もう分かったのかい。」
勇はさらに目を見開いて秀を見た。
「さすがは秀。」
優は再び拍手をして秀を見つめた。
「すべての女性は自分の意志を持つことを望んでいる。昔読んだ物語に、そう書いてありました。」
秀が答えた。
「おおそれか。それか。そういうことか。」
榎王子は感動して秀のてをにぎるとぶんぶんと上下にふりまわした。
「これで隣の国の騎士に答えられる。本当にありがとう。」
榎王子は、木でできた棍棒を秀に渡した。
「では、これを持って行くがいい。聖なる木から作られた棍棒だ。きっと役に立つだろう。」
旅の仲間、秀はその棍棒を受け取るとまた、旅を始めた。




