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殺戮的魔法少女 VOl.1

魔法少女たちが、ループしたりバトルしたりします。

各エピソードの世界線は、微妙に繋がっていたりいなかったり。──そんな物語です。

 闇に紛れ疾走する。

 夜の帳を破り、背後から閃光が迸る。それは、殺意の光。わたしを追う、さまざまな武器を手にした魔法少女たちの群れ。単体では一対一サシのバトルになるため、まず襲ってこない。たぶん狩り感覚なんだろうと思う。

 でも、なぜ? なぜ、彼女たちはわたしをこんなにも執拗に追うんだろう?

 理由など、知る由もない。

 ただ、気づけばわたしは、この悪夢のような現実に放り込まれていた。

 あの夜、満月の光を浴びた瞬間、わたしの身体は変貌を遂げた。

 それは、熱く、甘く、そして、暴力的な力。

 きらめく光の粒子が、わたしの身体を足下から螺旋状に包んでいく。光の拘束がゆっくりと解けていき、ふと気づくと奇蹟が起きていた。

 この世の理を捻じ曲げる魔法少女の姿へと、わたしは変身していた。

 そして、その変身の後には、ダークな虚無が訪れる。魔法少女って、もっとキラキラな感じだと思ってた。でも、ちがった。

 魔法少女姿のわたしを中心に、目に見える範囲の草木は枯れ、風は止み、夜空に瞬く星も、その光を失っていた。そんな異常事態。なんなの、これは?

 あとで気づいたんだけど、わたしの身体が、この世界の生命の息吹きを、根こそぎ吸い上げているらしかった。そう、まるで乾いた大地が雨水を吸収するように。

 さっきも言ったけど、漠然と幼い少女の頃に想像していた魔法とは、ほんと全然ちがっていた。


 わたしは奪う側ではなく、与える側になりたかったのに。


 なぜ、わたしが魔法少女化すると、花や木が枯れてしまうの?

 もっとたくさんの人を幸せにするような、可愛くて素敵な魔法がよかった。

 とにかく、魔法少女化した満月の夜以降、わたしにやすらぎの日々は二度と訪れなかった。理由のわからないまま、見知らぬ魔法少女たちが次々と襲いかかってきたからだ。いろんな魔法で攻撃された。だから、もう数週間も家に帰ってない。

 だって、こんな状況じゃ帰れない。家族に迷惑かけたくないし、魔法少女化も解けないし。

 でもね、食事も睡眠もろくにできていないのに全然疲れてないのは不思議。身体や服だって汚れずに綺麗なままだし。

 魔法少女って、みんなそうなのかな?


「もう、いい加減しつこい!」


 いろんな魔法少女が魔法で攻撃してきても、わたしにはなぜか効かない。物理も、概念も、因果律も、時間操作も、全然効かない。

 あ、ウソウソ、ダメージはある、それなりに。

 だから、避けれるなら、相手の攻撃は全部避けたい。

 回復力がハンパないから、なんとかなってるだけ。

 この回復力が、わたしにとって最大の魔法なのかもしれない。ちょっと、地味すぎるんだけど。


 魔法少女たちに、襲われ続けている毎日だけれど、誰もわたしを倒せなかった。逃げ惑ってるうちに、いつの間にかみんないなくなる。わたしは空も飛べないし、そんなに逃げ足も早くないと思うんだけれど、なんとかなっている。

 どうせ無駄なのに、なぜか魔法少女たちは次々に現れ、等しくわたしに殺意を向けてくる。ほんと、意味不明なんだけど。

 わたしは、ただ逃げた。意味もわからず戦うなんて、そんなの無理。

 それでも飢えた獣のように、殺気立った魔法少女たちの群れは、どこまでも執拗に追ってくる。

 わたしは、ただひたすらに逃げ続けた。


「あらあら、さっきから見てたけど、逃げ回ってるだけじゃない。助けてあげようか?」


 出会いは突然だった。わたしは、偶然一人の魔法少女に助けられた。

 古参の魔法少女だと自分で名乗ってるから、たぶん年上。名前はリナ。


「そのままだと、いつかやられるわよ。助けてあげる。生き延びたいなら、わたしと同盟を組みなさい」


 その提案の裏に隠された、ほんとの意味に気づくには、わたしは圧倒的に経験が足りなかった。

 この孤独なサバイバル・ゲームから逃れたい一心で、わたしは彼女の手を取った。

 その手は思ったより冷たくて、枯れ枝のようだった。

 彼女はわたしを守って、多くの魔法少女と戦ってくれた。わたしは助かるんだけど、ただ守られているだけで、リナに何のメリットがあるのかわからない。

 それとなく聞いてみても、上手にはぐらかされてしまう。


「わたしの魔法が、何かって? 『エナジー・パージ』って言うのよ」


 その割に、魔法について聞いたら、意外なほど簡単に教えてくれた。

 周囲にいる魔法少女から、マナを強制的にパージ(追放)する能力らしい。パッシブによる常時発動タイプの魔法だから、不意打ちにも対応できるそうだ。

 ただし、一度にパージできるマナの量は決まっているので、強敵相手にはかなり苦戦することもあった。強い魔法少女ほど保有するマナの量が多く、そのステータスが高い。その場合、すべてのマナを奪い切るのに時間がかかるんだそうだ。

 それでも、相手からパージした分のマナは自分のものにできるみたいで、最後は必ず勝利した。

 もしかして、リナって強い?

