絶望的魔法少女 VOL.3
魔法少女たちが、ループしたりバトルしたりします。
各エピソードの世界線は、微妙に繋がっていたりいなかったり。──そんな物語です。
光の奔流が空間を白く塗りつぶし、無数の残像が網膜に焼き付けられていく。アルミと名乗った少女の攻撃は、スズの反応を置き去りにする速さで迫り、その度にスズの存在は揺らぎを増していく。アルミの放つ光は、破壊ではなく、存在そのものの改変を意図していた。
スズのステッキから放たれる光が、物質を粉砕する物理法則の枠内に位置するエネルギーであったのに対し、アルミのステッキが放つ光は、スズという存在を定義している法則そのものを書き換えてしまう概念攻撃だった。
スズは今、自分自身が何者であるのかを問われている。『被観測者』として戦う自分。そんなスズに対し、アルミは言う。
「あなたは、わたしに倒されることで、この無意味な戦いから解放される。それを望んでいたはずなのに、なぜそんなに抵抗するの?」
「さあ? そんなの、わからない。自分でも不思議」
アルミの言葉を最後まで待つことなく、スズはステッキを無意識に振るっていた。放たれた光弾は、アルミ放つ光弾に飲み込まれ、粒子となって消滅していく。もはやスズの魔法は全く通用しない。アルミの光弾は、スズの属する世界の外側に存在する、全く異なる法則で成り立っていた。
『被観測者』として観測可能な範囲でのみ戦ってきたスズは、世界の外側に属するレイヤーの違う相手に、どう戦えばいいのかまるでわからなかった。それは、他者による『観測』という行為によってのみ存在してきた彼女にとって、存在そのものの否定に等しい絶望だった。
「『被観測者』、あなたはこれでもう、『観測』される必要はなくなる。おとなしくなさい」
アルミの声がスズの思考を貫き、それを麻痺させる。アルミのステッキが、スズに向かって真っ直ぐに突きつけられる。放たれる光は、もはやスズの抵抗を許さない。それは、彼女の存在を根源から消し去ろうとする、純粋な意志の光だった。
スズは、目を閉じた。『被観測者』として、初めて観測されることを意識的にやめた。そう、他人の視点を気にすることをやめた。
虚ろな瞳の奥に、わずかながら残っていた、戦い続ける意志の放棄と、ほんの少しの解放感。そして、期待に応えられなかった虚無感。
それらが、アルミの光弾に全て飲み込まれていく。
静寂が訪れる。光は消え、残ったのは何もない虚空。
アルミはそこに立っていた。手に持つステッキから、微かに光の粒子が零れ落ちている。スズの姿は、既にどこにもなかった。『被観測者』である彼女が消滅したことで、『観測』と『被観測』という世界の基本軸、その法則そのものが書き換えられたのだ。
アルミは、ステッキをゆっくりと振り下ろす。
そして、虚空に向かって、静かに語りかける。
「これで、ようやく、あなたはこの無意味な戦いから解放されたのね。でもその代わり、これからは当分、わたしが『被観測者』として、その役目を終えるまで、戦い続けなければならなくなってしまったわ。この絶望的な世界で──」
アルミは嘆いた。逃れられない既定路線とはいえ、スズの絶望を引き継がなければならなかった運命を、ただ呪うしかなかった。
空には、相変わらず星が瞬いている。その輝きが許されている限り、アルミはスズに代わって、哀しき道化を演じ続けなければならなくなった。
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