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8話 欲道

忙しすぎて時間取れてないためいつもの半分くらいの文量で更新です……。前回更新から1ヶ月も開いてしまいました。頑張ります……。

 翌日のトレーニングではポテチを食べきるトレーニングという、聞いたこともないものだった。前回と変わらず力を使った状態での行動を目的としているらしい。正直トレーニングとしてはシュールではないだろうか。

 かなり舌を噛んで痛かったが寝たからかそれなりには痛みも落ち着いた。

「さて、と…紗奈いる?」

 今日は紗奈の書斎にやってきた。天使とは何かを教えてもらうのだ。

 扉を開けると奥の机に紗奈が座ってパソコンと向き合っていた。

「あら、きたのね」『しゃちょおおおおおおおおお!!!!!』

 キーンと出所不明の声が響いた。綾瀬だ。

「トーンを落としてくれ。会話すらままならないだろ」

『申し訳ないです!気を付けます!』

 まだ少し声が大きいような気もするがひとまずは良いだろう。本題は綾瀬ではないのだから。

「天使について色々教えてもらおうと思って。昨日今日はトレーニングで来られなかったけど今日は時間が取れたから」

『トレーニング見てましたよ!とんでもなくうまく動けるようになってましたね!』

 映えるようなトレーニングでもない割に時間ばかりかかるよく分からないトレーニングであった。が、実際それなりの動きはできるようになっているのだから侮れない。

「明後日は本社に行くわけだし頑張ってね。明日それについては少し話があるから。翔にも伝えておいて」

「はいよ」

 紗奈は立つと横の本棚から一つのファイルを取り出した。

「まずは軽く人外狩りの歴史について話そうかしら。人外狩りという仕事が生まれたのは江戸時代初期のことよ。初めて人外が発見されたのと私たちが武器に使っている素材が発見されたのもこの時期のこと。その素材を扱えた家系こそが私たち如月家よ」

「そんな最近のものなのか?てっきり記録にも残ってないような時代からあったものかと」

 江戸時代といえばせいぜい数百年前というレベルで老舗の料理屋であれば系譜はそこにあったりするレベル。少し予想外であった。

「意外と最近の家系なのよ。幕府が直接管理する秘密組織みたいなものだったのだけれど明治維新以降はそのつながりも消えて影の仕事として今なお続いている。そういうわけあって、人外に関する記録は江戸時代以降のものになるわ。そこのところはよろしくね」

 そう言うと紗奈はファイルを開いた。いかにも江戸時代に書かれていそうな記録のコピーがあった。

「これは江戸時代中期の記録になるわ。簡単にまとめると、“攻撃の通らない意思疎通ができる人外が見つかった。私たちが使った武器をその人外も使いこなすことができる。”という内容よ」

「それってもしかして」

「堕天使ね。当時は相当経過して死ぬまで監獄に入れてたみたいだけど今考えるなら戦力として加わってもらうべきだわ」

 そう言えば翔も初めて悠と接したときは攻撃が通らない、人の言葉を話すと警戒心むき出しでいた。

「翔、もしかして結構古典的なタイプか…?トレーニングも結構変なのだったし…」

『社長…変なこと考えてると後々のトレーニングが過酷なものになりそうですけど平気ですか…?』

「同感だ、やめとこう。」

 身の振り方は普段の思考から決まったりする、なんてどっかの心理学のお偉いさんが行ってそうだ。やめておくに限る。

「それで、明治維新以降私たちの家系が一般人とどう違うのか検証するようになったのよ。そこで一般人にも私たちが使っている武器を渡して使いこなせる人がいないか探したら本当に少数だけどいたのよ」

 翔みたいなタイプのことらしい。確かにあんなことができる人間が何人もいてはたまったものではない。悪用するものさえ出てきそうだ。

「私たちだけが持つ力ではないけれど非常に稀な力だから細々と代々当主が研究を続けてきたの。その過程でようやくわかったのが欲の通り道があることとそれが力に関係しているということ」

『で!その研究を一気に前に進めたのが私ですよ、社長!』

 満を持して私の出番、と言わんばかりの声で綾瀬が喋った。

『この間私と紗奈さんが話した時あったでしょう?あの日の夜から徹夜でお互いの持ち合わせてる情報を持ち寄って研究を進めて、色々分かったんですよ!』

 紗奈がこちらを向いた。

「難しい話は省くわ。多くの人は欲の通り道が詰まってしまっているのに対して私たちは詰まっていないから欲の力を使って戦えるのよ」

「理屈はなんとなく分かったけどさ、堕天使にはダメージが入らない理由にはなってなくないか?」

 能力の理屈は分からなくもないがさすがに説明不足だ。追加説明が欲しい、思ったところで紗奈は上を向いた。

「そのあたりは綾瀬さんのほうが説明したほうがいいと思うのよ。お願いするわ」

『待ってましたああああ!!!』

「綾瀬ボリューム下げて!」

 耳をつんざく声が再び響き渡る。定期的にボリュームを間違えるのを何とかしてほしい。一瞬黙ったがすぐにに喋り出した。

『いやーボリューム調節間違えてしまって申し訳ない!気を付けていきます!』

「さすがにミス多すぎるから注意しろよ~」

 こればかりは切に願いたいところだ。さすがに耳が辛い。耳で聞いているわけじゃないから耳が辛いというのは誤りの気もするが。

『それで本社の業務覚えてますか?』

「解脱させて天界への流入を増やすことだろ?さすがに自分で起業した会社の業務忘れるほどアホじゃないぞ」

『その解脱が欲の通り道のつまりを改善するということです。天使含め天界は正の欲だけで構成されてるから正の欲で攻撃する如月家の攻撃は天使に通らないんですよ』

 何それ知らない。というか業務に利用している技術の詳細を知らなかったがそんなことだったのか。

「あれ、じゃあいくらでも如月家の武器の適正者作れない?もっと効率よく人外を倒せるんじゃ」

『詰まりを改善できるのは短時間なので実践は不可です。私は死を目前とした人達を解脱させてるので死後天界に来ているんですよ』

「そっかぁ…」

「そういうわけで攻撃に使っているものが堕天使の構成要素と同じだから攻撃が通らないのよ。逆に人外は負の欲で構成されてるから攻撃が通るのね。」

 紗奈はふう、と息を吐いた。一通り説明が終わったらしい。ぱたんとファイルを閉じて本棚にしまってこちらを向いた。

「何か質問はある?」

 さすがに情報量こそ多かったが内容は比較的わかりやすかったと思う。

「またわからないことあったら聞いてもいい?」

「もちろん。綾瀬さんに聞いてもいいしね。綾瀬さんも平気でしょう?」

『もちろんですよ!』

「じゃあその時は頼むよ。部屋に戻るな」

「ええ。翔への伝言もよろしくね」

「はいよ」

 紗奈の書斎を後にした。

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