 マナを最後までパージされた相手はみんな、急激に老いていく。髪は白く、肌は艶を失い皺だらけになり、生命の灯火を失っていく。そして、最後は砂のようにさらさらと崩れ落ちる。

 その現象は、単なる魔法の喪失というだけではない。マナが枯渇したことで、老化が加速し、やがては彼女たちの生命活動そのものが停止する。

 そんな魔法少女たちの悲惨な最期を何度も見届けてしまうと、わたしはリナの能力が、リナ自身が怖くなった。そんな感情を抱くのに、そう時間はかからなかった。


 別に、殺さなくてもいいんじゃない?   

 何で殺す必要があるの?


 それとは別に、最近不思議に思ってることがある。だんだん、襲ってくる魔法少女の人数が減ってきて、間隔も空いてきているんだけど、それはなぜ?

 数日もの間、他の魔法少女の姿を一切見ないことも増えてきた。

 これなら、わたし一人でもやっていけそう。

 しばらく悩んだけど、結局わたしはリナに、お礼の言葉と共に、別れを告げることにした。

 リナは驚きの表情を浮かべ、執拗に理由を聞いてきた。剣幕に押され、思わず背を向けようとしたわたしを、リナは引き止める。わたしの手を掴んで離さないリナの手は、いつかの枯れ枝のようではなくなっていて、マシュマロみたいにふんわりとした、少女らしい肉付きになっていた。


「ごめんね。やっぱり、わたしこれ以上リナについてけない」

「だから何で?」


 綺麗な別れ際にしたかったけど、無理みたい。


「リナのことが怖くなったの! やってること、人殺しじゃない!」


 思わず、手を振り払っていた。リナは唖然としている。それも、当然かもしれない。


「人殺し? わたしが? あんた何にもわかってないのね」

「どういう意味? 何を言ってるの?」

「人殺しはあんたの方だって、言ってんのよ!」


 いきなり頭を殴られたようだった。

 わたしは、リナの言葉に衝撃を受けた。思いもよらぬ言葉だった。でも同時に、わたしの脳裏に魔法少女になってからの、いくつかの場面がフラッシュバックした。


「思い当たるフシがあるみたいね」

「…………」

「もう、はっきり言うわ。この世界におけるマナの総量はね、決まってるの。石油と同じで、有限なのよ。使えば使うほど減っていって、いずれは枯渇する。わたしたち魔法少女はね、その限られたパイを奪い合っているの。少しでも寿命を延ばすためにね」

「そ……そんな」

「あんたは、世界中のマナが流れ込んできている巨大な油田な訳。その流れには誰も逆らえない。魔法少女はみんなあんたにマナを奪われ、死んでいったのよ。わたしはね、あんたのおこぼれに預かってただけ。エナジー・パージのおかげでね」


 それが、わたしの本当の能力。本当の魔法。

 だから、わたしは狙われていたのか。

 わたしが生きている限り、世界中の莫大なマナを無意識のうちに、独り占めしてしまうから。


「わかった? 結論言うと、あんたがわたしの元からいなくなると、わたしはまたガリガリの魔法少女に逆戻りって訳。生き残っている魔法少女の数考えたら、前よりもっと悲惨かもしれない。それでも、行ってしまうの?」

「理解したわ。何とかするから、待ってて」


 わたしは、この終わりのないマナの争奪戦を終わらせようと思う。

 そう、自ら戦うことを決意した。

 わたしが目指すは、この世界を悪意ある設定にした、元凶そのものの破壊。

 わたしは、空に向かって吠えた。


「ねえ、いるんでしょう!? 返事しなさい!! 絶対に追い詰めてやるから!!」


 わたしは、これまで力を奪ってきたすべての魔法少女たちの分まで、その無尽蔵とも言える力を背負う決意をする。

 吸収したすべてのマナをこの身に宿して、わたしは最後の戦いに挑む。

 その戦いは、生き残りのための『サバイバル』ではない。

 それは、世界を、残された魔法少女を救うための『革命』だった。

 わたしは、この呪われた世界に終止符を打つために、マナの炎を燃やし尽くそうと思う。

 だからリナ、待ってて。

 この世のすべてにケリをつけるから。




最後まで読んで頂いて、ありがとうございました!

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